便利屋は今日も騒がしい
人生初の投稿ですので色々不備があるかもしれませんがドラえもんのような温かい目で見ていただければと思います。
ある会社の事務所。
そこは汚かった。
埃が付いてるとかゴミが落ちてるとかの話ではない。
窓は当然のように全て壊れ、一体どうやって壊したのか壁や天井すらに割れ跡や補修跡の装飾が施されている。
もはや住民はここを屋内と思っていないのか土足生活をしていた。
その中でも唯一外見だけ取り繕えているマシなデスクに足をかけ座っている人物。
そいつがこの便利屋の社長、渡理朔である。
そして、依頼をしに来た客がたった今怒って出て行った最悪のタイミングであった。
「はぁ、この仕事も稼げないもんだなぁ。」
「……。」
渡理の愚痴はソファっぽい布地の多い粗大ゴミに座る社員の檸檬に投げかけたのだが応答されることなく独り言として完成する。
「どうしたら楽して稼げるかねぇ~。」
「……。」
再度話しかけるがまたしても俯いたまま口を開こうとしない檸檬。
気まずい雰囲気が部屋に広がり始める。しかしその微妙な空気に気付ける者は、残念ながらこの場には1人もいなかった。
「なぁ、檸檬も楽して稼げる方法考えてくれよ。」
「ッ!!」
渡理の三言目にして檸檬は我慢の限界に達した。
ソファの間に置かれる長机を殴る爽快な台パン音と共に勢いよく立ち上がると、そのまま拳を握りしめワナワナと震え出す。
渡理は生気のない顔を檸檬に向けると、檸檬がゆっくりと口を開いた。
「か……。」
「か?」
「か……。」
「どした? 腹の調子でも――」
「稼げないのは、アンタのせいだろうがぁぁぁあああああ!!!!!!!」
檸檬の発した怒号の音圧は築60年を迎える木造建築には耐え難く、建物全体がガタガタと揺れ始め、天井からは木屑が降り注ぐ。
「なんなの?? 馬鹿なの?? 死ぬの?? ってかこのままだと本当に死ぬんだが!?」
「そんなに慌てても仕方ないだろ?」
「アンタがッ! そんなに冷静なのがッ!! 一番気に食わないんだよッ!!」
怒りのあまり床をゲシゲシと踏みつけ、それに連動して建物がギーギーと音を立てて揺れる。
そろそろ建物の何かしらが損傷しそうで渡理にも焦りのようなものが現れ始める。
「……ちょ、ちょっとそのくらいで落ち着いて、落ち着いて。 ね?」
しかし、宥めるには遅かった。
「こんなの落ち着けるかああああああ、あ? ああああああああ!!」
加速していった地団駄に耐えきれなくなった床は、ベリベリと断末魔をあげながら檸檬を引きずり込んだ。
階下で鳴った爆音と共に悲鳴が止み、部屋にいたたまれない雰囲気と粉塵が広がる。
床の下からはゾンビのような呻き声に混じり「いつか……、必ず……、社長を……」などという怨嗟も聞こえるが、少し経つとゾンビも息絶えたのか物音ひとつ聞こえなくなる。
粉塵も鎮まり部屋に静けさが訪れた頃、渡理は湯呑を手に取り、木屑混じりの冷めた茶を一口啜る。
「はぁ、空は今日も眩しいなぁ……。」
渡理はさらに悪化した廃墟の中、割れた窓から春の風景を一望しながら現実逃避するのだった。




