警察沙汰はもう嫌だ!!
「もう本当にこんな生活、やになっちゃいますよ。」
檸檬はつい先ほど床を貫いて落下し、包帯だらけになったにも関わらず客人用のお茶請けをバリバリと貪るような豪胆な少女なのであった。
「うん、俺も嫌になりそう。」
「そもそも社長が悪いんじゃないですか。 なんで折角の依頼を断っちゃったんですか。」
「だってアイツ、前回の依頼の時文句ばっかだったじゃんか。」
「は? そんなことで……。 あー、またむしゃくしゃしてきた……。」
そう言って手に取った煎餅に豪快に齧り付き、口に煎餅の欠片を付けたままモグモグと咀嚼している。
「あの檸檬さん? 因みにそれ客用なんだけど?」
「知りませんよ。 社長が依頼さえ受けてくれればこんなのまた買えるんですから。」
その煎餅を二口で消したかと思えば、またすぐに次の煎餅を手に取る。
「はぁ、依頼ねー。」
机に頬杖をつきながら呟いたその言葉は窓の外に霧散していく。
そこで渡理に昔の記憶がふと蘇る。
「おっ、依頼と言えば、一つ思い出した。」
「なんですか。 またご友人に浮気写真チラつかせながら交渉するわけじゃないですよね。」
「いや、違うって。 ……近いかもしれんけど。」
「近いって何ですかっ! また警察沙汰になったりしませんよね!? もう警察は嫌ですよ!! もう嫌ですからね!!!」
檸檬は嫌な記憶を思い出したのか頭を抱えて悶え始めた。
「ま、まあ今度は多分大丈夫だって。」
その言葉に檸檬が色を失った目をギロリと向けてじっと見つめる。
「社長の多分をこれから先信じることは無いって言いましたよね……。」
「じゃあ絶対! 絶対大丈夫!」
「はぁ、分かりましたよ。」
檸檬はため息交じりでやれやれとでも言うように首を横に振る。
「で、その思い出したことはなんなんですか?」
渡理は窓の方に視線を移しながら微妙に焦ったように口を開く。
「いや、まあ近くだし向かいながら話すわ。というかお前、その包帯まみれの状態で外出んなよ。ただでさえうちの評判悪いのにミイラの奇人なんか現れたらいよいよ客どころの騒ぎじゃないぞ。」
「じゃあもう治りました。」
「じゃあってなんだ、じゃあって。」
檸檬は体に巻き付いた包帯を脱ぎ捨て部屋の端にほかり、腕を元気よく回して見せる。
渡理は檸檬の怪物並みの生命力に唖然とするのであった。




