8 LEVEL1-8
んんーー・・・。俺じゃなくて、あの女の方が立派な詐欺師のはずなんだが。なぜ、被害者であるはずの俺が、容疑者なんだ?
「今の気持ちはどうだ?詐欺師め!」
役所には、他の冒険者は一時出入り禁止となり、ウォンは縄
で拘束され、身動きしようものなら近くに立っている兵士に剣で殺される始末だ。
そんなウォンはさて置き、エルナはすごい持て成しだ。長椅子に座らされ、飲み物をすすっている。
「正直に言うが、本当に俺のせいか?」
「は?」
「いや、だからさ。俺何も言ってないじゃん。全部、こいつが言った事じゃん。俺、そこにいて勝手に連れて行かれた身なんだが・・・」
ウォンは自分自身納得のいく説明をした。
そうだ、そうだよ、全部こいつが悪いじゃん。詐欺師って言われたけど、あいつが一番悪いんじゃね?詐欺師はあいつだろ。
そんな事を言っても、信頼という物はこうも俺の事を悪者扱いしたいようだ。
「そんな事を言って、実はお前、エルナ様を洗脳してるんじゃないのか?」
「レベル1の俺にできる訳ないじゃん。もう少しよく考えろよ。次期討伐隊長さんよ!?」
そう言うとウォンはのほほーんと湯気の立っている飲み物を飲んでいるエルナを見た。
それに気が付いたのか、エルナはコップを横に置き、深くお辞儀してきた。そして、口パクでウォンに誰にもばれないように言っきた。
・・・・・・あぁ、・・・まぁこれはあんたが悪いんだよ?これくらい罪被れよ。
エルナの言いたい事を分かった上で、ウォンはそう思った。
「えぇー。あんた誰だっけ?」
「クルス・ザックレーだが?何か思い残したことでもあるのか?」
「まぁ、別にいいんだけど。俺だけこの仕打ちはホントないと思うので申し上げます。あいつもレベル1です」
その言葉を言った瞬間、全員の目線がエルナを向き、エルナの口から水しぶきが立った。
さすがに今の言葉は効いただろう。
「ちょっと待って!なんで言っちゃうの!?私今黙っていてねってジェスチャーしたよね?」
「知らねーよ!今の俺の状況と比べたらマシじゃねーの?・・・というか、クルスお前、はやく解放してくれね?釈放だろ」
ウォンはため息をつきながら、弁明の余地をと叫ぶエルナを無視し、クルスにそう言った。
クルスはしばらくエルナと何やら喋っている。時折こちらを見てくるが、内容が分からに以上、首を傾げているしかなかった。
まぁ、そもそもあの女が言う弁明をと言っても、全部からと言えば全部あいつが悪いんだがな。
「ダメだ」
「は?」
「この事を知られてしまった以上。俺とお前、それとここに居るエルナ様以外の全員死刑だからな」
やーっべ。なんかおかしなことを聞いた気がしたが。当分人と話していなかったせいか、
死刑なんて冗談でも笑えない単語が聞こえてきたぞ?
周りをよく見ると、先ほどいた兵士が半分以上いない。残っている兵士からは、すすり泣く声が聞こえたり何かの写真を持っている兵士もいたりする。
「おい、俺は被害者だぞ?いつの間にこの国には被害者を処刑する風習でも出来たのか?」
「これは重要機密だ。国王に知らせたら、すぐさま俺たち全員だ。別に被害者のお前だけ殺すとは言ってない。これだけは飲んでほしい」
どうも納得がいかない。だが、このままじゃ死ぬのは確かだ。ここ最近の俺どうした?本当に運が無くなって来てるぞ?やっぱ、あいつか?あいつのせいなのか?
ウォンは深くため息つくと、縄を解こうと必死にもがくがきつく締められているせいか、なかなか解けない。
「諦めろ、だがな、さっきエルナ様から事情を聞いた。お前エルナ様を助けてくれたんだな。何かあっただけでも大事だったが、お前がいてくれたおかげで事は少しでも小さくすんだ。これはお礼になるのか分からないが、せめて苦しまないように逝かせてやるよ」
クルスはそう言うと、こちらにニコリと笑い深くお辞儀をした。
全然、お礼になってねーよ。何がお礼だ。それなら、まずこの縄を解けよ。
「あの・・・」
「あぁ?・・・あーあんたか、どうだ?今の気持ちは。助けてもらった人物を殺す気持ちとやらをよー。感想文3枚くらいで見せてくれよ」
声を掛けてきたのは村人のようなボロボロの服を未だに着ているこの女、エルナだった。
エルナは申し訳なさそうにこちらを見ているが、こちらとしては人間不信が進行する一方だ。
「感想文ってよく分からないけど・・・父上には私から言っておきますから心配しないでくださいね・・・・・・」
エルナはそれだけを言うと、役所の外に他の兵士とどこかへ行ってしまった。
「出発は明日だ。覚悟はいつ決めても良いが、『死ぬ』それだけは受け入れてほしい」
クルスはエルナと入れ替わるように、ウォンに話しかける。だが、話の内容がほとんど変わらないのが難点なんだが・・・。
クルスは持っていたナイフでウォンの縄を切り付け解いた。
「今、逃げてしまおうと思っていたんだが、どう思う?」
「その素振りでも見せてみろ、問答無用で斬殺なんだが、一つ命を落とす準備は出来てるか?」
「ご回答ありがとう!!!」
ウォンは苦笑いしながら、クルスに礼を言う。それが本心ではないのは、分かっているのだが。
ウォンは立ち上ると、先ほどエルナが座っていた長椅子に座り、ポケットに入っていたステータスカードを見る。
何も成長する事なく、何もできず俺は死ぬのか。
確かに、初心者でもステータスは全体的に40~50をだいたい切っているものが多い。
だが、違う。俺が初めて見た時は違った。全然違ったんだ。
生命力:19
魔力:0
腕力:21
守備力:16
瞬発力:7
賢さ:29
運:34
LEVEL:1
Ex:0
ランク:F
あの時これを見て悟ったんだ。
俺は、この世に必要とされていない。って・・・




