表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸せにしたいのは主人公じゃない!  作者: いたちのしっぽ
27/71

26

「さて、では理由を説明願おうか?」

フレイザーの好々爺然とした笑顔は今は鬼の笑みの様にも見えるな、とシュンは思った。

学園運営の募金パーティーの翌日の午後、場所はルザン邸。

爵位が無いにも拘わらず唯一、貴族と肩を並べる邸に住まう平民である。

生業は、使用人の育成。

平民を超一流の使用人に仕上げる、貴族御用達の育成所だ。

邸の主人であるルザン自身も以前は王家に仕えていたが、年齢の事もあり自主退職し、自分の持てる技術を全て伝え、駆使し、後進の育成に努めて来た。

さらに、貴族の使用人となり未婚の当主のお手付きにでもなれば、将来は安泰と噂され平民には人気の職業となった。

平民からは授業料を取り、貴族からは契約金を受け取り平民でありながら稼ぎは並の貴族同等である。

そんなルザンの元から旅立って行った使用人たちの胸には、その証として黒い真珠のピンバッジが贈られる。

今回事件を起こしたとされる者たちの胸には、例に漏れず黒真珠のピンバッジが着けられていた。

「…さて、私には何が何やら。手を離れて行った者たちの後の事までは関知しておりません」

齢75を過ぎたとは思えない姿勢の良さで、紅茶を優雅に啜るルザン。

確かに、ルザンが指示したという証拠は何も無い。

そもそも、折角の収入がなくなると言うデメリットはあるが、メリットが無いのだ。

つまり動機がない。

沈黙が落ちる中、シュンの声が響いた。

「“貴族御用達なのになんで平民に仕えなければならないのか”」

「!?」

「おや?目の色が変わったね?」

思わぬとこから聞こえた声に、僅かであるがルザンの目が揺らいだ。

それに気づかぬフレイザーではない。

「成る程。私が原因か」

髭を撫で元平民である自身のせいかと両目を閉じた。

王制となり前大公は王となり、その後釜にフレイザーがついた。

元々、国民の支持でフレイザーを王に、と言う声が多かったが、それを辞退。

ならば座が空いた大公へと、推し進められたうえに王の命令も加わり平民から一気に大公へとなったのだ。

今でも平民出の大公の存在を疎んでいる貴族たちは多い。

しかし、王と国民の支持の熱い者を引きずり下ろすのは容易いことではないし、下手をすれば自身の腹を探られ破滅に追いやられてしまう可能性がある。

それ程までにフレイザー・アーリッシュという男は頭脳明晰で、したたかな男なのだ。

「……王家や貴族に仕えるというプライドがあり、それを後進にも教えて来ました。誇りと自信を持って仕える事の素晴らしさを、私たちは平民であるが貴族に一番近い存在なのだと」

