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冒険者へ LV.1から始まるファンタジー  作者: 森林樹木
ランクF  An adventurer who does not hate(人嫌いな冒険者)
20/32

20  LEVEL3-8

 今がチャンスだと思った。

 こんな近くに恰好の的がある。


 こんな経験値の溜まりそうなレベルの一気に上がりそうな奴がいるんだ。


「俺の肉は美味かったのか?」


 ウォンは、ウルガに顔を向け薄ら笑いした。

 グールの弱点は『鉄』だ。


 ウルガの顔が青ざめていくのが目に見えて分かった。


「イッテーなこの野郎!!!ふざけてんのか?!」


「仕返しくらいさせろよ。人食愛好家め」


 ウォンはそう言うと、握っていたダガーをウルガの背中に深く突き刺すと、横にへし折った。

 グールが鉄になぜ弱いかは分からないが、見た感じ効いている事は幸いだ。


 ウォンはグリップを握ると、ウルガの肘に殴りつけた。

 肘が痺れ、力の抜けたうちにウォンは急いでエルナと共にウルガから離れる。


 壁に叩きつけられた衝撃でエルナは気を失ってしまったようだ。仕方なく、ウォンは、壁にもたれ掛らせる。

 クルスは、ルシカを阻み(はばみ)、ウォン達の邪魔をさせない。


「気持ちわりー・・・ねーちゃん。ごめん先帰っとくわ」


「・・・さっさと俺の経験値になってくれねーかよ!」


 手を口に抑え、退散しようとするウルガを易々と逃がすウォンではない。

 ウォンは、ウルガの足に掴むと無理やり地面に押し倒した。


 右腕からは血がドクドクと流れ出る。そろそろ限界だ。血を失いすぎだ。


「しっかし、俺の腕を喰いやがって、元気になりやがったじゃねーか・・・今度は俺がお前を殺して元気になろうじゃねーか」


 ウォンはうつ伏せになっているウルガの背中の傷口に手を突っ込むと、中に入っていた鉄製のダガーを抜き取った。


 刃が手に食い込み、少量だが、さらに血が出て行く。

 時を急がなければ。


 背中の痛みに暴れ出すウルガに馬乗りになった。その時、今更かとばかりに命乞いをしてきた。


「た、頼む!命だけは助けてくれ!俺が死んだら、ねーちゃんだけが残っちまう!お前だって人だろ?!善の心くらい残ってるだろ?!なぁーー?!」


「それなら、お前を殺した後、・・・お前の姉貴も殺してやる。お前は向こうで・・・姉貴の出迎えでも・・・してろ」


「そんな・・・。あ、それなら良い事教えてやる!これの命令をしてきた奴だ!」


 お前、獣便りっつたろ?あれは嘘だったのか・・・


「信用できないな・・・」


 ウォンは、朦朧とするなか、なんとか自我を保とうと精一杯で、拳を握りしめて保とうとする。効くかどうかは分からないが、何もしないよりかは何歩かマシだ。

 横目で、涙目になりながら、こちらを見てくるウルガをウォンは呆れながら見下す。


「ね、ねーちゃん・・・ねーちゃん!助けて!!!」


 とうとう姉の方に助けを求めたか、これは不味いな

 ウォンはクルスの方へと視線を向け―――――。


「これは、さらに不味いな。ったくもう少し聞きたい事があったが・・・」


 ウォンは、歯を食いしばると、ウルガの首筋に刃を押さえつける。

 ウルガの首からは血がツーーと流れでる。


「おい、そこの女。・・・クルスは・・・死んでるのか?」


 ルシカの足元には、クルスが倒れていた。首筋からは血が流れており、ルシカの口には血がついていた。


「弟を助けて!お願い!私の家族はこいつだけなの!!」


 ルシカの表情は険しく、今にもこちらに襲ってきそうな剣幕で叫んできた。


 一つの家族の命を消しといて何を言ってんだこいつらは。

 これはあれだ。俗にいう「自己中」と言うやつだ。


「自分のやって来たことすら忘れた奴らに命乞いをする資格なんてねーんだよ」


 そういうと、ウォンは、左手に力を入れる。


「お願いだ!止めて!や―――――」

 血しぶきがウォンにまで届く。数秒足らずで、ウォンの顔は真っ赤に染まる。だが、その赤い液体は汚い魔物の流れていた物だ。

 ウォンは、ウルガから離れると、服で顔を拭った。


 そしてエルナを叩き起こすと、気が付いたのか、一瞬辺りを見回す。


「あれ・・・ここは・・・」


「寝ぼけてねーで、急いでクルスを連れて逃げるぞ!!!」


 左手でクルスの首根っこを掴むと、引きずりながらその場から去る。

 幸運な事に、ルシカは後ろから追ってくることはなかった。



 ウルガの体は、少しずつ消滅していく。

それを姉ルシカは涙を流しながら見ているしかなかった。


 誰に殺された?

 なぜ殺された?

 私たちが何をしたって言うの?

 生きるために仕方のない事でしょ?


 人間だって、無駄な命を奪ってるじゃない。私達がしてきたことと何が違うの?


 ルシカは、その場にへたりと崩れるように座り込んでしまった。


「ウルガ・・・私は何か間違ってたの?」


 血がドクドク流れ、もう息をしていない。

 摩っても、体を揺すっても彼はもう生き返る事は二度とない。


『お前らの使命は、ウォン・シャルディックの殺害だ。別の人間にはあまり手を出すな』


 ウルガが命令に背いたから?

 それなら、しっかり見てなかった私が悪かった。私が止めてたらこんな事にはならなかったの?


 分からない。私はもっとも愛すべき弟を失って、これからどうすればいいの?


 復讐?


