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落下地点は違う世界。  作者: あせろら
1章:第二の人生
12/15

まじっくれっすん。

『辺りを照らす光の導!ライトボール!』



窓を閉め切った暗いリビングの中に、拳ほどの大きさの玉が出現する。

その光の玉は、ふよふよと俺の頭上に浮かびお日様のような暖かい光を放出している。


これは初級魔法『ライトボール』という簡易照明魔法で、一般的に誰でも使える魔法だそうだ。


「おおぉー! 魔法つかえちゃったよ俺!!」


ポカッ


「・・・まほーつかえちゃったーわたし。」


生まれて初めて魔法を使えたという快挙に、興奮して一人称を俺にしただけで殴られる。

まぁ、ヘチマみたいな植物から作ったスポンジを巻いてある棒なので、痛くはないけど・・・。


「やったねアキちゃん! 今まで魔法のマの字も知らなかった状態から、早速使える様になるなんて才能あるわよ絶対!...でも、俺って言ったから減点50ね?」


「おゆるしくださいナリアさまぁっ!」


歓喜から一転、絶望の暗幕が迫ってくる・・・ひぃっ


減点とは、俺の1日分の持ち点数の100から、0になってしまうと・・・

その日の晩『ナリアさんと一緒に寝る』という恐ろしい刑が処されるのだ。


初日に俺って言いまくったら、ナリアさんにこの制度を作られた。

減点の判定基準は、ナリアさんの気分次第ってんだから恐ろしい。

それ以来ナリアさんの前では気をつけているのに!

魔法に感動したせいで、つい言っちゃったよ!!


魔法のバカー!!


「おねーちゃんでしょ?、減点5点!」

「あうあう・・・・」


俺のテンションに連動したか、光の玉から発せられる光が明滅しだし、消えてしまった。

消えると同時に、閉めていた窓を開け放つナリアさん。

現在時刻は凡そ朝の10時前後、まぶしい日の光が差し込んでくる。


今日は俺のお願いで、魔法を使う授業の真っ最中だった。

この家の至る所にある魔法道具の数々、自由自在に魔法を使うナリアさんを目の前に数日も過ごせば、

魔法を使ってみたいという願望も沸いてくる!

なんたってここは異世界!地球では物語や空想でしか存在しなかった魔法が、目の前にある。


私も魔法使ってみたいです! と今朝ナリアさんにお願いしたところ、早速教えてもらえる運びになったのだ。

「私の授業は厳しいわよ?」と微笑みながら抱きしめようとしてくるナリアさんをやんわりと避けつつ、授業が始まったのだ。


ナリアさんの説明によると、魔法は誰にでも使うことができるらしい。

ただ、魔力の強さには個人差があるので、強力な魔法を使うとなると補助魔石などの魔道具が必要になる

との事だ。

ナリアさんみたいに魔力、つまりMPが大量にあれば、かなり上級の魔法でも魔石等の補助無しに

使う事が出来るらしい。

まぁ、日常生活で使われる魔法というのは全部初級魔法に分類され、消費されるMPも1や2なので、

魔石なんかはあんまり使わないみたいだけど。


一般的な冒険者のMPが500~1000の間らしく、ナリアさんみたいにずば抜けて魔法の素質がある人も

居れば、俺のようなみそっかすも・・・居るらしい。

ま、今は小鳥ちゃんパワーで530もあるし!張り切って魔法を使おう!


ちなみにライトボールで消費されるMPは1。 消費するMPの多さで初級、中級、上級、最上級 といった

具合にランク分けされている。

初級魔法は1~5、中級魔法は6~30、上級魔法は31~100、最上級魔法は100以上といった具合に。

乱発をしようと考えなければ、俺でも最上級魔法を打てる計算だ。


ちなみに魔力は一晩寝れば全快する。 この世界の魔法の源となっている魔力は、月の光を植物が取り込み、

その光に含まれる魔素を魔力に変換して、空気中に放出しているらしい。

魔素というのは、簡単に言えばダイアモンドの原石のような物らしく、それ自体には力があっても、そのままでは魔法としては使うことが出来ない。それを精錬するのが植物たち、というわけだ。

