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幸せにしたいのは主人公じゃない!  作者: いたちのしっぽ
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(付いて来てるぅぅぅぅ!!!!なんで!!?)

ヤシの苗や実を購入するために現地の人御用達の植物屋へとやってきたのだが、ヴァイクは下手くそな尾行で付いてきていた。

(もう!ほらまたマールが“殺ろうか?”って目をしてるから!早く消えてくんないかなぁ!)

シュンとしてはどうしてもマールとヴァイクをぶつけたく無い理由があった。

ぶつけたく無いどころか、微塵も関わらせたく無い。

漫画でシンチームと主人公チームが顔を合わせると必ずマールとヴァイクが戦う事になる。

そして最後はマールが殺される。

しかも、その後ヴァイクは“もう魔物は憎まない”とか言って心穏やかに暮らしていくのだ。

(マジふざけんなだよ)

原作をぶち壊し続けていくつもりではあるが、念には念を、宿敵の二人には極力関わり合いにならないで欲しい。

「…ヤシの実など何にするんだ?」

「うわぁ!?」

ドッドッドッと早鐘を打つ心臓を押さえ、声の方を見れば、隠れて尾行していたヴァイクが普通に話しかけてきた。

「おい、いい加減にしろ。シュンに害を成すなら容赦しないぞ」

「魔物風情が」

「こんな所でバチバチやらないでくんない!?それからなんでいきなり話しかけてきたの!?隠れてたでしょ!?バレバレだったけど!」

店の物を損壊する事態だけは避けたいと二人の間に割り込み、まくし立てると、ヴァイクはシュンへと視線を移した。

「ヤシの実などただの硬い実を何に使うのかと思っただけだ。まさか売ってるのにわざわざジュースを搾り取るとは思えないしな。はっ!まさか悪事に…!!」

「なんだよ悪事って。人に投げつけるとでも思ったのか?」

シュンは深く溜息を吐き、撲殺だの凶器だのとぶつぶつ言っているヴァイクに仕方なしにヤシの実の用途を説明することにした。

「ヤシの繊維はたわしとか綺麗に加工すれば靴の裏の土をよく落としてくれるコイヤーマットになるよ。ジュースは飲むしコプラはそのまま食べられるし、絞れば油が採れてアロマオイルなんかにも使えるんだよ。殻は頑丈だから、器にしたり小物入れにしたりもできるし、加工すればウィンドウチャイムとかアクセサリーのパーツにだってできるよ」

「え?そんな事考えてたのか?」

「なんでマールが一番驚いてるの?」

マールとしては油分を抽出するだけだと思っていたからだ。

そして、

「凄いな!それで新しい商売ができそうだ!」

植物屋の店主も嬉々としている。

「油脂を抽出するだけじゃもったいないじゃん。だから出来そうな物を考えてたの」

質問してきた当のヴァイクはこんな硬い殻を加工などできるのか?とコンコンとヤシの実を小突いている。

「見ててね」

「?」

シュンは購入したばかりのヤシの実を一つ、レジ台に載せると、グッと魔力を込める。

ヤシの実がキラキラと光り出したと思った瞬間ぽふんと煙に包まれた。

煙が晴れると半分になった殻の中にコプラとジュースが、もう半分の殻には、縁が綺麗な花柄に加工された器が。

そして繊維部分は小さなたわしと小さなマットへと姿を変えていた。

「うん!イメージとしてはこんな感じかな」

「おぉ!凄いな!!」

「!?魔法陣無しで…!」

店主はシュンの作り出した物に興味津々であるが、流石主人公チーム。

ヴァイクはシュンの魔法の能力の高さにすぐに気付いた。

「加工魔法は得意なんだ」

「家事魔法と言い加工魔法と言い…なんでそんなのばかり覚えるんだ…」

「えぇーだって火柱の魔法とか氷の槍なんて覚えても生活の役に立たないじゃん」(使えるけど)

「カマイタチは使ってるだろ」

「あれね!草刈りに凄い便利!」

「使い方」

ヴァイクは唖然としていた。

使い方はともかく、この歳で複数の魔法を使えるなど、天賦の才能である。

末恐ろしいと感じると共に安堵もした。

(良からぬ事に使う気が全く無いんだな…)

才あるものは必ずと言っていい程、良からぬ者となるか、私欲の為に出世を目指す。

しかしシュンからはそんな気配を感じなかった。

ヴァイクが懸念しているマールも、特に何かを強要しようとする様子もなく、ただ楽しげに会話をしているだけだ。

(…本当に、この2人には何も無いのか?)

