グリーンリーフの変わり者エルフ
「えっと、オルフェリオさんって男の人なんですよね?」
「あぁ、そうだぞ」
「……???」
カイが訳がわからないって顔してて少し面白い。子供にゃ、難しい話だよな。
昨今は恋愛ってのが広義化してるっつーか、自由化してるっつーか。
あんま性別とか種族に囚われない恋愛をする奴が増えているらしいが、それでも何も知らない子供からすると男が男に結婚を申し込む、ってのは何がどうなってそうなるのかわからないよな。
別にコレに悪意があるわけでもない。子供の純粋無垢な疑問、ってヤツだ。
カイからするとまだよく分からん分野で、これから色々知っていくだろうから俺から下手なことは言わないでおくとする。
「女神の姿のセイルさんが好きになった、とかですか?」
「最初はな」
学生時代の実地研修でダンジョンに潜った時に発生したイレギュラーに対応するために仕方なく使った『ディバインシフター』。
その変身を見ていた何人かの内の1人がオルフェリオだ。
つまり、俺の事情を知る数少ない人の1人、ってことにもなる。
「あの時は面白かったわね。何とか討伐したと思ったらオルフェリオがその場で結婚を申し込んでるんだもん」
「こっちは何が起きたのか分からなくて固まるハメになったけどな」
あの時、ダンジョン内に突如現れたドラゴン。
学生だった俺達に当然、ドラゴンと戦うだけの実力なんてものは無く、何とか逃げ回ってたってところだった。
当時は学校の決まりで6人1組のパーティーでな。
俺とリリア。そしてその後プロの探索者として一緒にパーティーを組む2人。
それとは別にオルフェリオを含む、クラスメイトが2人の合計6人で行動してた訳だ。
「その別のクラスメイトの子が逃げてる途中で転んじゃってね」
「大変じゃないですか!!」
「あぁ、だから咄嗟に転んだ奴をオルフェリオが庇ったんだ。追ってきたドラゴンの攻撃からな」
大した奴だよ。当時の俺はオルフェリオのことを冒険者課を冷やかすために入学して来た、生け好かない貴族のお坊ちゃんくらいにしか思ってなかった。
そんな奴が平民のクラスメイトを庇ったんだぜ? 一瞬でオルフェリオの印象は変わった。
実際、当時は落ちこぼれと言われていた俺にも分け隔てなく接して来ていたしな。
「その時、咄嗟に『ディバインシフター』を使ってドラゴンをぶっ飛ばしたんだよ」
「びっくりしたわよあの時は。先生に『絶対使うな!!』ってアレだけ言われてた『ディバインシフター』を使っちゃうんだもん」
「その指示出したババアも、あの時ばかりは説教しなかったんだから、結果的には良かったんだよ」
逆に使ってなかったらぶっ飛ばされてただろうな、と今は思う。
力があるのに必要な時に使わないのは馬鹿だからな。
ババアが言いたかったのは、気軽に『ディバインシフター』を使うなってことだったし。
その言い付けは正しいと思っているし、あの時それを破ったのも間違ってないと思ってる。
……悔しいが、ババアの言うことはいつだって正解なんだ。
探索者としての実力はともかくとして、あの読みの深さというか、懐の深さというか。そういう部分では今だに勝てる気がしない。
「そんな大ピンチがあった直後に結婚を申し込んでるのよ? もうおかしいったらないじゃない」
「確かに、ちょっとシュールというか」
色々過程をすっ飛ばしててびっくりするよな。俺もいきなり手を握られて、『結婚してくれないか!!』って言われた時はびっくりして固まってから思わずビンタしちまったからな。
アレは少し申し訳ないことをしたと思ってはいるが、それでもオルフェリオも悪いと思っている。
男同士とかそういうのじゃなくて、いきなりそんなこと言ったらダメだろ。その時の俺とオルフェリオは別に仲良くも無かったんだぞ。
「それから事あるごとに結婚を申し込まれててね。最初は冗談とか勘違いとかだと思ってだんだけど」
「どうもエルフって種族自体があんまり性別に拘らない恋愛観を持ってるらしくてな」
オルフェリオは魂の輝き、とかなんとか言ってたっけな。とにかく、エルフとして何か琴線に触れる事があったらしい。
それからと言うもの、学校内でも結婚してくれって言ってくるもんだから、ちょっと色々大変だった。本当に色々、な。




