7 LEVEL1-7
本当に運が悪くなってしまったようだな。
エルナにあの言葉を言われて、改めてそう感じた。
「おい、これはどういう事だ?説明してみろ。なぜ、俺がお前と付き合わなくちゃいけないんだ?」
周りにいる兵士を眺めながら、ウォンはエルナに問い詰める。
兵士とクルスは、何もしていないはずのウォンばかりを睨んでいる。
「エルナ様!こいつは誰なんですか!?」
「私の交際相手です」
「は?こんな弱そうなのが?ですか?」
弱そうという今の言葉に、ひどい屈辱感を感じたウォンだが、実際レベル1である以上、何も言えないのが現状だ。
しかし、こいつのレベルは何だ?・・・いや、なぜ俺がこんな奴と交際しなくちゃいけないんだ?ふざけるにも程があるだろう。笑わせるんじゃない。
ウォンは、エルナから離れると、クルスに顔を向けた。
「あんたが誰かなんて、特に興味ない、だがなおr・・・」
「この人は私と同じレベルなのよ。残念だけど、私のレベルを越した人と交際するなんて一言も言ってないから・・・ごめんね」
何を言っているかは理解できなかったが、エルナがクルスに誤解を招く事を言った事は理解できた。
エルナはそう言うと、ウォンの腕にしがみ付く。ウォンはそれを必死に振りほどきエルナから距離を置いた。
「信じられません・・・本当にあのエルナ様はどこに消えてしまったのですか?」
「言ったでしょう?私は疲れました。もう村人として生きたいんです」
「生きたいって、そこの男・・・レベル383ですか?」
え?・・・こいつレベル383もあったのか?
信じられない事実にウォンは驚愕を隠しきられなかった。
ウォンは、傍でうろたえているエルナを見た。正直、この姿からそんなイメージは全く浮かばない。
「そ、そうよ!私は今日でレベル391で、この人もレベル391よ!信じてないでしょ!」
おいおいおい、ふざけるんじゃない!俺に死ねとでも言いたいのか?こんな奴に嘘でもついてみろ、首が胴体から跡形もなく消えちまう。
クルスは、ウォンを疑いの目で見てきた。足、腰、腕、それに手に握ってあるカード。
だが、困ったことに、クルスはカードに記載されているレベルの1を誤解して信じてしまった。いや、むしろ寿命が延びたことを喜ぶべきだろうか?
「分かった」
いや、分かるなよ。
「分かったなら、どいてくれる?最後の受付のカードもあなたに壊されたの。お昼ごはんくらい食べに行かせて?」
エルナは自分勝手に話を進めると、ウォンの腕を引っ張り役所から出て行く。
クルスと周りに残された数人の兵士は役所から出ていく二人を黙って見送る事しかできなかった。
「おい、あれを探せ・・・」
二人が見えなくなると、クルスは一人の兵士にぼそりと命令をした。
兵士は近くいた仲間に同じように伝えるとそれを行動に移した。
「どうしてあんな嘘をついた。・・・・・・じゃなくてっ!なぜ俺に絡んできた!?」
「だって!ばれたら父上に連れて行かれるんだもん!」
役所からしばらく離れると周りを確認して路地裏に隠れた。
このまま、ばれてしまったらかなり問題だ。見つかってウォンのステータスに関しても聞かれてしまっては終わりだ。
「お前、いつ俺のレベルを知った?見てたのか?いや、見せた覚えはないが・・・」
「あなた、いつ私が王女だって知ってたの?やっぱり知らないふりをしてたの?!」
二人して、両方に質問を投げかける。
しばらく、自分たちの目を見て睨みあったが、こんな事をしても無駄だとウォンから目をそむけた。
自分の方がマシだとエルナに見せつけたかったからだ。
「俺が知ったのは、ほんの数時間前だ。飯屋で、男たちの会話を聞いたからだ。ほら、質問に答えてやった。さっさと俺のレベルの件を教えろ」
「それは、これで知ったの」
エルナが見せたのは、ウォンがゴミ箱に捨てたステータスカードだった。
「気が利いたでしょ。あなたのレベルを知ってたおかげでここまで逃げれたのよ!」
「あーあー。そうですか。もう少し気が利いてくれるなら、自分のレベルも言って自首してくれたらありがたかったのになー?」
ウォンはエルナからカードを取り上げると、ポケットに突っ込んだ。すると、エルナの方から腹が鳴る音が聞こえてきた。
「あの・・・・・・」
「残念だったな。昼飯に半分使っちまった。残りの700ギルは宿代だ」
カードの入ってあるポケットの逆の方から袋を取り出した。そこにはチャリチャリと音が聞こえてきた。
エルナはそれを見ると、残念そうな目でこちらを見てきた。
「それより、他のカードはどこにあるんだ?」
「他のカード?」
「お前!俺が捨てたカードがこの一枚だけだと思うなよ!ばれたらどうすんだ!」
その言葉を聞くと、エルナの顔が青ざめていく。それを見たウォンの顔はさらに青ざめていく、そして、自分の首を撫で下ろす。
二人は急いで、役所にウォンのステータスカードを取りに向かった。途中、人にぶつかったが、今は謝る余裕なんてない。後ろから怒鳴りつける声が聞こえたが、無視して走り続ける。
「おい!急いでゴミ箱からカードを見つけるぞ!」
役所に入ると、記憶に頼ってゴミ箱からカードを探し始めた。
だが、事は終わってしまったのか、それとも役人が片付けてしまったのか、ゴミ箱の中身は消えてしまっていた。
「どうしてくれる・・・このままじゃ・・・俺の首が・・・!」
ウォンが空になったゴミ箱の中身を覗きながらそう叫ぶ。その声の中には恐怖が隠れていた。
「お探しの物はこれですか?詐欺師!」
頭上から、聞き覚えのある声が聞こえた。上を見上げると、すごい形相で睨みつけるクルスの顔があった。