騙されたとか、攫われたとか、奴隷として買われたとか、拾われたとか。

そのようなことを考えていたヴァイクの手を、徐にシュンが握った。

「!?なにを…!」

「嗅いでみて」

手の甲に僅かに塗られた何か。

それを言われるがままに鼻へと持って聞けば、独特の甘い香りが肺に広がった。

「それがオイルだよ」

「…成る程、女に人気がありそうだ」

マールの手にも少しだけ付け、それを物珍しそうに嗅いでいる。

「甘すぎて苦手な人もいるから、アロマとしては売れないかな。やっぱ仄かに香るハンドクリームだね」

ウキウキとこれからの製造過程を想像して楽しむ姿は子供にしか見えなかった。

「そろそろ帰るけど、家まで付いてきたら流石にウチの人が怒るよ?」

「…いや、今日の所はもういい」

「…今日の所はって…」

次に会ったらどうなる事やらであるが、そうそう会うことはないであろうとその場で別れを告げる。

最後までヴァイクはマールをジトリと見ていたが、すんなりと別れることができた。

大量のヤシの実と苗を軽々と持っていれば、普通ではない事くらいすぐ分かるが、何も言わなかった所を見れば、今日は見逃してくれるらしい。

しかし、再会の時は意外と早くやってきた。

町を出る直前、ドォン!と言う爆発音と共に、海辺に並ぶ一軒の別荘が吹き飛んだ。

「なんだ?!」

そちらを見れば背中から蝙蝠の様な羽を生やした人間が、宙を飛んでいた。

そちらの方向からは人々が恐れ逃げ惑う悲鳴も響いてくる。

「もしかして…」

ヴァイクは初め、町に入り込んだ魔物を探していたと言っていた。

それがアレなのか、とシュンは飛ぶ人間を凝視するが、シュンには自分と同じ部分変身をした人間にしか見えなかった。

地上から竜巻が舞い上がるのが見えた。

一瞬で止んだ竜巻の後にはあのヴァイクが宙を舞い、魔物に剣を振りかざしている。

「…アレでは簡単に避けられてしまうな」

冷静に分析するマール。

ヴァイクは空を飛ぶことができない。

漫画では飛ぶマールに対し、今のように竜巻で無数の瓦礫を巻き上げ、それを足場にして戦っていた。

かなり分の悪い戦いであるが、それだけこれから先ヴァイクは強くなるのだということを物語っている。

ヴァイクの攻撃は予想通りすんなりと避けられて、そのまま真っ逆さまに落下していった。

「ーーーあぁ!もう!!マール待ってて!」

「は!?待て!シュン!!」

マールの返事も聞かず、シュンは移動魔法でヴァイクの元へと飛んだ。

「全く!あぁもうはこっちの台詞だ!」

マールは荷物を手にしたまま空を飛ぶと、戦闘の中心へと猛突進した。


「クッソォーー!魔物めぇ!!」

地面まであと10数メートルと言うところで、剣を持たない方の手を掴まれ、落下を免れたヴァイクは、驚きに目を見開く。

「何やってんの?あぶないなぁ」

「お前!?」

片手で軽々と自分を持ち上げている事に驚くべきか、ふわふわと当たり前のように空を飛んでいる事に驚くべきか頭を混乱させていると、相手の魔物の方から風を切る音が聞こえてきた。

