22 LEVEL8
生命力:757
魔力:739
腕力:794
守備力:760
瞬発力:713
賢さ:776
運:659
LEVEL:8
Ex:2839
ランク:F
こうも、あっさりとレベルが上がってくると、自分の目か、他人の物ではないかと疑ってしまう。
つい数日前までは、レベル1だったのに、これはどういう事なんだ?
「まぁ、強くなるに越したことはないが・・・」
ないのだが・・・防具と武器がおしゃかになってしまったのだ。
せめての衣服も、右腕からは破れている上、新品のダガーも燃えてしまった。
あのグールを倒したからと言っても、金もドロップアイテムも手に入れることはできなかった。
もちろん、あの中路地にも顔を出したが、案の定、何も残っていなかった。いや、残っていたが、それは血痕だけだった。
ウォンは、後ろ髪を掻き毟ると、役所の玄関を眺める。
太陽は、沈みかかっていて、空は赤さを増してきている。
「さて、まずやるべき事は・・・」
ウォンは、とりあえず役所から外に出た。
夕方近いが、店に明かりが灯って来る。
今は資金は全くない。苦渋の決断だが、金を貰うしかない。
金は、魔物を倒した報酬で返そう。
「それで?お金を貸して欲しいと?」
「あ・・・はい」
なぜだろうか。
金の借用の交渉をしようとしたが、なぜかエルナは目の前で土下座しろと言った。
なんだ?金を借りる時ってこんな事しなければならなかったか?
「それで?そのお金の使い方と理由を教えてくれる?」
「いや、だから・・・武器と防具。あとダガーの新調をしたいんだが・・・」
知らぬ間に、敬語になってしまった事には自分でも驚きだ。
ウォンはエルナと目線を逸らしながら、話を続ける。
「今の予算はどのくらいあるか分かってるの?」
「・・・知らん。だが、魔物倒したときの金があるだろ?それで増やせばいいし、借りた分は返すからさ!!」
「無理です!!」
「なんでだ?!」
エルナは腕を組み喝を入れるような言い方で、ウォンに言う。
これはこれはとウォンも薄々気が付いてきた。
「おい、エルナ。お前、金ないだろ」
「え?・・・・・・」
「どこで無駄遣いしやがったーー?!」
この反応から見て、正解だろう。
無駄遣い。それは金を無駄な物にまで多く使ってしまう事だ。
今まで、俺の手持ち金はあまりに少額で、むしろ無駄遣いをする事なんてまずなかった。
まさか、この目の前にある落とし穴にさえ気が付かなかったなんて、迂闊だった。
「何に使った?」
「え?!・・・それは・・・その・・・言えません・・・」
そこまで溜めておいて、言えないのかよ。
エルナは、そう言うと便所に向かった。
ウォンは呆れながらその後ろ姿を見送った。
こんな茶番をクルスの目の間でしてしまったことに、申し訳なく思った。
それにしてもクルスの件に関しては、腑に落ちない事が多くある。
一つ目は、俺よりもレベルが数倍あるのに、ただの失血で倒れてしまった事。
俺も、右腕を無くしてしまったのに、なんとか意識を保つことが出来た。が、クルスは怪しすぎる点が多い。倒れてしまって、意識が戻らない事にも腑に落ちない。
二つ目は傷がない事だ。
エルナから聞いたが、あの石を使おうとした。たしかに、戦闘での傷もあった。だが、気絶するほどの傷はなかったのだ。これはもはや「意識がない」「植物状態」というべきになってしまうだろうか。だが、この真っ青な顔を見たら、これは血がないとしか・・・
「あれ?・・・いや、これが本当だとしたら・・・」
ウォンは便所の方に顔を向ける。そろそろ出るのだろうか、水の流す音が聞こえる。
「これは・・・『呪い』か?・・・いや、まさか・・・そんなことって・・・」
『呪い』またの名を『呪』
主に上級の魔物や黒魔導師がつかう魔法とは別の類の物だ。
大体は物を用いたりするが、上級になっていくと呪文を唱える者が多くなる。
「ウォン?どうしたの?・・・」
便所から出てきたエルナは、何かしらクルスの顔を見て悩んでいるウォンを見ると、不審に感じた。
「え?・・あ?・・・いや、何でもない」
「そーだよね。ウォンがそんな趣味してるわけないよね?」
「あ?何か言ったか?」
「いえ・・・別に?」
話があやふやになった所で、ウォンは出発を決行した。
「で?なんだその荷物は?」
ウォンは、虫を見るかのような目で、エルナの肩に掛けている鞄を見る。
エルナは、それを聞くと照れるようにそれを背中に隠した。
「えへへ・・・後で教えてあげる」
後でって、なんだよ。
まぁ、おかしな物でもなさそうだし。その顔からなら、期待できそうな物でもあるのだろうか?
