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手を繋いで

最終話になります。

楽しんでいただけていたら嬉しいです。

エピローグ的な感じになっています。

“おはようございます。

 28件分の測定結果確認しました。


 今日は仕事が早めに終われそうなので

 明日のデートを早めて今夜から

 そっちに行ってもいい?

 キラ―――(☆ω☆)―――ン


                        品質保証部

                          棚澤明倖“


毎朝の日課になっている明倖からのメールを読んでクスっと笑った。まだ誰も来ていない

測定室でしばらくメールを眺める。


「なんかハートマークが見えてきそうなメール…」


とりあえず、携帯で返信しておく。


“よろこんで。

 僕も早く仕事を終わらせて買い物しておきます。

 

 大好きですよ。“


送信…。多分、このメールを見て笑顔になっている明倖を想像して嬉しくなってくる。



「おはよ~」


しばらく経ってから眠そうな大木さんが入ってきた。両腕には今日中に測定を終えないといけない試作品を抱えている。


「けっこうありそうですね。」

「んー…33点だったかな。伝票と仕様がそこにあったでしょ」


早く終わらせて帰らなくちゃ。そう思って手際よく仕様を確認していた


「…なんか最近良い事あった?野田君。」

「え?なんでですか?」

「う~ん…なんかすごく楽しそうに見えるんだけど…

 はっ!!!もしかして彼女!彼女できたでしょ!!!」


いや…彼女じゃなくて恋人ができました…絶対に言わないけど。


「いいなぁ~いつコンパしたの?っていうか呼んでよ~コンパ~!」


心底うらやましそうに言われても…コンパではありません。

そもそも恋人でも彼女でもコンパの出会いだけでしかできないわけではないでしょ…

彼女が欲しいのか…コンパがしたいのか…


とりあえず笑ってスルーしよう…


「大木さんも早く測定してきて下さい。」


そういって伝票を渡した。もう他のスタッフも自分の担当の試験の準備を始めている。


そうだ…江川に教えたらご祝儀でなくてもなんかおごってくれるかな…

今度連絡してみようかな…

今、かなり毎日が幸せだよって…


                    *



“よろこんで。

 僕も早く仕事を終わらせて買い物しておきます。

 

 大好きですよ。“


朝、有也がメールをチェックしたらしく、携帯に返信があった。

それを読んでつい顔が緩む。



初め、仕事上でメールのやり取りをしていた時、ただの事務的な文章なのに測定結果に対して何か一言添えられていたり読むのが楽しみだった。顔を見たことがないから単に興味があったのかもしれない。どんな人だろうって…


そしてある日ついに考えあぐねた後、メールの最後に一文付け加えてしまった。


“今日は本社のある横浜はお祭りなんです”


送信した後、一人でパニックだった。

だからなんだよって思われたかもしれない。仕事のメールに関係ない事書くなよって呆れられるかもしれない…そう考えて送信した事を後悔したり、でもそんなたいして踏み込んだ事書いてないし、社交辞令っぽくない?と開き直ってみたり

誰かに相談するのも変だと思い、一人で夕方まで悶々していた。


メールはその頃一日一回、朝、俺がメールをして、夕方に有也が測定結果をメールする。その日の夕方、有也からのメールがきた、恐る恐る読んでみると


“お祭り楽しそうですね。横浜だからたくさん美味しそうな出店とかありそうです”


そう簡単な返信が付け加えられていた時は本当に飛び上がるくらい嬉しくて、

それからは調子に乗って毎日色々な事をメールに書いた。



測定値オーバーの試作が出た時は上司にあれこれ理由を付けて持ち込ませてもらった。

有也に初めて会った時、もうそれだけですごく嬉しかった。普通の男なのに有也の書く文章みたいに優しいくて温かみのある笑い方をする人だと思った。食事に誘ってもらって有也が笑ってくれたり、有也と会話をする事が本当に楽しくて、帰り道が少し寂しく感じた。


もうそれからは会う前よりも有也の事を考える事が多くなり、今日はなんてメールをしようかと毎日有也の興味がありそうな事を探していた。


その頃には自分が有也を恋愛対象として好きなんだと確信した。今まで同性にそんな感情を持った事なんて全くなかったわけだからかなり焦ったし、どうにか断ち切ろうとした。

相手が自分の事をどう思っているのかわからないし、同性な分どうしたらいいのかも全然わからなかった。


でもどうしても会いたいし、その笑顔に触りたい気持ちが消えないから仕方がない…


結局、自分の気持ちに対して素直になることを選んだ。



お互いの気持ちを知ってからはもう毎日は幸せで困ってばかりだった…



有也のキスをする時に見せる目を伏せた表情、寝顔、いたずらな表情、すねた顔、笑顔…色々な有也を思い出してにやけてしまう。最近では、周りが自分をどう見ているかも気にしなくなった…あっでもそれはまずいかもしれない…それじゃただの変な人だ…


スーパーの前で有也を待っていると驚いたように俺を見つけてから、すぐにあの柔らかな笑顔でこっちに歩いてくる。


「明倖。マンションに行ってると思った」

「んーそう思ったんだけど、スーパーで待っていれば買い物に付き合えるでしょ?

 その分長く一緒に居れると思って」


有也が嬉しそうに顔をほころばせた。


「けっこう待った?すぐ買い物済ませるよ」


照れた顔をごまかしながら有也が先にスーパーに入ってく。有也と一緒に買い物をするのは楽しい。というより、有也とならどんな事も楽しいし、幸せだと思ってしまう。




「よしっ!買い物終了。

 明倖、そっちは僕が持つよ。」


大丈夫と言って、代わりにこっち持ってと言いながら何も持ってない手を差し出してみる。

暗いし、人も通ってないから手を繋いでいたい。

急に有也が嬉しそうにサッと軽くキスをしてから俺の差し出していた手を取った。


「…やられた」


そう小さく言うと有也が子供みたいに笑ってみせた。

その途端、俺は手を繋いだまま足早に引っ張っていく


「ちょっ…明倖?怒った?」


夜の暗がりのせいもあって多分嬉しすぎて真っ赤な俺の顔は見えてない。


「怒ってないよ。ただ早く帰って俺がもっとたくさん有也にキスする!!」


本当に有也はわかってるんだろうか…

俺が本当に有也の事が好きで、有也の言葉や行動一つで簡単に幸せになっている事を…

繋いだ手から幸せが溢れでてそうな気がした…。

そしていつまでもこの手を繋いでいられますようにと願った。




ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。

また新しいお話をムーンライトノベルズにて11日10時にUPする予定でいます。

もしよければ、お時間が空いている時にでも読んでみて下さい。

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