植物が成長する過程で魔素を使い、その使った後に排出されるのが魔力。

簡単な説明なので詳しいことはわからなかったけど、夜になればMPが回復しやすくなるよ!ということだろう。


うちの世界にも月は出てたけど、魔素とかは無かったなぁ。

一つの事柄を取ってみても、地球とは全く違う。


「えーっと、530から1だけ使ったから今は529か。うーん、何かが減った感じはしないよ?ナリアさん。」

「まぁライトボールぐらいじゃわからないかもね。魔力は身体能力を維持するためにも必要な物だから、

 急激に減ると倦怠感が出てくるわ。 だから一度に使いすぎないようにするのよ?」

「了解です!」


つまり【MPがありません】の状態になると、元気が無くなるってことか。

MPが尽きると、単純に魔法が使えなくなるってだけじゃなく、他にも障害があるんだね。


「とはいっても、一度体験してみないとわからないわよね。 それじゃあ空間魔法でも使ってみましょうか?」

「空間魔法って、あの何も無い所に物を入れておくあれ?」

「そう、あれも空間魔法の一つで、インベントリークリエイトって魔法よ。 一度空間を作ると

 消さない限り効果が持続する便利な魔法よ。 ・・・ただし!」

「ただし?」

「この魔法は空間の広さに比例して、持続的にMPを消費し続けるの。だから使わないときは魔法を解除

 しておくのが賢い使い方ね。」

「なるほど!」


まぁ確かに、料金なしで借りれるコインロッカーなんて無いしね。

借りっぱなしにすれば延滞料金を取られる、いたって当たり前の理論だ。

それと同じで、魔法を解除しないと自分のMPが枯渇するまで続くってことかー。


「ちなみに、このリビングと同じぐらいの大きさだと1時間でMPを20ぐらい消費するから。

 アキちゃんのMPだと・・・維持するだけで、1日の間に使える魔力が枯渇しちゃう計算ね。」


「1時間に使うのが20で一日は24時間だから20×24=480・・・残るのは50かー。 

 この魔法は便利だけど、燃費はあんまりよくないんですね。」

「計算もできるのね!えらいわ~アキちゃん!」

「いや、この程度なら誰でも・・・」


正直、掛け算で褒められても嬉しくない。

こっちの世界で計算が出来る人って、あんまり居ないんだろうか?

だとすると意外と重宝するかもしれないな、日本の義務教育に感謝だね!

「まぁ、こんな広い空間を作る必要はそうそう無いから、アキちゃんはこの手提げ袋と同じ大きさの空間

 を作ってみましょ!この手提げ袋をイメージしながら呪文を詠唱すればおっけーよ!」

「了解です!」


「じゃあ呪文を教えるわね。さっきみたいに私の後に続いて詠唱してね?」

「はい!」


『次元を紡ぐ力をここに、インベントリークリエイト』


なるほど、じゃあ同じように・・・


『次元を紡ぐ力をここに、インベントリークリエイト!』


目の前の空間がぐにゃりと歪む。

丁度手提げ袋の口と同じ大きさの裂け目が出現した。

それと同時に、誰かが肩をつかんで下に引っ張るかのように、体が重くなった。


「成功ね!ちなみに呪文は一度唱えると、次からは魔法の名前だけで使えるようになるから、

 今度からは魔法の名前だけでいいわよ。」

「なるほどー・・・!便利に出来てるですね、魔法って!」

「詠唱短縮の効果がある薬を、今朝アキちゃんに飲ませたからなんだけどね! おいしかったでしょ?」


薬? 今朝飲んだジュースのことかな?

カキ氷のブルーハワイシロップみたいに、透明な青い色をしていたジュース。

綺麗な青色だから、サイダーみたいな味でもするのかな? って思ったらりんご味だった。

後味がちょっとだけ苦かった気がするけど、確かに不味くはなかった。


「あの薬は一度飲むと、効果は永久に持続するから、今後魔法を覚えるのに便利でしょ? あれ私が

 開発した薬なのよ~!」

「え、ナリアさんが作ったんですか? 実はすごい人だったんですね!」

「当たり前よ!あと「実は」は余計ね。 減点5よ!」

「はぅ!?」


いけない・・・余計なことはしゃべらないようにしないと、また寝不足になる!!