「なのに、平民から一気に大公になった人が居り、そしてその人や孫は自分で何でもしてしまうから自分達の存在意義を否定されたと思った?」

ルザンは口元に手を当て大きく息を吐き、観念したかの様に「その通りです」と肯定する。

しかし、それこそが嘘であったことをシュンとフレイザーは見破った。

人は嘘を吐くときソワソワしたり、横を向いたりと頭の向きを変えると言われるが、その逆も然り。

視線も動きも微動だにしない、これも怪しいのだ。

さらには、大きく吐いた息は緊張をほぐそうとしている証拠で、口元を隠すのは話していない真実があるという事。

ここに来て、これまで読んだ推理小説の知識が役にたつとは思いもよらなかった。

「本当の事を話してはもらえないかな?このままでは貴方が丹精込めて育てた者たちが死罪となってしまう。首謀者として、貴方も」

「ついでにあの魔法薬を作った人を教えてほしいかな。貴方には魔力がないから他の人が作ったのは分かってる」

暫し沈黙した後、ルザンは視線を落とし

「……死罪で構いません」

とこぼした。

「!!?」

その返答にはシュンもフレイザーも意外だったのだろう、目を見開き驚いた。

「だが、私だけです。他の者たちは私の指示に仕方なく従っただけですので…」

事実ではない事は一目瞭然なのに、ルザンの後ろに居る人物の姿が見えない。

シュンは一連の事件で何か見落としがないか目を閉じ思い返すも、何も浮かばない。

目を開けると、眼前のルザンが諦めた様な表情で紅茶をもう一口飲むところで、そこで違和感を覚えた。

「…最初に叫んだのは…」

「?…シュン?」

カップをじっと見つめ、何かをボソリと話すシュンをフレイザーとルザンは怪訝な表情で見る。

「あのいけ好かない侯爵か!?」

「!?」

いきなりガタリと立ち上がり身を乗り出しルザンに詰め寄るシュン。

「シュン、どうしたというのだ?」

「昨日のパーティーの時侯爵はグラスの中身を飲んで暴れ出して、その直後あちこちで暴れる人が続出したから気のせいかと思ってたけど、あの時侯爵の飲んだグラスからは魔力の反応が無かった!演技だったんだよ!狙われたのはクリスだね?」

「何だと!!?」

人が周囲にわんさか居る状況で、他には目もくれず侯爵はクリスに突進した。

それがなによりの証拠である。

飲み物を飲んでから暴れるまでに時間差があるし、シュンに気絶させられた後、数分で目を覚ました後、解毒剤を飲んでいないのに正気を取り戻していた。

クーでさえ数十分は幻覚を見ていたにも拘わらず、だ。

目を覚ました時はまだ、薬の効果は続いていないといけないのだ。

いつも事件が起きるときは被害者は一人だけだったのに、何故今回だけは多人数の被害者が出たのか不思議であったが、侯爵の犯行を誤魔化すという理由があるなら納得だ。

シン達が護衛として参加した夜会で事に及ばなかったのは、シン達がどれ程の腕を持つ護衛か判断がつかなかったからだろう。

「クリスお嬢様を殺せば、平民大公の代はフレイザー閣下で終わる、そう言われたんじゃない?」

「!!?…そこまで…分かってしまうのですか…」

「…おのれ…侯爵…。私の孫に手を出そうとした事、死ぬまで後悔させてやる」

「なんなら手伝うよ?」

「うむ!頼む!ルザン!貴様の処罰は後だ!」

珍しく憤慨するフレイザーはいつもの余裕たっぷりの優雅な足取りとは程遠い、ドスッドスッと荒々しい足音を響かせながらルザン邸を後にした。

「………侯爵様……ご武運を…」

フレイザーのあの様子からして無理だろうな、とは思ったが一応、気休め程度に祈りを捧げるルザンであった…。


それから僅か数日後。

侯爵はありとあらゆる不正が発覚し、その内容が記者達へと伝えられた。

国内No.3の実力を誇る侯爵のスキャンダルは瞬く間に全国を駆け巡り、更には魔法薬を使いパーティー会場を混乱に陥れたのも全て侯爵の犯行とされ、協力した使用人達は侯爵に弱味を握られていた被害者であると、何もかも全て侯爵のせいとされた。

全ての罪を侯爵一人のものとし、強制労働所送りにされ、その家族は親戚の家に身を寄せる事となったのだ…。


「えげつな…」

「リリアたんを虐めてた時点で気に入らなかった」

「ホッホッホ、さすがであるな。魔法を駆使した証拠集めは実にスムーズであったな」

新聞を小さめの丸テーブルにバサリと広げ、侯爵の記事を眺めるクー。

あんなおっさん知ったことか、と興味なさげに紅茶を啜るシュン。

すこぶるご機嫌で、やってやったわと笑いが止まらないフレイザー。

丸テーブルを囲み、三者三様の感想を述べる一同が何故一ヶ所に居るかと言えば、フレイザーからの呼び出しであった。

パーティーの時の調書を取りたいと呼びつけられたシュンとクーであるが、それが嘘だと直ぐに分かった。

“あの話”だという事を…。

「…さて、いけ好かないおっさんの話は終わりにして、改めて自己紹介しとく?」

「俺はクーでいい。出身は“日本の北海道”」

「お?真逆だねー。私は“鹿児島”」

「私はその間の“東京”だよ」

そう、三人には共通点があった。

“前世の記憶持ち”という。

「前世と言うには語弊があるかな?」

「途中で魂が入れ替わった感じだね」

「へぇーそんなトコまで同じなんスね」

フレイザー・アーリッシュは数十年前、まだ十五歳の少年兵で、戦場を駆け回っていた。

剣を片手に最前線で消耗品として扱われ、そして敵の剣に倒れた。

しかし、次に目覚めたときは野戦病院で、瀕死から奇跡の生還、かと思いきや記憶の混乱があり戦線から外されそうになった時、酷い頭痛が起き“前世”と“今生”をはっきりと思い出した。