どちらにしろ、この機会に無駄遣いをしてまで買ったのだろうから、かなり使い物でなければ困る。
エルナは、松明に火を灯すと、一つをウォンに渡し森の中に二人で入っていく。
洞窟までは、少しばかり遠く1~2キロくらいある。
夜の森は案外だ久しぶりだ。
夜、特に夕日が完全に沈んでしまった森などは、かなり魔物も活発になる。
さすがに松明ではせめて1~2メートル程しか足元を照らせない。使い物にならないとは言わない。だが、せめてもう少し手前の木の向こうくらいは照らして欲しいものだ。
「ここらでは、魔物が出たって言っても、この前の迷子のゴブリンくらいだが・・・」
「そういえば、ウォンってどのくらいレベルが上がったの?」
それを知ってどうなるのかって思ったが、・・・というかどのくらい強くなったか言った所で武器もなければ、拳で対抗するしかない。
「いや、あの頃と比べたら、案外簡単にいけるか?」
フフと笑ってしまう。それは気味が悪い反面、速く対戦してみたいと思っている自分がいるからだとすぐに分かった。
今は、夏の始まりだ。
熱気も籠ってきている。
森だからって事もあるんだろうけど、これは暑すぎる。
ウォンは、上着を脱ぐと、腰に巻いた。そして、下に着ていた服の袖を捲し上げた。
「どうして、そんな事をしているの?」
「?・・・あぁ、別に、昔からしていた癖な気がするから・・・」
別に理由なんてなかった。
ただ、今の言葉は嘘ではなかった。
この癖は、確かに暑かったり、上の服が邪魔だったりしたら、こんな風にする。
ウォンは、注意深く松明を周りに照らしてみるが、今の所魔物の気配はしない。
一つ、ため息をした。
暑いだけあって、集中力が切れやすい。
出来るだけそれが切れないうちに、先へと進んでいきたい。
「ねぇー・・・ちょっといい?」
後ろからエルナが声を掛けてきた。
ウォンは、今度は何だと、怪訝な顔でエルナの方に返事をする。こんな表情で顔を向ければ、帰って来るのは「やっぱいい」と思ったからだ。
「じゃぁ、ちょっといいわ」
拒否の意で返事を返す。
「えぇーー!!!」
『えぇーーー』じゃねーよ。
ウォンは、その子供じみた返事に呆れながら、後ろに振り返った。
すると、エルナはウォンの額に直方体の箱を軽く叩いた。
「なんだ、それ?」
「中身を見れば、すぐに分かるよ?」
言われるままに、その軽金属で出来た箱の中身を覗く。
その中身は、何十枚の札だった。
一つ、試しに取って見た。
「これは、何種類くらいあるんだ?」
「さーー。五大元素の『火』『水』『木』『風』『土』の五種類が十枚か二十枚ずつあればいいほうだと思うよ?」
ほーーっと頷くと、その札を見た。
「風」「斬」となんとか、その二文字は読めた。
これは、何か斬る事でも出来るのだろうか?
「本番に使うが一番だな」
無駄遣いは言い過ぎたと今、反省した。
「これは、便利な物を買ってくれたもんだ」




