第十九話:予兆
「……おかしいですね。非常に、不愉快な数値です」
いつものようにギルドの片隅の丸テーブルで、セインは一枚の大きな周辺地図を睨みつけながら、眉間を深く寄せていた。
「なになにー? セインちゃん、また私の『借金回避の双牙』の金属疲労でも見つけちゃった?」
カノンが串肉を片手にのんきに覗き込む。
その隣では、ミルが『もう壊さない杖』の先端をピカピカと明滅させて遊んでおり、ケットルは新しいパチンコ弾の鋳造に夢中になっていた。
「カノン、あなたの双牙の摩耗は日常茶飯事ですが、今回はそんな個人の不安全状態の話ではありません。……これを見なさい」
セインが指差したのは、ここ数週間で私たちがこなしてきた、あの「巨大ムカデ」や「酸性スライム」などの発生ポイントだった。
「構造解析のログをすべて繋ぎ合わせ、この地域の魔力の流れをマッピング(可視化)しました。……異常な地脈の歪みが、この街を取り囲むようにして、均等な五角形を描いて進行しています」
「ごかくけい……? 星型みたいで、なんだか可愛いね!」
ミルがキャッキャと笑うが、セインの目は一切笑っていなかった。
「可愛くありません、ミル。この歪みの中心地にあるのは、ここから三日ほど離れた場所にある、国の指定災害区域――『黒き断層』です」
「黒き断層……!」
その名を聞いた瞬間、それまでおどおどしていたクレアが、抱きしめていた『切ない剣』を落としそうになるほど体を硬直させた。
「あ、あそこって……十年前、一晩で一つの街が原因不明の魔力暴発で消滅したっていう、あの不帰の地ですか……?」
「ええ。本来なら、ギルドによって『立ち入り禁止区域』として完全に防護柵で封鎖されているはずの場所です。ですが、そこを起点とした魔力汚染が、今、安全基準値を大幅に超えてこの街へ向けて拡大しています」
セインがいつもの手帳をパタンと叩く。その音は、いつになく重く響いた。
「このまま放置すれば、あと半月でこの街全体の環境が『書き換え』られ、住人はおろか、周囲の全生物が狂暴化する、あるいは魔力の毒で全滅します。これは局所的なハプニングではなく、この地方全体を揺るがす『大規模環境災害』です」
「……ってことはさ」
ケットルがパチンコを磨く手を止め、顔を上げた。
「ウチらがその『黒き断層』まで行って、原因を根本から叩かなきゃ、ウチらの安全な新居も、自動洗浄トイレも、全部消し飛んじまうってことかい?」
「その通りです。これより我がパーティは、長期にわたる『黒き断層・環境正常化大作戦』を最優先重要任務に指定します」
セインの宣言に、リビングの空気が一瞬で引き締まった。
今までの「その場しのぎの防衛」ではない。
最弱パーティと呼ばれた5人が、自分たちの安全な日常を守るため、前代未聞の危険地帯へと足を踏み入れる、二十話以上に及ぶ長い戦いの幕が上がろうとしていた。
「……これより、長期遠征用保護具の完全点検、および物資の三重備蓄(ロジスティクス計画)を開始します。全員、命綱を締め直しなさい!」
「「「「おーっ!!」」」」
凸凹な5人の、未来を賭けた大仕事が、ここから静かに始まりを告げる。
カノン「みんなー! ここまで読んでくれてありがとう! 楽しんでもらえた?」
クレア「あの……もしよろしければ、私たちの旅をこれからも見守っていただけると嬉しいです……!」
セイン「画面下部にある**【ブックマークに追加】や、評価の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**に染めて応援してくださると、作者の執筆モチベーションが跳ね上がります。……もちろん、私の精神安定にも繋がります」
ケットル「みんなのポチッとが、ウチらの大きな支えになるからね! よろしくおくれ!」
ミル「次のお話も、絶対見にきてねー!」
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