「!?逃げろ!」

風が刃となり、シュンとヴァイクを襲うが、衝撃はいつまで経っても来ない。

「シュン!危ないだろ!?」

「マール!待っててって言ったのに…」

風の刃はマールの魔法により粉砕され、その背に庇われていた。

「待てるか!?お前に何かあれば俺がレイルやシンだけじゃなくエクシャにも殺される!」

心底心配の色を見せるマールにヴァイクは驚く。

マールからも目の前の魔物からも確かに魔物のオーラが見えるのに、マールは心からシュンを心配しているように見えたからだ。

「ふん、人間風情が」

現状を理解できず騒ぎ立てるシュンとマールに、相手の魔物は容赦なく攻撃を再開した。

「もういいや!マール、もっかい防げる?できれば少し時間稼いで欲しいんだけど」

「!了解した!」

できて当然という体で指示を出すシュン、それを当たり前に受けるマールのやりとりにヴァイクは更に衝撃を受けた。

「お兄さん」

「へ?俺か?」

「そう!今から飛べるようにするから、ちゃんとアレを何とかしてね?」

「は?」

間違いなく“飛べるようにする”と言った。

自分だけではなく、他人を飛ばすなど聞いた事がなかった為、ヴァイクはすっかり混乱してしまっている。

「できるの?できないの?」

手ぶらならまだしも、今のマールの両手にはヤシの実や苗が抱えられている為、満足に動く事が出来ないでいる。

その為、シュンはヴァイクに早く判断して欲しいのだ。

やらないのならこのまま手を離し、自分で何とかするつもりである。

流石に身動きを取れない人間をぶら下げたまま動き回る事など出来ない。

「倒せないの?」

あの魔物をどうにも出来ないのかと問われ、返事は決まっている。

「倒せるにきまっている!」

そうはっきり言えば、シュンはニンマリと笑み、握った手から自分の魔力をそそぎだした。

「これは…!!?」

「他の人には内緒だよ?」

ジワリと温まる体内に、魔力が満ちるのが分かった。

魔法陣が頭に流れ込んできたと同時に、ふわりと体から浮いた。

ヴァイクには空を飛べるほどの魔力はない。

こんな魔法陣も当然知らないのだ。

「これで魔力が切れるまでは飛べるよ。まだ試験段階だから5分くらいかな」

「…お前…何者だ?」

自然とその問いは出た、が

「ほらほら!時間は限られてるんだよ!」

と背を押された為、慌てて体を反転させた。

「おい!逃げるなよ!聞きたい事がある!」

そう言い残し自在に飛べる感覚に感動するまもなく、魔物へと切りかかった。

「交代だ!」

「!?」

合図をすると、マールはすかさずその場を空けた。

ヴァイクが斬りかかると、先ほどとは打って変わって動きが良くなっている事に敵は驚く。

「変わった魔法だな」

キンッ!と自身の爪を伸ばし剣を弾く、お返しだと言わんばかりに反対の手の爪を伸ばし襲いかかる。

それを避けるために一旦距離をとるが、間髪入れず風の魔法を繰り出し相手のバランスを崩した。

「うおぉ!!」

「させん!」

激しく剣と爪で打ち合う二人とは対照的に、シュンとマールは落ち着いて観戦している。

「シュン、さっきの魔法は…?」

「…ふふ、秘密。だから誰にも言っちゃダメだよ?」

飛ぶ際に部分変身で羽を使う理由を話した時も秘密だと言っていたが、今回はその時の雰囲気はまるでない。

本当に口外するなと目が言っていた。

「…了解した…」

マールに拒否権はなかった。


「…ふぅー、食事をし損ねたから魔力が足りないな…」

ヴァイクの剣を弾きながら、魔物はマールと話すシュンを見る。

「強い魔力…美味そうだ…」

「!?」

ボソリと呟かれた言葉は僅かにヴァイクにのみ届いた。

魔物は真っ直ぐに向かってくるヴァイクをするりと避けると、シュンへと突進した。

「逃げろ!」

「!?」

「そいつは人を…子供を喰らうグールだ!!」

「遅い!!」

