1ー1 “変わらない日常”
教卓で、数週間後に来る夏休みの楽しみの話をしている担任、ソレをなんとなく聞きながら、ポツポツと降り始めた小雨をどこかボーッと見届ける。
少し前まで、元気に太陽が輝いていたのに、今はどんよりとしていて、いつザーザー振りになってもおかしくない。
今日、傘を持ってきてきて良かったわ〜。ナイス、朝のボク。
なんとなく周りを見ると、アクビをして話を聞いている真面目なヤツらに担任にバレないようにスマホを触ってる不真面目なヤツら、まぁ、各々この退屈な時間を過ごしている。
だからと言って、スマホをイジっていること言う必要なんてない、なにせボクもたまにスマホを触ってるから、人の事は言えないからな。
高校生活始めのボクの担任は、真面目な割にはとてもノリがいいんだけど、その真面目さからホームルームの話が長い、長い時は10分ぐらい話したりするのだから、逆に才能を感じる。
そこまで話せるなら、司会や実況者系とかの仕事とか出来そうだよな〜、先生。面白いし。
でも、そろそろ終わってくれないかな、帰りたいし
あの天気のせいか、急に体がダルくなった感じがするからな。帰りて〜。
まぁでも、そろそろ終わるだろな。帰りたいと顔に出しているヤツらも、チラホラ見えてきた。
ソレを感じ取ったのか、担任はハッとした顔をして咳払いする。
「、、、、長くなってごめんね。挨拶しよう」
「日直、挨拶お願いね」
担任は申し訳なさそうに言って、アリーナVIP席、通称教卓前の席、ソコにいる日直のヤツに目配せをする。
ボクのクラスでは、なぜか1番前の席をアリーナ席と呼んで、教卓前の席は、アリーナVIP席と呼ばれている。
「起立、礼」
「さようなら」
「「「さよなら/さようなら/なら〜」」」
やっとこの長いホームルームが終わって背を伸ばす。長かったー。
すると、後ろから肩にポンポンと叩かれて、振り返ってみる。
「ねぇねぇ、ユイちゃん今から一緒にカラオケ行かない?」
明るい茶髪で、なんかのアニメキャラのヘアゴムをつけている。ボクの後ろの席の千聖が、いつものように遊びに誘ってきた。
「ごめんだけど、予定が入ってるから」
「じゃあね」
そして、いつものように首を横にふって足元に置いてあった鞄を持って足早に教室を出る。
アイツ、ボクが全部の誘いは断っているんだけど、、、、今だに誘ってくる。
でも、根性と言うべきなのか、それとも諦めが悪いと言うべきなのか、、、、入学して二ヶ月経つけど、毎日のように誘っては、ボクに断れている。
どんなに断ろうとも、今だに誘ってくるのだから、なんとも不思議で物好きなヤツだよな。
『ねぇ、千聖なんでまだ星奈さんなんて誘うの?』
『そうだよ、あの子ノリ悪いじゃん』
聞こえていないと思っているのか、ボクが離れたら、すぐ近くにいたクラスメイトは呆れながら不思議そうに千聖に話しかけた。
ソレはホントにそう、ボクでも思うし逆に気になるしそこまでしてボクと仲良くなりたいことを聞きたい。
それに、ボクが隣にいたら迷惑になる。
「、、、、、、、、、、、、」
てか、ガチでホントに体がダルい、今日はこのままベッド直行したい。
でも、今日は弟の太郎と妹の瑠奈の宿題見るって、約束したんだよな〜。そこまで頑張るしかないか、そのあとは寝る。
そう思いながら、踊り場で集まっている生徒や廊下で何処で遊ぶか話している生徒を横目に、一直線に下駄箱に行き、靴に履き替える。
外に出ると、教室から見ていた雨が、先程より若干強くなっていた。
そのせいか、元々暑かったのにこの雨のせいで余計に蒸し暑くなっているし、肌にベタベタと湿気が張り付いていてめちゃ不快だ。
夏の時に降る雨は嫌いなんだよな。無くなれ、ガチで。
校門を出て、多くの生徒は駅がある方向を歩くが、ボクはその反対側に足を向け、住宅街が並ぶ方へと歩く。
ボクが通っている、堺高等学校は、県内でも有数の高校で、福祉科と特進科それと普通科、この三つの学科があり、そんなに校則も厳しくなく、行事も結構あるのだから、青春しやすいさもある。
それにまぁ、有名だから色んな大学やら専門学校やら、推薦が取れやすさも、あるだろうな。なにせ自分もその1人だからな。
その目的で、わざわざ電車から来ている生徒が多いし、ボクみたいに地元民もいたりする。
とは言っても、ボクがいる学科、福祉科には見知った顔はいないけどな。
でもそっちの方が、気が楽だから別にいっか。
「うぉ!?」
歩いていると突然、風がビュービュー、そんな豪快な音をたてて持っていた傘がひっくり返した。
それに続くように、次は雨が本格的に降り始めてしまった。
すぐ近くにあった、テナント募集と看板が貼っている、随分と古い店に走る。
ゲッ、最悪、、、、風のせいで横な振りになって、メチャクチャ濡れたな、、、、。
「今日は運ついてねぇ、、、、」
ソコで雨宿りをし、鞄からスマホとタオルを取り出す。
濡れた髪をタオルで拭きながら、スマホをつける。
「、、、、チッ、マジか」
だが、スマホは画面が真っ暗で操作が出来ない。つまり充電がないのだが、この時に限って、モバイルバッテリーを持ってきていない。
どうするか、、、、迎えを呼ぶにも電話ができないし、このままだとびしょ濡れになって帰るしかなくなるな、、、、、
「、、、、、、、、走るかぁ〜」
まぁ、すぐに風呂に直行すれば、どうにかなるし、アイツらの約束破るわけにもいかないしな。
ため息をつきながら、ボクは、着ていた灰色パーカーの上着を腰に巻きつけた。
そして、鞄をリュックのように背負いしゃがむ、雨のお陰か、暑さが引いたアスファルトに手をつる。
そして、腰を上げて家へと続く道をまっすぐに見つめる。
手を地面から離し、その足を踏み出した。早く帰るために。
「がっ!!?」
だが、次に目を開けた時、家へと続く道を走る景色では無く、雨で濡れたアスファルトが目一杯広がっていた。
なん、だ?なにがおきた?躓いたのか?いや違う、ソレらしいモノは無い。
首にバチっと、強い電流が体を駆け巡る。
雷に打たれた?いや雷は鳴ってなかった。じゃあなんだ?ボクは、なににあたったんだ?
混乱しながらもフラフラと、周りを見ようと立ち上がるために、
「いっっ!!?」
その瞬間、頭部の後ろから思いっきり何かで殴られた強い衝撃を感じた。
今度は受け身も取れずに倒れ込んでしまう。
『おい!もう少し丁重にやれ!』
『あの方に怒られる!』
『仕方ないだろ!、、、、こいつ、スタンガンでも気絶しなかったんだよ!』
男の怒号と、焦っている声がボクの後ろから聞こえてくる。
いや、は?なんで?なんで、人がいる?後ろは潰れた店だ、人がいる様な気配もないのに、どこからだ?どこから現れた?
『はぁ、、、、、おい、見られたら面倒だ。行くぞ』
『あ、あぁ』
身動きできないボクを横目に、黒いローブを深く被った男が、ボクを腕に抱き寄せ、そのまま抱き抱えて店の中へと入っていく。
揺れていく体を感じながら、薄れゆく意識を最後に、ボクは目を閉じた、、、、、、、、
毎週金曜日の夕方16時更新中!
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