グリーンリーフの変わり者エルフ
「グリーンリーフ、かぁ」
ワインヒルでのブルーリオン騎士団との接触。そしてその後の息抜きを終え、更に二日ほどワインヒルの街で物資の調達や情報の整理を済ませた俺達は旅を再開し、大陸西部にあるグリーンリーフという街へ向かっていた。
「浮かない顔してるわね。まだ納得してないの? グリーンリーフ行き」
幌馬車を牽く馬を操りながら、頭に浮かんだことを何気なくポロっと溢すとリリアが呆れたような声音で話しかけて来た。
俺がグリーンリーフ行きには多少懐疑的だったから、まだごねてると思ったらしいが。
「いや、そうじゃねえよ。ただ、めんどくさい奴がそう言えばいたなって思い出してな」
「めんどくさい奴、ですか?」
「あぁ、めんどくさい奴だ」
カイも興味が出たのか、御者台の後ろまでやって来て俺の話を聞きに来る。別に面白い話じゃないんだがな。
長らく会ってないから忘れていたが、グリーンリーフにゃ知り合いがいる。例に漏れず、学生時代からの知り合いなんだが、これがめんどくさい奴なことも思い出して渋い顔をしているってワケ。
「あぁ、オルフェリオのこと? アンタ、まだアイツのこと苦手なの? 結構良い人じゃない」
「お前からしたら、な」
「あははは、確かにそうかも。アンタからしたらめんどくさい奴ね」
そいつの名前はオルフェリオ。オルフェリオ・エルディアス。
グリーンリーフに多いエルフ族の男で、歳は違うが俺らと同級生だ。しかもグリーンリーフ周辺を治める貴族の家柄。
つまるところ、良いところのお坊ちゃんって訳だ。
排他的と言われるエルフ族に加えて、貴族ともなるとよほど高飛車で高圧的、なんて情報だけだと思われがちだが、当の本人は相当に他人に友好的っていうエルフからすると変わり者の奴でな。
「聞くだけだと、悪い人じゃないですね」
「悪いどころか良い人よ。次期エルディアス家当主候補の筆頭、なんて言われてるくらいには優秀だし、交遊も広い。何より頭が良くて腕っぷしもそこそこある。絵に描いたような優等生だったわね」
「それがどうしてめんどくさい奴、なんですか?」
情報を聞くだけだと、滅茶苦茶良い奴。というか、実際に良い奴だ。エルフ族みたいに他種族を毛嫌いしてないし、貴族みたいに鼻につくようなヤツでもない。
どんな奴にも分け隔てなく、平等に接する。純粋に良い奴なんだ。
ただ、それとめんどくさい相手だと感じない理由にはならない。俺に取っちゃめんどくさい。正直言うと、天敵みたいな奴だったりする。
「あー、なあー」
「……?」
俺が歯切れ悪く答えに困っていると、カイは首を傾げ、リリアはその後ろで大笑いしている。
あんにゃろ、自分は関係ないからって面白がりやがって……。お前は見てるだけだから良いだろうが、こっちとしては色々問題なんだよ。
良い奴だからめんどくさいんだ。延々と言われては断ってるが、アイツはそれでも諦めないからな。
もし、グリーンリーフで会おうものなら、めんどくさいことにもなりかねない。
「隠してたって仕方ないし、ハッキリ教えてあげれば良いのに」
「……?」
「仕方ない。セイルが教えないなら私が教えておくか」
おい、勝手に教えんな。……いや、むしろ俺から口にすんのもなんか嫌だし、言ってもらった方が良いか?
どっちにしろ、グリーンリーフに行くと決まった時点で会うことになるのはほぼ確定みたいなもんだしな……。
「これから行くグリーンリーフ。そこにいるオルフェリオって人はセイルにず~っと結婚を申し込んでる変わり者エルフなのよ」
「……えぇ?!」
そんな大げさなリアクションするもんじゃねぇだろ。とカイのリアクションにツッコミを入れつつ、グリーンリーフで起きそうなことを予想して少しげんなりする。
言っただろ、めんどくさい奴だって。ずっと断り続けても会うたび絶対に求婚される身にもなってくれ。