瞬時に間を詰められ、その鋭利な爪がシュンに届くかと思われたその刹那、横からの衝撃に魔物、グールは吹き飛ばされた。

「あぁーあ、ヤシの実と苗落ちちゃった。でも…ありがとう。マール」

「すまん…実はまだしも、ダメになった苗は買い直そう」

マールの両手は竜の鱗を纏い、指先も鋭く光っておりグールの血が滴っていた。

吹き飛ばされたグールは脇腹を押さえ、何が起きたのか分からないのか目を白黒させていた。

「何者だっ?」

「黙れ、下級魔物が。俺の主人に手を出すな」

シュンを背に庇う様にマールが前に出ると、その手にヴァイクも驚き目を見開き、やはり魔物なのか、と歯を食いしばる。

「いや、主人じゃないからね」

「はっ!あ、いや、癖で…」

「俺はまだ、終わってないぞ!」

あたふたとするマールを視界から外し、ヴァイクは再びグールへと突進する。

マールの与えたダメージにより動きが大分鈍い。

出血を防ぐ為に片腕で傷口を押さえている為に、それもハンデとなっている。

「炎よ!」

剣に炎を纏わせ、振り下ろせば無数の火の玉が雨となりグールを襲う。

1発目2発目と避けるが数が多いうえに、満足に動くことが出ないグールはついに火の玉をくらい、地上へと落下した。

「止めだ!」

ヴァイクは再び剣を振り翳し、勢いよく振り下ろす。

「うっ!くそっ!」

剣先から斬撃が飛び、起き上がろうとするグールの体を

「ぐああぁぁぁ!!!」

引き裂いた。

同時に

「あっ」

ヴァイクにかけられた魔法が解け、

「このタイミングでぇ!!」

真っ逆さまに落ちた。

「っと!セーフ」

頭から地面に落下する直前、再びシュンにより掴まれ防がれた。

「…もう駄目かと思った…」

「大袈裟だなぁ」


シュンが魔法で被害にあった家や周辺を魔法で元に戻している間、マールは落としたヤシの実を回収していた。

ヴァイクもそれを手伝う。

「俺の事、嫌いだろ。無理に手伝う必要はない」

「…」

魔物を嫌っているヴァイクが、マールの竜の腕を見た時の反応を、マールは気付いていた。

いい気分ではないが、だからと言って傷つく事はない。

「…お前、竜なのか?」

「あぁ」

「…はっ…最上級の魔物かよ…。今の俺じゃ勝てねぇ…」

この世界で竜とは恐怖や恐れ、そして憧れや崇拝の対象とされている。

その竜を使役できる人間は国をも滅ぼせると言われている。

「なんでそんな大物があんなお嬢さんにくっついてんだ?」

「それは…恩人だからだ」

「恩人?」

少し考えた後、詳しく話すつもりはないのでざっくりとした理由を述べるマール。

「俺と妹を、一生終わらないと思っていた闇から連れ出してくれた、恩人だ」

ただそれだけでは無いはずだ、とヴァイクは更に質問を投げかける。

「…主人と呼んでいたのは?」

「あれは…そう呼ぶと怒る…。だから心だけで呼んでいたのだが…」

「思わず出たのか…」

「…かしずく事を良しとしないからな…」

「そんなに大事なのか…」

「あぁ。死ねと言われたら死ねる」

「…」

そこまでか、とヒクリと口角を引きつらせるヴァイクだが、確かにシュンの魔法は凄いと、純粋に思った。

自分を軽々と持ち上げていたのも、魔法の力だと聞いた時は驚いた。

自分の知らない魔法を次から次へと使って見せ、自分の未熟さを痛感させられる相手であった。

「じゃぁ、お前はあのお嬢さんが命令しなければ人を襲ったりはしないのか?」

これが一番聞きたい事であった。

マールは悪いやつでは無い、と薄々感じていたし、自分を助けた相手を敵にしたくは無かった。

「シュンはそんな事絶対に言わない。が、彼女に害をなすならば話は別だ」

害があるなら全力で排除する、と空気が物語っており、ヴァイクは息を飲む。

自分はとんでもない相手に喧嘩を売ったのだなと、今更ながら身震いがした。

(お嬢さんが止めてくれて良かった…)

