第14話 奪われた魔王城
長らくお待たせしました。
以下、作者の独り言です。
† † †
第13話のあたりから、『魔王の日常』における『第一部』の終わりのあたりに近付いています。とはいっても、『魔王の日常』は普通に、このまま続いていきます。ただ単に作者の中の区切りなので、読者の皆さんはあまり気になさらないでください。
……私、この『第一部』が終わったら、田舎で店を継ごうと思って……いません。『第一部』が終わったら、新連載を始めようと思っています。世界はこの『魔王の日常』の世界と同じ世界。本当に『最強』の『チート』な勇者の物語。べ、別に魔王を倒すのが目的じゃないんだからねっ!(おい
ガチャッ
ライリが地下宝物庫から帰還し、扉を開けた。その途端。
「え……?」
「ん?」
「どうしたんだい、チサト?」
「急に……飛べなく……なって……」
チサトはつらそうに息をしながら、フラフラと着地した。
「……ドール」
「はい。何か、違和感を感じます……」
ドールはチサトを抱きかかえ、ライリはその前に立つ。慎重に階段を上っていくと、階上から人間が2人降りてきた。
「人間?!くっ……『我が内に宿りし魔導師の魂よ、水の槍を伸ばし敵を貫け』!」
シン……
ドールが魔法を詠唱するも、何も起こらない。もう一度詠唱しても、結果は同じだった。その様子を見てニヤニヤと笑いながら剣を抜く人間。しかし、剣を抜いたところで、動きは止まった。
ドサッ……
ライリが一瞬で接近し、手刀の一撃を見舞ったのだ。倒れた人間の手から剣を奪い取り、双剣のように構える。それと同時に階上に人間が大量に現れた。手には槍や短剣を握っている。
「やれっ!」
誰かの声が響くと、人間たちは一斉に手に持った槍や短剣をライリたちに向けて投擲した。それを打ち落とすライリ。自分自身のみなら突貫して敵を殲滅することも可能だが、今は動けないチサトと彼女を抱えるドールがいた。なんとしても2人を守らなければならないライリは動くに動けずにいた。その時。『ボコッ』という音がしたかと思うとすぐに声が掛けられた。
「……っ!ドールさん!」
「砂男の隊長か!」
「今は一旦退いて下さい!我々の『生き残り』は外にいます!」
「『生き残り』……?くっ!ライリ様!」
「ちっ……了解した!通路に入ったら声を掛けろ!」
すぐにドールは砂男の作ったトンネルに入る。
「ライリ様!」
「了解!」
ライリは力の限り両手の剣を人間に向かって投げつける。投げられた剣は回転しながら飛んでいき、さらに投擲された人間の武器を弾き飛ばしながら滑空していく。飛んだ先を見ることなく、通路に走っていく。ライリが走り抜けた地点からトンネルが崩れていく。人間が来る気配は全くなかった。
トンネルを抜けると、そこは魔王城近くの森だった。見ると、バスク、ラムを含めた40人近くの者がいた。
「ライリ様!」
「うむ。何があったか説明してくれるか?」
「はい……」
ラムが説明を始めた。
† † †
「敵襲!人間の群れです!」
突如響き渡る不穏な声。それを聞いてバスクは思わず立ち上がった。
「何ぃ!くそっ、魔王様が居ねぇって時に!おい!夜間の警備の連中も叩き起こして全員で城を守るぞ!もちろん、俺も出る!」
「了解!総員戦闘用意だ!」
あたりは騒然とし、あわただしくなる。
「城門突破されました!」
「チッ!1階の階段までは少しずつ後退しろ!2階の大広間で総力戦だ!総力なら確実にこちらのほうが上だ!」
バスクが声を張り上げて指示を飛ばす。そのとき、ラムがバスクのそばに現れた。
「バスク」
「ラムか!お前も戦れるな?」
「もちろんよ。ここは私たちだけで勝つわ」
「よし!いくぞ!」
―2階大広間―
バスクは長大な戦斧を2本背負い、ラムは魔力を増幅するための回路を組み込んだ杖を握っていた。目の前には、多種多様な武器を持った大量の人間。いつぞや攻めに入った人間のゆうに3倍は居ようか。その人間の中の一人が大声を上げた。
「投降して城を明け渡すなら、逃がしてやるぞ!」
すぐさま、魔物の一人が言い返す。
「誰が人間風情に渡すか!」
「まぁまぁ。そんなに熱くならなくてもいいじゃないか」
人間の群れの中から進み出てきたのは、伸び放題の髪とまともに剃られていない、まばらに生えた髭によってその整った顔つきを台無しにしている男。元は礼服なのであろう服は皺だらけで、『だらしない』を体現したような容姿をしていた。そして、小さい声で。
「我々の力を魅せつければ、彼らも諦めるさ。さぁ、やってくれ!」
「『魔法妨害陣・起動』」
なにかコソコソと話している様子を見て、バスクが声を張り上げた。
「何かは知らないが、恐れる事はない!人間どもを蹴散らせ!!」
魔物が突進する中、ラムは高く飛び上がって詠唱を開始する。
「『この星に生まれし元素よ、この手に集い数多の風の矢となり敵を切り裂け』!」
ラムが一度に多数の『ストーム・アロー』を撃つための『強調詞』と呼ばれる言葉を追加した呪文を完成させる。ラムの手から風があふれ出し、大量の『嵐の矢』になって人間に向かって飛んで……いかなかった。もう一度詠唱しても、結果は同じ。なぜか魔法が発動しないことに気付いた魔物たちは一瞬たじろく。さらに、周りを見ればピクシーたちは床に足をつけ、苦しそうに息をしていた。そのピクシーたちを必死に拾い、後退するラム。
「魔法を使わずに戦える連中は前線に出ろ!魔法主体のやつらをフォローするんだ!」
誰かの声が響きわたり、オークやリザードマンなど、腕力主体の魔物がさらに前線に出て人間と戦う。しかし。
バシュッ!
人間の群れの中から『ストーム・アロー』の『魔法』が飛んできた。それはラムのすぐ近くに着弾した。
「なっ……?!魔法は使えないはずじゃ……!」
「うわぁあああああああああああああっ!!!」
絶叫の聞こえたほうを見ると、傷つき倒れた魔物が小さな石の中に吸い込まれていくのが見えた。その光景を目の当たりにした魔物たちの動きが一瞬止まる。そして。
「元・魔王城勤務の皆さん、よく戦った!しかし!ここで無益な戦いは終わりにしよう!」
『だらしない』を体現したような男の声。バスクが声を上げる。
「貴様!何を言っていやがる!」
「さらばだ!諸君!!」
「まて!まだ勝負はつ……!!」
ギュォォォォォ……
「……ついていないぞ!!……ん?」
転移魔法独特の音が聞こえたかと思えば、そこは魔王城の外だった。バスクが、拳を地面に叩きつける。
「ライリ様……!ライリ様はまだ地下宝物庫に……!」
「それなら、我々砂男がトンネルを掘って、宝物庫とここまでの道を作ります」
「……頼みます」
† † †
ライリは話を聞き終わると、立ち上がった。
「ここにいる数で、魔王城を取り返す!お前たちに『ノー』の答えはない!ついてこいっ!!」
「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」」」」
魔物たちの雄叫びが、響き渡った。




