plot_isekai_rec_v1.1.O_fixed.avi.001 ―― 【警告】わがままな再生エラーと破損パケット
[-=====[ plot_isekai_rec.001 ]=====-]
■ Index01: [0000-1000] 破損接続
■ Index02: [1000-2000] 23時熱気
■ Index03: [2000-3000] 強制サスペンド
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┌──────────────────┐
│ Index01: [0000-1000] 破損接続 │
└──────────────────┘
[Error: O-bit dropped]
先輩:「我が国の通信
インフラは、一体
どうなっているんだ。
全く画面が映らないぞ、
奈良。」
後輩:「ええ? そんなはず
ないですよ先輩。私が
何時間もかけて落とした
パケットですよ」
先輩:「だから映んねえって。
ほら、エラーコードの
羅列しか出てこねえ。」
後輩:「おいおい、嘘ですよね。
ちょっとキーボードを
貸してください」
先輩:「なんだよこれ。
理想郷の画面から強制サスペンド
されちまった。画面が暗転したと
思ったらなんだなんだこれ。
いやに不気味な感じで
点滅しているじゃないか。
なんだ、これは文字列か。
英数文字列レンダリング
だなんて、珍しいのにも
ほどがあるじゃねえか。」
『Error: 0x80040154』
『クラスが登録されていません』
先輩:「おい、これ……RealPelyar
のバージョンが古いんじゃねえのか、
奈良。」
後輩:「そんなことあるわけない
じゃないですか、とっくに最新の
パッチは当ててありますよ。
もしかして、コーデックの
バグじゃないんですか?」
先輩:「再生ボタンを押しても
砂嵐しか出ねえ。」
後輩:「やっぱり壊れてるんじゃ
ないんですかね」
先輩:「ちょっと待て。落とした
ファイルの拡張子を見てみろよ。
分割されてやがる。
ほら、画面の右下には、
不格好なアイコンと
いかにもって感じの
アングラファイル名だ@」
『plot_isekai_rec_v1.O_fixed.avi.001』
後輩:「なんなんですか、これ。
ドットの塊のバイナリ《呪印》
なんじゃないんすか?」
先輩:「アホ、これは
結合前の生データ《RAW》だ。
これ単体じゃ何にも
再生できねえんだよ@@」
後輩:「それじゃ、僕たちの苦労は
全部ゴミパケット行きだった
というんですか?」
先輩:「クソが、あいつ
掴ませやがったな。
あの神聖文字の
アップローダー主め。んん……
はて、神聖文字
ってなんだっけ?
おい奈良、次のファイルの
インデックスコードを
叩き込め@@@@@@@@@」
その叫び声を最後に、スピーカー
から激しいハウリング音が弾ける。
ノイズの向こう側で、システムが
狂い始める。自動変換された世界は、
あまりにもお粗末な形をしていた。
画質の荒い、カクカクとした
3Dアニメーション。
出来損ないの命のように、
低ポリゴンの影が画面の底で
不気味に揺れている。
┌──────────────────┐
│ Index02: [1000-2000] 23時熱気 │
└──────────────────┘
先輩:「あちっ……! クソ、
この十七インチの
CRTモニター、
じっとり熱を持ちやがって。
狭い部屋の空気が完全に
サウナ状態だぞ。」
後輩:「床にマザーボードの
死骸やジャンクパーツが
散乱してますからね。
熱が籠もるんですよ。
さっきから安物の半田と、
ホコリの焼ける
古い機械
の臭いが鼻に突いてキツいです」
先輩:「うるせえ、エンジニア
ならこの臭いで飯を食え!
それよりクソ、
USDN回線が
過負荷で詰まってやがる!」
奈良:「フラッツ・USDNの
定額制パケットの
限界ですかね、先輩」
先輩:「……待て。壁の時計を見ろ、
奈良。あと一分で深夜二十三時だ。」
奈良:「あ。テレボータイ開始の、
あの運命の二十三時ですね……」
先輩:「そうだ。全国の
アングラオタクが一斉に
ダイヤルアップを繋いで、
アクセスポイントを
一瞬で圧迫する、
一日の中で最も過酷な
チキンレースの
一分前だ。
ここで回線が死んだら
全てが終わる!」
後輩:「あのTVアニメの、
制作会社から流出した
『内部プロットの動画コンテ』……。
そう聞いてWonMXから
泥臭くサルベージした
パケットですもんね。
絶対落とせません」
先輩:「まさか二〇〇〇年
冬アニメ『時縛君』
のデータが、ヘッダー破損で
全ロスしかけるとは、
筋金入りのアニオタの俺の計算でも
完全に想定外だったんだよ@」
奈良:「繋がれ、繋がれ、落ちろ、
パケット……!」
先輩:「待て奈良@@@
『.001』の分割ファイル、
ヘッダーが破損してて
完全に死んでるぞ@@@@@@」
┌──────────────────┐
│ Index03: [2000-3000] 強制サス │
└──────────────────┘
先輩:「奇跡的に、次の
パケットの『第2話
(.002)』のクラスタ
だけは、100%整合性が
取れてるぞ!」
後輩:「だったら、それを
力技でバイパス起動《再生》
するしかありません!」
先輩:「……よし、いくぞ!
二十三時ジャスト……クリック!」
後輩:「――止まるなよ、
頼むッ……!」
先輩:(ブツ、と重いスピーカーが
不気味なミュート音を鳴らす。
画面はカクカクの
低ポリゴンだ。
だが、砂嵐の向こうから、
凄まじい高密度な
ノイズ混じりの音声が
流れ始めた。
それを鼓膜が拾った瞬間、
俺の全身の毛穴が
ガチガチに固まった。)
先輩:「……待て。おい、
奈良、これ。音声コンテ
なんかじゃない。おいこれ、
まずは北領地の地盤データ
における日照時間と
保水能力の相関関係を
マスタとして
クレンジングします、って
言ってるぞ!?」
後輩:「え? 先輩、
何言ってるんですか急に」
先輩:「違う、俺が言ってるんじゃ
ない! スピーカーから
聞こえるんだよ!
これがBPRコンサルの
ハメ技の基本プロトコル、
デリバリの開始ですよ、
って……おい、お前これ、
誰の声か分かるか!?」
後輩:「いや、ノイズが酷くて
僕にはモゴモゴとしか……」
先輩:「俺だよ! 俺の声だよ!
なんで二〇〇〇年の今、
SOLやOLAPをごりごり
叩いてるだけの
ペーペーの俺が、
何年も修羅場を潜り抜けて
きたような『老練なプロ
コンサル』のトーンで
喋ってんだよ!?」
後輩:「は? 先輩、疲れて
幻聴でも――」
先輩:「幻聴なわけあるか!
今度は、データクレンジング
の次はERPパッケージの
標準プロセスへ力技で
業務を適合させる、
アドオンは最小限にしろ、
って、めちゃくちゃ
ロジカルに早口で
捲し立てて――」
後輩:「先輩、画面が、
フリーズした……?」
先輩:(脳が思考を放棄する
より早く、世界の
トラフィックがジャストで
遮断された。
時計の針が、二十三時
〇〇分を刻む。
ブラウン管の光が完全に
静止し、ハードディスクの
回転音が消えた。
完璧な暗黒と、無音。
システムが、そして俺たちの
現実が、音を立てて
『強制サスペンド』された)