医者を引退した後戦略ゲームを趣味にしていた“前世”と孤児で僅か十歳で兵士に志願しなければ食べていけなかった“今生”を。

それからはゲームや書物で培った戦略を次々と打ち立て破竹の勢いで領土を増やし、軍神とまで呼ばれるようになった。

同じく兵士であった女性と結婚し、息子を授かり歳も四十を超えた頃に終戦し公国は大国となった。

「というわけで今の地位におりますフレイザー・アーリッシュというものです」

「知ってるッス」

「知ってる」

フレイザーの雄姿を知らぬ者は殆どいない。

国との関わりのある職業に就いていれば余計にだ。

妻は数年前に病により死亡し、息子は戦後処理に追われる中、敵の脱走兵に闇討ちにあい、嫁はそのショックから立ち直れず憔悴してしまったという。

順風満帆な人生が一気に奈落に突き落とされた気分であったと、フレイザーは目を伏せた。

ゆえに今、血のつながりのある家族はクリスだけなのだ。

そのクリスを標的にしてしまった侯爵は、文字通り地獄を見る羽目になったという事である。

「…なんか、閣下の後って話しづらいんスけど」

「ホッホッホ、すまんな。気にせず話してみてくれ」

「…えー…じゃぁ、」

こほんと一つ咳払いをし、クーが口を開いた。

教会に併設されている孤児院育ちで、食べるのもやっとであった七歳の頃、つい出来心から食べ物を盗んだ。

それが店主に見つかりボコボコにされ裏路地に放置された。

腹は減るし痛いしで、気を失い目が覚めた時には…

「見た目は子供頭脳は大人!になったわけで…」

「はいはい、“迷”探偵サクサクいこう」

現代日本のネタが使えると嬉々として話すクーだが、あっさりとスルーされた。

目が覚めたその時はまだ、状況もわからなくて、体の痛みに耐えてひたすら歩いていたら教会が見えてきた。

と同時に頭痛に襲われ、痛みが引いた後には“今生”の記憶が残っていたと言う。

そして、国の名前から「おや?」と思ったクー少年は自力で調べ、この世界が“アスベルの冒険譚”と言う漫画の世界だと気づいた。

これは“俺チート”なんじゃ!と思ったが魔法とかは一切使えず落胆した。

しかし、身体能力だけは子供であるにも拘わらず大人顔負けであった為、“前世”の職業を駆使し、兵士になる事を決めた。

兵士になれば主人公であるアスベルとエンカウントするのではと言う期待があったが、それどころかシンを逃す役目やアスベルの護衛と言う任務に就き、コレは特等席で物語が鑑賞できるとウハウハだったらしい。

