表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モンスター安全管理責任者  作者: beck2026


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/20

第九話:安全な高所作業

「……本日の依頼は、街の防壁近くにある『監視塔の屋根に絡みついた有毒植物・吸血蔦バンパイア・アイビーの駆除』です。あらかじめ言っておきますが、今回の最大リスクは魔物の襲撃ではなく『墜落・転落災害』です」

定例の朝礼で、セインは監視塔の図面を机に広げ、指先でコンコンと叩いた。

「えーっ!? 戦闘じゃなくて、高いところの草むしり!? そんなの斥候の私がパパッと登って、双牙でチョチョイと刻めば終わりじゃん!」

カノンが『借金回避の双牙』を誇示するように身を乗り出す。

「カノン、その『パパッと登る』という横着な不安全行動が、墜落死への直行便です。高さ十メートルからの墜落は、人間であれ悪魔族であれ、地面に叩きつけられれば内臓破裂で即死します。というわけで、ケットル」

「おうよ! ウチの職人魂を込めた特製『高所作業用安全帯セーフティ・ハーネス』と『親綱メイン・ロープ』の出番だね!」

ケットルが巨大な背負い袋から、頑丈な革のベルトと、いくつもの金属製フックがついた太いロープを取り出した。

「これを腰にガッチリ巻きつけて、塔の支柱にフックを引っ掛けながら登るんだ! 万が一足が滑っても、この安全帯が体を空中で支えてくれるから、地面まで真っ逆さまってことは絶対にないよ!」

「素晴らしい、完璧な墜落防護策です。さらにミル、あなたには『浮遊フロート』の魔法の待機を命じます。今回は移動用ではなく、万が一の墜落時にクッションとして発動させる『緊急減速用』として魔力を保持しなさい」

「はーい! みんなが落ちてきたら、ふんわりキャッチできるように準備しておくね!」

ミルが『もう壊さない杖』を両手で握り、真剣な顔で頷く。

「そしてクレア。あなたは地上待機です。上空から植物の破片や、カノンが落とした工具などが降ってくる危険性(飛来・落下物災害)があります。大盾を頭上に構え、下を通る一般市民や仲間の安全を確保する『立ち入り禁止区域の監視員』を務めなさい」

「は、はいっ! 上から何が降ってきても、この大盾で絶対に弾き返します! でも……上を見上げたままだと、首が痛くなってちょっと切ないです……」

「無駄な弱音を吐かない。ヘルメットの顎紐をしっかり締めなさい。……安全帯の装着ヨシ、親綱の強度ヨシ、地上立ち入り禁止措置ヨシ。……作業を開始します」

現地である石造りの監視塔。

その最上階の屋根には、赤黒い不気味な蔦が、とげのついた触手のようにうねりながら絡みついていた。

「カノン、登る際は常に『三点支持』を徹底しなさい。両手両足のうち、必ず三箇所は頑丈な足場を確保すること。フックの掛け替えも一歩ずつです」

「は、はーい……。これ、結構緊張するね……」

セインの厳しい指示の元、安全帯を着用したカノンが慎重に壁を登っていく。

普段は軽快に飛び跳ねるカノンだが、命綱と安全帯の重み、そしてセインの監視の目があるため、絶対に無理なジャンプなどはしなかった。

カノンが屋根に到達し、『借金回避の双牙』で慎重に吸血蔦の根元を切り離そうとした、その時。

切り付けられた蔦が生き物のように暴れ、鋭いとげのついた先端を、カノンの顔めがけて鞭のように叩きつけてきた。

「うわっ!? っととと!」

不意の衝撃に驚いたカノンが、足を乗せていた石の出っ張りから滑り落ちてしまう。

「きゃあああ!? カノンちゃんが落ちるー!」

地上のクレアが悲鳴を上げる。

ガツンッ!

