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モンスター安全管理責任者  作者: beck2026


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第一話:始まりは、いつも突然に

「……よし、これでよし。

 みんな、ちょっと集まっておくれ」

薄暗いギルドの片隅。

私たちは小さな丸テーブルを囲んでいた。

声を張り上げたのは、

小柄なドワーフの職人、ケットルだ。

彼女は自分の体ほどもある

巨大な背負い袋をドサリと床に下ろし、

腰に差した愛用のパチンコを

小気味よくパチン、と鳴らす。

そして、使い古された

一枚の分厚い羊皮紙を

机の上に広げた。

「なになにー?

 ケットルちゃん、また何か

 怪しいものでも拾ってきたの?」

最初に首を突っ込んだのは、

悪魔族の斥候、カノンだった。

頭の小さな角を揺らし、

腰に下げた『借金回避の双牙』を

せわしなくチャラチャラと鳴らしながら、

興味津々で羊皮紙を覗き込む。

「失礼な言い方をするんじゃないよ。

 これは、我がパーティの未来を見据えた、

 とっても大事な提案さ!」

ケットルは短い指で

ドン、と羊皮紙の真ん中を叩いた。

そこには、お世辞にも上手とは言えない、

少し歪な文字でこう書かれていた。

『モンスター安全管理責任者:セイン』

「……はぁ」

冷ややかな、それでいて

地を這うような低い溜息が、

その場の空気をわずかに凍らせる。

ハーフエルフの僧侶、セインだ。

彼女は愛用の『静かになさいの槌』を

いつでも振り下ろせる位置にキープしたまま、

ジト目でケットルを睨みつけた。

「ケットル。

 これは、何の冗談ですか?

 私は静寂を愛する僧侶であり、

 このパーティの唯一の良心(自称)なのですが」

「冗談じゃないよ!

 大真面目さ!」

ケットルはふんす、と鼻を鳴らした。

「いいかい、みんな。

 私たちは『最弱パーティ』なんて

 陰口を叩かれてる。

 それはなぜか!

 魔物と戦うときの安全対策が、

 まるでなってないからさ!」

「うっ……」

その言葉に、一番敏感に反応して

肩を震わせたのは、

人間の剣士クレアだった。

彼女は自分の『切ない剣』を

両手でぎゅっと抱きしめるようにして、

ショボショボと眉を寄せる。

「やっぱり……私の剣が、

 切ないからでしょうか……。

 私が前衛じゃ、みんなを危険に

 晒してしまいますよね……」

「あー! 違う違う、

 クレアを責めてるわけじゃないんだよ!」

ケットルがあわてて手を振る。

「クレアの剣は確かに、

 見ていてちょっと切ない気持ちに

 なるけれど!

 問題はそこじゃなくて、

 危機管理ができてないってことさ」

「危機管理、ですか」

セインが腕を組み、

『魔導ブースター』の微かな輝きを

見つめながら呟いた。

「ええ。例えばカノン!

 あんたは斥候のくせに、

 お宝の気配がすると

 魔物の群れに真っ先に突撃していく!」

「だって、借金を早く返さないと、

 私の双牙が泣いちゃうんだもん!」

「泣くのはあなたの財布です」

セインが冷酷に突っ込む。

「それにミル!

 あんたは強力な魔導士だけど、

 呪文の威力が強すぎて

 魔物と一緒に地形ごと吹き飛ばそうとする!」

「えへへ、加減が難しくって。

 でも、この杖はもう壊さないよ?」

「壊れるのは杖ではなく、

 私たちの足場です」

セインの容赦ない言葉に、

ミルはてへっ、と頭を掻いた。

「つまりだ!」

ケットルが再び羊皮紙を叩く。

「これからは、全員の行動を

 一歩引いて冷静に観察し、

 『そこは突撃禁止!』とか

 『魔法の威力を抑えろ!』とか、

 的確に指示を出す責任者が必要なんだよ。

 それをセイン、あんたにやってほしい!」

「……なぜ、私なのですか」

「あんたには『構造解析』や

 『環境上書き』っていう、

 戦況をひっくり返す魔法がある。

 それに、一番冷静だからさ!」

セインは深いため息をつき、

『静かになさいの槌』の柄を

トントンと手のひらに打ち付けた。

「ただ単に、

 暴走する頑固者たちを

 力ずくで黙らせる役目が

 回ってきただけな気がしますが」

「そんなことないよぅ!

 セインちゃんが『モンスター安全管理責任者』として

 指揮してくれたら、私、すっごく安心!」

カノンが調子よく笑顔を向ける。

「……分かりました」

セインは眼鏡を押し上げるような仕草で、

指先を眉間に当てた。

「この役目、引き受けましょう。

 ただし、私の指示は絶対です。

 戦場での安全を脅かす我が儘は、

 この槌で物理的に修正しますので、

 そのつもりで」

「ひえっ……!

 相変わらず目がマジだよぅ!」

カノンがミルの後ろに隠れる。

「でも、セインさん……」

クレアが不安そうに、

だけど少しだけ期待を込めた目で

セインを見つめた。

「よろしくお願いします。

 私、すぐ怖くなって足がすくんじゃうから……

 セインさんが指示をくれたら、

 きっと、安全に一歩前へ出られます」

「……クレア」

セインの表情が、ほんの少しだけ

柔らかくなった。

「あなたには、安全管理以前に

 もう少し自信を持ってもらう必要がありますね。

 あなたの剣がどれだけ切なくても、

 私たちの前衛は、あなただけなのですから」

「はいっ……!

 私、頑張ります……!」

クレアは『切ない剣』を強く握り締め、

しっかりと頷いた。

「よし! 話がまとまったところで、

 今日のところは引き上げよう!

 明日は新しい体制での、

 最初の依頼だからね!」

ケットルの号令で、

私たちはそれぞれの武器を手に

立ち上がった。

最弱パーティと呼ば名高い、

私たちの小さな旅路。

新しく任命された、

頼もしすぎる『安全管理責任者』の元で。

私たちは本当に少しずつだけど、

確かに、前へと進み始めていた。

カノン「みんなー! ここまで読んでくれてありがとう! 楽しんでもらえた?」


クレア「あの……もしよろしければ、私たちの旅をこれからも見守っていただけると嬉しいです……!」


セイン「画面下部にある**【ブックマークに追加】や、評価の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】**に染めて応援してくださると、作者の執筆モチベーションが跳ね上がります。……もちろん、私の精神安定にも繋がります」


ケットル「みんなのポチッとが、ウチらの大きな支えになるからね! よろしくおくれ!」


ミル「次のお話も、絶対見にきてねー!」


面白い、続きが気になると思ってくださったら、ぜひブックマークや**評価の星(★★★★★)**で応援をよろしくお願いいたします!


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