間に入ってくれていたシュンに心から感謝するヴァイクであった。

確かに自分が大事にしている相手を傷つけられたら、相手が誰であろうと自分だって攻撃してしまうだろう。

嘘の無い返事に、ヴァイクは納得したように頷いた。

「終わったよー。いやー町の人に捕まっちゃってさぁー。全部お兄さんがやった事にしといたから」

「は!?」

戻ってきたと思ったら開口一番にとんでも無い事を言い出した少女に、声が思わず裏返った。

「全部って!?」

「お兄さんが空を飛んで悪い魔物をやっつけたって!」

いや、半分しか合っていない。

空も飛んだし魔物とも戦った。

しかし、空を飛んだのは自分の力ではないし、魔物を倒したのもマールの助けがあったからである。

辺りの人々が避難していた為、誰も見ていなかったのだろう、直ぐにみんな信じたそうだ。

「俺は嘘は嫌いだ」

「嘘は言ってない!」

グッ!と立てられたシュンの親指を関節とは逆に曲げてしまいたかったが、子供相手に流石にそれはできない。

確かに嘘では無いが、ちゃんとした真実も話されてはいない。

「大丈夫だよ!お兄さんが頑張って強くなれば真実になる!」

そう、強くなる事を知っているシュンだからこそ言える事だった。

あれだけ関わり合いになるのを嫌がっていたが、今の二人の雰囲気からシュンは希望を持った。

二人が友人になる未来を。

漫画でのヴァイクは魔物と口をきくのも嫌だと言うように、問答無用で殺しまくっていたが今は随分と穏やかに見える。

これを機にマールと仲良くなり、魔物の血が流れる自分を許す日が来ればと、切に願った。

「で?お前は何者なんだ?」

「?何者……はっ!自己紹介してないね!私はシュンだよ。こっちはマール」

名乗っていない事を思い出し改めて名を名乗れば、ヴァイクもそうだった、と

「ヴァイク・シュテットだ」

と名乗り返す。

「家事魔法と新しい魔法の研究が大好きな女の子です!」

キャピッと言ってみるが、ヴァイクの目は冷静だ。

勿論嘘は言っていない。

ヴァイクは逡巡した後

「そうか、研究が好きなのか。向上心があるのはいい事だ」

と、感心したように頷いた。

「…」

嘘はついていないが、もっとアレコレ突っ込まれるかと思っていただけに、こうもあっさりとされると複雑である。

「…魔法が得意な私から見たら、お兄さん…ヴァイクももっと成長するね」

「!…そう思うか?」

「するする!特に風の魔法がいいかもね!」

漫画でも風の魔法を自在に操っていた為、他の属性を押すよりは良いのかもしれない。

さっきは火の魔法も使っていたが、数撃てば当たると言った風な印象だった。

しかし、最後の飛ぶ斬撃は単発であったにも拘わらず威力も命中も悪くはなかった。

まぁ、相手の動きが鈍くなっていたからと言うのもあるが。

そう説明すれば目を輝かせてヴァイクはウンウンと聞きいっていた。

「凄いな。たったあれだけで分かるなんて…」

「観察も研究材料だよ」

そう言い、シュンはマールへと向き直る。

「遅くなったね。そろそろ帰ろう」

「ダメになった苗はどうする?」

「うーん、取り敢えず持って帰って、再生できるかやってみるよ。これ以上遅くなるとみんな心配するし」

空を見れば茜色に染まってきており、遠く離れた廃城はすっかり暗くなっている頃である。

多少のお小言は覚悟だな、シュンとマールは苦笑いだ。

「…巻き込んでしまって悪かったな」

今更ながら、自分がこの二人に絡まなければもっと早く帰れたはずなのだと、申し訳なさそうに眉をハの字にさせる。

しかし、シュンにとっては大きな収穫となった。

将来二人が殺しあう未来が無くなるかもしれないのだ。

お小言くらい甘んじて受けよう、と思いながら首を振る。

「ヴァイク、謝らないで。折角できた友達だもん。嬉しい事ではあっても謝るような事では無いよ。…ってそう思ってるのは私だけ、とか無いよね?」

今更ながら不安になる。

友達宣言されたわけでは無く、シュンが勝手にそう思っているだけなのだ。

ヴァイクからしたらどう思っているのか全く聞いていなかった。

「…あぁ、そうだな。友達、か。マールを攻撃した俺だが、友達になってくれるのか?」

出会い頭の勢いは何処へやら。

しおらしいヴァイクに否とは言えず、寧ろ嬉しそうにマールは右手を差し出した。

「俺は半分魔物だ。それでも良ければ」

「!…俺も、四分の一は魔物なんだ。悪かったよ」

そう言い、二人は握手を交わした。

「シュンも」

マールとの握手を終えたヴァイクはシュンにも手を差し出し、その小さな手を握った。

「この町にはまだ暫くは滞在する。機会があったらまた来てくれ」

「うん、そうする」

避難した住人たちが戻り、町は徐々に賑わい出してきた。

それじゃぁ今度こそ、とシュンは手を離しマールと共に町の外へと向かって歩き出した。

「…竜の主、か。頼むから道を外すなよ…。お前達とは戦いたく無い…」

ヴァイクの呟きは誰に拾われる事もなく、喧騒に消えていった…。



「で?何でこんなに遅くなった?」

廃城に帰り着き、顔を合わせたシンの第一声がそれだった。

ヴァイクやグールの事を説明した後も、“そんなのほっとけ”だの“瞬殺できるだろ”だのと散々お小言を貰い、暗くなる前に帰れないなら門限が必要か?とまで言い出した。

いつから兄からお父さんに転職したのかと、脳内で突っ込めばそれが表情に出ていたのか、お小言は更に激しさを増し、げんなりしつつも門限など真っ平なのでしおらしく謝罪して見せたのだった。






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