「前世の職業って?」

「実家が剣道の道場で、後継いで師範をやってたッス」

「成る程。フレイザー閣下もクーも自分に合ったチートって訳か」

「家族は居らなんだか?」

「家族…ッスか…。アスベル様があちこちウロウロするせいでゆっくり彼女も作れないんスよ!前付き合ってた娘は、何度もデートをドタキャンしたせいでフラれるし!」

「あぁ…アスベルの突飛な行動で休みが無くなるわけね…」

「そうなんだよぉ〜!アスベル様!もう少し落ち着いてー!せめて休みはちゃんと休ませてー!」

テーブルに突っ伏し泣き真似をする姿は、実際は泣いていないのに同情するものがある。

「次、シュンッスよ…」

「…う、うん」

気落ち気味のクーに苦笑いしながらシュンはこれまでの事を話した。

父親にされた事やレイルに拾われ、同じく頭痛で記憶が戻った事、魔法を習い、シンを拾い、マールとエクシャを迎えた。

“アスベルの冒険譚”やその番外編を読み、シンや仲間たちを死なせたくない、幸せにしたいと日々奮闘している事を。

「その…先程クーの話にも出てきたが“アスベルの冒険譚”とは何のことかな?」

「…おう…知らなかったんだ」

「漫画ッスよ。日本では割と人気でしたけど」

「うむ、漫画は読まぬからな…そうか、この世界はその漫画の世界だということか…」

あっさりと受け入れたフレイザーに驚きを隠せない二人だが、“転生”などと言う非現実的な体験を行った後では些細なことである。

漫画の中などあり得ないなどと思っても、じゃぁ転生トリップはあり得るのか?となるからだ。

漫画の内容が気になったフレイザーにざっくりと話をして聞かせれば、自分が調べたシンの事と概ね合っていたことに満足そうに頷いた。

「漫画では冷酷非道、お色気ムンムンなシンだけど、今ではチョコレート命の純粋培養少年だからね。確実に復讐とは離れて行ってると思うよ」

「…最強闇の魔法使いに何したんスか」

「美味しいご飯と住み良い暮らしの提供です」

そんな事で懐柔されたのかと若干ショックを見せるクーであるが、このままいけば悲劇は起きないという事に嬉しさもこみ上げる。

「そうそう、話は本編じゃなくて番外編になるんだけど、クーはルーズランス国がどこと戦争したか分かる?」

「いや、相手国は出てなかったと思うスッよ」

「戦争が起きるのか?」

この世界で戦争が無くなったのはほんの十数年前。

悲劇は終わったと思っていたがまた何処かの国が始めようとしているのかと、フレイザーは眉間に皺を寄せる。

「ルーズランス国が一応勝利するんだけど、騎士団の団長と副団長が戦死するの。しかも多分だけど相手は銃を戦場に持ち出してくる」

「!!?」

それがどう言うことかわからぬフレイザーではない。

魔法使い以外は基本的に剣や、槍、弓、騎馬などで、そこにより強力で遠距離攻撃が可能な銃が出で来たらひとたまりもない。

「なぜ銃が使われると?」

フレイザーの問いにシュンは最近あったルーズランス国の事件を話した。

銃を内密に集め、それが一般人でも容易く撃てるかギルド立て篭もり事件を起こし実験を行ったこと、その銃を集めていた貴族が殺され、グルだったルークと言う魔法使いが持ち去った事。

「銃を集めてた貴族を殺したとする罪を着せられて、騎士団のニノとグレンを今うちで匿ってるってわけ」

ルークがどこの誰の指示で動いてるか調べたいのだがなかなか手がかりが無い。

分かっているのは、ルーズランス国に戦争を仕掛けたのはルーズランス国の隣国と言う事だけだ。

「ルーズランス国に面しているのは全部で五カ国。うちヘルオキア連邦は同盟国であるから除外して良いか…」

「いや、除外はしないよ。取り敢えずしらみ潰しに調べるつもり」

「え?」

「なんと?」

「え?何?片っ端から調べるつもりだけど…なんでそんな変な顔してるの?」

「シンたちとッスか?」

「いや、一人でだけど。みんなに説明できないもん」

クーとフレイザーは互いに顔を見合わせて、深いため息をついた。

それが何を意味するのか分からず、シュンは怪訝な表情で二人を見る。

「目の前に大量の人を動かせる人が居るんだから頼ればいいのに」

「お前さんを探す任務から戻った私の子飼達が暇をしていてな」

そう言うことかと納得するが、直ぐにじっとりとした視線に変わり、フレイザーを見た。

「閣下には頼らない。絶対無理難題な要求とかしそうだもん」

「ホッホッホ、同郷のよしみで国落としを頼もうかと思ったんだがね」

「えー…閣下、それは流石に割に合わないッスよ…」

聞けばロザリール国含む七つの同盟国で今、問題が起きていると言う。

うち一つのシグアナ国の国王が十年前に代替わりしたのだが、その国王が何とも絵に描いたような愚王であるという。

税を上げ、国の金で贅沢三昧。

それに中央の貴族も乗っかり出したものだから、地方では食うのもやっと。

まともな領主は自身の財を投げ打って領民の生活を支えてきたが、それも限界に達している。

中央でも国王やその周囲の貴族達に苦言を呈す常識ある貴族も居るが何とも出来ず、同盟国である残り六カ国に助けを求めてきたのだ。

食うに困った平民達への援助から始まったが、それがまた国王へと流れて行った事で暴動が起こり、内乱が勃発。

一番近い同盟国であるアルワンダ国とルーズランス国に難民が集中し、両国の財政を圧迫しているのだ。

それを食い止めるべく、六ヶ国では近々シグアナ国との同盟を破棄する事になり、これ以上要らぬ被害が及ばぬよう国自体を崩してしまおうと言う意見も出ていると言う。

「この世界では被害を被った近隣四ヶ国の同意があれば、合法的にその一ヶ国を一方的に攻める権利が与えられる。今回は同盟国である六ヶ国からの注意勧告など受けたにも拘わらず、シグアナ国は無視であった」