「ほら、そんなことよりもさっきと比べてどう?体がダルくない?」

「そうですね、魔法を使った後なんだか体が重く感じます。」

「それが一度に大量の魔力を使ったときの症状よ。この魔法は発動するだけで30。

 後、大きさに比例して更に魔力を消費するから・・・」

『真実の鏡よ、この者へ宿る力を示せ』


またあの白い板が出現すると、MP残量が479になっていた。

つまり、ライトボールで1消費した残りが529だとすると、使ったのは50か。


「この程度なら、アキちゃんでも問題ないでしょ? お買い物に行くときに楽だから覚えておくのよ!」

「了解です!」

「さて、じゃあ早速作った空間を確認してみましょ!」

「あ、えーっと・・・この裂け目に手を入れればいいんですか?」

「そうよ、うまくいってればちゃんと中に空間が出来てるはずだから。」


透明な裂け目に右手をそーっと差し込む。

すると、肘まで腕が入ったところで行き止まりに当たった。


「奥行きはこのぐらいみたいです。 手提げカバンと一緒ですね。」

「広さも大体同じぐらいでしょ?この程度なら維持するのにMPは1か2しかかからないから、

 うっかりそのままでも問題ないわ。」


おぉぉ・・・魔法って革命だね。

俺の世界でこのインベントリークリエイトが存在すれば、リュックやカバンが売れなくなるに違いない。


「ささ、まだまだお勉強は始まったばかりよ!今日のうちに必須魔法は覚えちゃいましょう!」

「はい!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・




『フィーリングウォッシュ!』


リビングのフローリングに、水で出来た半球が居る。

その半球の中ではぎゅるるる!っと水流が発生していて、半球が通った後はピカピカになっている。


「便利ですねぇ~、魔法って!」

「でしょ! 今日覚えた魔法はどれも便利だから、ちゃんと覚えておくのよ?」

「はーい!」


今日ナリアさんに習った魔法は・・・


『ライトボール』

『インベントリークリエイト』

『カルム』

『ウィンドセリム』

『フィビケーションウィンド』

『ブレインパワー』

『エアナイフ』

『レインコート』

『コーリング』

『フィーリングウォッシュ』

の10個だ。


『ライトボール』と『インベントリークリエイト』は現在も実行中。

夕日が落ちてきた現在、覚えたてのライトボールを三つほど部屋に浮かべて遊んでいる。

亜空間にできたスペースにはナリアさんからもらったお小遣いの銀貨10枚が入っている。

ここに入れておけば、魔法を使っている本人以外には取り出すことが出来ないのでスリの心配も無い。

『カルム』は、使用すると遠くにある物を拡大して見る事ができる魔法だ。

双眼鏡の魔法バージョンって考えるといいね。

『ウィンドセリム』は扇風機。空中に魔方陣が出現して、1時間ほど風が発生する魔法。

夏には必須!との事だ。 今は秋だけどね。

『フィビケーションウィンド』は逆に暖房だ。暖かい風が魔方陣から吹いてくる。

冬になったら常時展開しそうな魔法だ。 暖房費がかからないって素敵!

『ブレインパワー』は一時的に筋力をあげる魔法。 この華奢な腕では重いものを持ち上げるのに

苦労するので、魔法で少しでも補おうという考えだ。

効果は、お米1kgを軽々と持てる程度。通常字の1.3倍に引き上げる事ができる。

『エアナイフ』は名前通り風のナイフ。長さ15cmほどの真空の刃を出現させ、あらゆる物を切る

事ができる。

ただし、切れ味はそれほど良くない。せいぜいペーパーナイフに使えればいい所だ。

『レインコート』は、全身に薄い魔法の膜を展開して、雨でぬれないようにする魔法だ。

おかげでこっちの世界に傘や雨合羽はないようだ。

『コーリング』は、俺がこの世界に来て無意識に使ったらしい念話魔法。 

離れた相手に声を届けることが出来るが、離れれば離れるほど魔力を消費する。

そして最後の『フィーリングウォッシュ』は、床をきれいに掃除してくれる魔法。

展開した部屋を隅々まできれいにしてくれるので、とっても便利な魔法だ。



一気にこれだけの魔法を使うと、流石に体が重い・・・。

おまけに眠い。

まだ時刻は夕方だというのに、夜更かしをした時みたいに瞼が降りてくる。


「ナリアさーん・・・ねむい。」

「あらあら、今日始めて魔法を使ったからね。 無理しないで寝ましょう?」

「ぅー・・・。」


とことこ寝室へ歩いていき、ベットに到着するや否やベットにダイブ。

もふんっと俺をいつでも受け止めてくれるベットは偉大だ。


「おやすみなさひ・・・。」



そしてあっさりと眠りについた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・




「ぅー・・・・やめちぇー・・・・・」


「もう、布団もかけないで寝るからよ?減点80!」

「というわけで、一緒に寝ちゃおっ♪」










安眠する事ができなかったせいだろう・・・・・翌朝にMPを確認したら420までしか回復していなかった。







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