激しい金属音が響いたが、カノンの体は地面に落ちなかった。

ケットル特製の安全帯と、ガッチリと支柱に噛み合っていたフックが、カノンの体を地上五メートルの空中でピタリと繋ぎ止めたのだ。

「ひ、ひえぇぇ……! 止まった、止まったよぅ!」

「ミル、そのまま『浮遊』の魔法でカノンの体をゆっくり地上へ下ろしなさい! ケットル、安全帯の損傷チェックを!」

「了解!」「おまかせあれ、えいっ!」

ミルの優しい魔法に包まれ、カノンは安全に地面へと着地した。バタバタと駆け寄ったケットルが、ベルトの縫い目や金属フックを素早く点検する。

「ベルトの破断なし! フックの変形もなし! 安全帯の機能は完全に生きてるよ!」

「……ふぅ。全員、無傷ですね。カノン、怪我はありませんか?」

セインが駆け寄り、カノンの体を構造解析の目で素早くスキャンする。

「う、うん……どこも痛くない。ただ、心臓がバクバクしてるだけ……。セインちゃん、ウチ、もしあの紐がなかったら……」

「……だから言ったのです。高所作業を甘く見るな、と」

セインは乱れた息を整えると、手帳を開き、今日の致命的な一歩手前の事象を忘れないうちに記録し始めた。

◆ 労働安全管理報告(ヒヤリハット事例)

発生日時: 監視塔・高所蔦駆除任務にて

件名: 高所作業中の足場崩落(滑落)による墜落危機事象

現象(ヒヤリとした状況):

高度約7メートルの壁面にて吸血蔦の駆除作業中、生物的な反撃を回避しようとした作業員カノンが足場を踏み外し滑落。一歩間違えればそのまま地表へ叩きつけられ、致命的な墜落災害(死亡災害)を引き起こす危険性が極めて高かった。

防げた理由(要因解析):

1. ケットル特製の『高所作業用安全帯(2丁掛けフック)』の完全着用。

2. 三点支持の徹底により、滑落の瞬間の衝撃荷重をフックが確実に受け止めたこと。

3. ミルによる『緊急浮遊魔法』への迅速な移行と、地上への安全なレスキュー。

4. クレアが地上で『立ち入り禁止区域』を維持していたため、落下軌道上に一般市民等の第三者が存在せず、二次災害を防げたこと。

今後の対策:

植物系魔物の駆除など、高所で「対象が動く(反撃する)」ことが予想される作業においては、単独の登攀とうはんは原則禁止とする。今後は、ケットルのパチンコ等による地上からの事前先制攻撃、あるいはミルの魔法による「安全な距離からの事前駆除」を先行工程とし、高所作業員の肉体的接触リスクを最小限に抑える。

「……よし。これで次からの高所作業の安全基準が一段階上がりました」

手帳を閉じたセインが、眼鏡の位置を直しながら静かに告げた。

「セインちゃん……ありがとう。私、本当に舐めてた。高いところなんて慣れてるって思ってたけど、戦闘中に足が滑ったらどうしようもないもんね。この命綱、私の本物の命の綱だったよ……」

カノンが、自分の腰に巻かれた安全帯を愛おしそうに撫でながら、心からの感謝を口にした。

「分かればよろしい。二度と同じ不安全行動を起こさないように。さあ、残りの蔦は、ミルの魔法で地上から安全に焼き払いましょう。二次災害防止のため、再度立ち入り禁止ラインを厳守してください」

「はーい! どっかーーん……じゃなくて、ピンポイントで燃やすね!」

「はいっ! 私の盾で、火の粉は絶対に外に通しません!」

クレアが誇らしげに大盾を構える。その姿には、かつての「最弱」の怯えは消え、安全を支えるプロとしての頼もしさが宿りつつあった。

最弱パーティの、安全第一な高所作業。

ハプニングを確実な成長へと書き換える彼女たちの歩みは、今日も少しずつ、しかし絶対に崩れない盤石さで、前へと進んでいく。

カノン「みんなー! ここまで読んでくれてありがとう! 楽しんでもらえた?」


クレア「あの……もしよろしければ、私たちの旅をこれからも見守っていただけると嬉しいです……!」


セイン「画面下部にある**【ブックマークに追加】や、評価の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**に染めて応援してくださると、作者の執筆モチベーションが跳ね上がります。……もちろん、私の精神安定にも繋がります」


ケットル「みんなのポチッとが、ウチらの大きな支えになるからね! よろしくおくれ!」


ミル「次のお話も、絶対見にきてねー!」


面白い、続きが気になると思ってくださったら、ぜひブックマークや**評価の星(★★★★★)**で応援をよろしくお願いいたします!


感想やレビューもいつでも大歓迎です。励みになります!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