「そうよ・・・」


 ふと、ルシカの頭に5文字(復讐)の言葉が過る。


 これは私が悪いんじゃない・・・結局ウルガは殺される運命だったのなら・・・誰が殺した?・・・そうよ、あのウォン・シャルディックだ。


「あの人間め、外道のくせに私の弟を・・・復讐してやる・・・いつか、確実に!!!」


 ルシカは、ウルガの顔を撫でる。胸から下はもう消えてなくなっている。

そして、顔にこびりついた血を拭きとろうとする。

 だが、手ごときでは血が周りに広がるだけで、落ちない。

 それに、首からは血が未だ流れている。


「計画を・・・ウルガの仇を・・・私がとってやる・・・見ててね、私がお姉ちゃんがあなたの・・・」


 ルシカは、ウルガの額にキスをすると、その場から去った。

 ウルガの体はもうない。

この世に家族を亡くしたグールの少女は一人の冒険者を憎む。



 その頃、ウォンとエルナ、クルスは宿屋の一室にいた。

 しかし、ウォンの右腕は無くなっており、その上クルスの生死は定かではない。


「ねぇウォン・・・まだあの石はある?」


 エルナはウォンにそう問いかけたが、ウォンの姿が見当たらない。

 確かに、クルスに肩を貸して一緒にこの部屋に来たはずなのに。


「ウォン、どこにいるの・・・」


 しかし、その捜索も数秒足らずで終わった。

 ウォンはとうとう力を使い切り、宿屋の廊下で倒れていた。

右腕を強く縛っていたからここまで来ていたものの、もしこれをやっていなかったら全員終わっていたのかもしれない。


 エルナはウォンのポケットから石を取り出すと、ウォンの右腕にそれを近づける。

 すると、予想通り腕が生えてきた。


「・・・・・・ちょっと気持ち悪いかも・・・」


 頭と首を繋げた時は、何ともなかったけど、さすがに腕が生えると言うのは少しシュールすぎる。

 喰いちぎられた部分からは、血管や筋肉が腕の中から生成されていく。後からそれを覆うように皮膚が出来ていく。


 しかし、その奇跡な光景も彼女に言わせてみれば、その一言で終わらせてしまう。


「い・・・いつになったら終わるの?」


 これは長すぎる。よく、ウォンはこんなの耐えられてものだと感心してしまう。


 だが、エルナは知らない。

 あの時ウォンは今のエルナのように丁寧に手で持っていたのではなく、たまたウォンの手から滑り落ちた石が彼女の腕に落ちただけなのだ。


 いつのまにか、ウォンの腕は完治していた。

 次に、急いでクルスの方へ寄るが、ただの血の失いすぎだったようだ。


 あの女のグールに血を吸われすぎたのだろうか。

 多分、極度の貧血を起こしてしまったらしい。


「こ、この場合は・・・どうすれば・・・!!!」


 傷の回復は回復魔法で何とか出来たし、ひどい怪我は今の石で何とか出来るのも分かった。

 だが、血の失いすぎた仲間は『切り捨てた』。

 今の現状、血を補給させる手立てはないのだ。

 いくら、ひどい傷ですら治したところで、コップを直すのと同じような事。コップを直した所で中に入ってる水までは還ってこない。


それじゃぁ、クルスはこのままの状態なの?

エルナの頭でそんな不安が過る。

エルナは眠っているクルスの傍らであたふたしてしまう。


「いくら重症者で失血者でも、今まで戦ってきた仲間。見捨てられない」


 すると、ドアが開く音が聞こえた。

 後ろを振り返ると、そこにはウォンが立っていた。ウォンはエルナの顔を見ると、次にクルスの血の気のない顔を見た。


「グールってのは、人を喰う化け物だったな。当然、血も飲む訳か・・・」


「どうすればいいの!私は・・・何をすれば・・・」


「可能性がなくもないが・・・賭けてみる気はないか?」


 ウォンは腰を降ろすと、エルナと同じ高さで目線を合わせる。

その言葉には、何かクルスを助ける方法があると言っているかのように聞こえる。


 エルナは、体をウォンの方へと向けると、涙を拭った。そして、真剣な顔でウォンの顔を見る。


「どうするの?」


 エルナはウォンにそう問うが、実際ウォンに確信はなかった。

 今更考えてみれば、あの時、わざわざ死んだ人間を生き返らしてまで娘を助けてほしいというのはおかしい。

 それに、死んだ人間ならば誰でも良かったはずだ。俺に何をさせたいんだ?

 ただ、娘に何かあるんじゃないか?人を転生させることのできる存在だ。そんな存在の娘ときたら何か持っているんじゃいか?


「オリジンケーブだ」


「・・・オリジンケーブって?」


「この街の近くにある洞窟だ」


 ウォンは宿屋の窓を開けると、洞窟の方向に指を指した。

 エルナも窓から体を乗り上げると、森に隠れたウォンの指指す方向を見る。


「オリジンケーブ。原点の洞窟」


 なんかの文献で読んだことがあったが、魔物が生まれたのはそこからではないかという伝説がある。

 一応、王都から一番離れているからそんなデタラメがあるではないかと思ってしまうが、実際の所その由縁は分からないままだ。


「そこに行けば、クルスを助けることが出来るの?」


 エルナは、ウォンの顔を見る。


「その前に行くべき所があるんだが、先にそっちに行ってもいいか?」


「うん、いいけど。・・・あ、役所に行くの?」


「あぁ、それからだ。クルスには恩があるからな」


 ウォンは、クルスに聞かせるようにそう言った。


次回からは新章が始まります。

ですが、書きたい気持ちを抑えて登場人物の紹介をしたいと思います。

ついでに、この1章に出てきた魔物の紹介もしたいと思っています。

次回次章は明後日になりますお願いします!!

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