「フレイザー・アーリッシュ大公閣下の勧告無視とか、スゲェっすね」

「成る程ねー。まぁ可哀想ではあるけど六ヶ国共同なら私たちが出る幕ないよね?圧勝でしょう?」

「確かに。敵の兵は無理やり召集された平民達だ。私の掴んだ情報では、内乱の際に捕らえられた者たちがそのまま肉壁となるようだ。何ともやりきれん勝利であるな」

「うわぁ…あと味の悪い戦争ッスね…」

チラリとフレイザーとクーはシュンを見た。

その視線にヒクリと口角が引き攣る。

「それはつまり被害を最小限に留めるために何とかしろって事?無理だから。私を何だと思ってるの?」

「魔法使いチート」

「魔法使いチート」

「チートが名前みたいに言うな。あーもう!分かったよ!やればいいんでしょ!?その代わり、銃を集めてる人をちゃんと見つけてよね!?期限は二年。二年後に戦争は始まって終わる。詳しい日付は分からない」

「よかろう。最善を尽くす」

「で?散々煽ったクーは何をしてくれるの?」

「俺?俺は何も。アスベル様の護衛で忙しいので。あと彼女欲しいッス」

「そんな事聞いてないよ」

「まぁ、力になれる事があれば協力するッスよ。同郷のよしみで」

「はぁー…期待しないでおく…」

どこまでも自由なクーにげんなりとしながら、それでも腹が立たないのはやはり“同じ境遇”だからだろう。

久しぶりに何の遠慮なく自分の事を赤裸々に話せたことは、本当に嬉しかったし楽しかった。

そしてこれからは行き詰まったら誰かに相談できるのだ。

それだけで…

「心が軽くなるッスね」

「うむ」

「そうだね…………いや待って…ここに三人“居る”って事は他にも居るんじゃない?」

「!」

そう言えば心当たりがある、とフレイザーは一冊の本を取り出した。

まさか偶然だと思っていたが三人“居た”のだ。

四人目が“居て”も何らおかしくない。

「あ、その人の本持ってる」

冒険物から推理物、恋愛物と幅広く執筆する人物。

その正体はヴェールに包まれており、男か女かさえも分からない。

「作者名…Ms.ドイル?ッスか?Ms.っていうくらいだから女なんじゃ?」

「世間ではそう思われているが、ドイルとは多分コナン・ドイルから来ているものとみる。コナン・ドイルは男だよ」

「推理小説とか、ほかの作者のとは比べ物にならない内容だよ。この人の書いた本を読んでたおかげで今回ルザンの嘘が分かったわけだし」

本を読まないクーは「へぇー」とパラパラとページをめくる。

「…うっ!活字を見ると眠くなる病が!」

「…」

そんなクーを白い目で見たシュンは本を取り上げフレイザーに返した。

内容からしてフレイザーが考えている事は、シュンも同意できる。

ここに三人も居なければ、類い稀な文才のある人であると言う認識で終わっていた。

「まぁ、自由に面白い本を書いている、文才チートと言うところであろう」

「そうだね。機会があれば会ってみたいけど、正体を隠してるのにわざわざ探し出すのも申し訳ないしね」

他にも自分たちのような者が居る。

それは敵か味方か、はたまた傍観者かは分からないが会う事があれば会ってみたいと、そう思うのはやはり少なからず“故郷”を恋しく思うから……。







お知らせです。


次回27話の4月28日の投稿はお休み致します。

次の更新は5月1日です。

ゴールデンウィーク後半5月1日から5月6日までの6日間、毎日更新を予定しております。

宜しければお付き合い下さいませ_|\○_


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