プロローグ
目の前にはゾーイがいる。私は寄生虫のようにこの家に住んでいる。目的は1つ。ゾーイと言う存在を欲しくてたまらないから。私は手に入らないと気がすまない性分の人間だ。どんな手段を使ってでも。
「サラと会ってから前より明るくなれた気がする。」
「どうして?」
「こんなに私のこと向き合ってくれる人今まで見たことがないから。」
「周りの人間が皆クソなのよ。全員どんな高級食材食べようが、葉っぱで発散しようが、美しい景色を見ようが変わらない。ゴミくずがそう簡単には変わるわけない。あんたの父親はゴミだよ。クソ野郎そのものね。」
「お父さんはきっと少しは私のこと愛してくれてるはず。」
「どんだけお人好しでいるつもりなの?私は分かるのよ。あんたの父親があんたのことを愛してないことくらい。」
「サラがそう言うならそれを信じるよ。」
ゾーイは私のことを信じてくれるしずっと離れない。チューインガムのように。離れてはいけない。ゾーイは私がいなければ生きてけない。ゾーイは私のものだ。彼女は離れようと思ってもきっと戻ってくる。彼女は愛に飢えた可哀想な女の子だって私には分かる。私はそう言う人間も好き。彼女は特別だ。愛に飢えた人なら誰でも良いわけではない。それでは何故彼女を選んだのか?一目あった時から特別感を感じたから。私が不良達に殴られてる時助けられなかったとはいえ20秒以上私のことを見ていたのはきっと運命に違いない。天から送られたプレゼントに違いない。拒否されようが絶対に離さないし、離れることは出来ない。一度決まった運命は取り消すことなんて出来ない。
「サラのお父さんはどんな人だったの?」
「私に父親なんていないの。母親もいない。そんなことで私は悲しむ人間じゃないの。」
「辛いこと聞いてごめん。」
「謝ることじゃない。父親がいることが幸せってわけじゃない。ゾーイのこと毎日見てればそうね。羨ましいとも1ミリも思ったことない。」
「サラ、いつでも私がいるから。サラがそばにいてから少しだけ人生乗り越えられそうな気がする。前は学校に行くのも辛かった。今だっていじめる子がいるから学校に行くのは辛い。だけどサラがいると思うと学校生活乗り越えられる気がするの。」
「他に妄想で殺したい奴入れば言って。あんたの潜在意識に私も入って一緒に殺してあげる。ただの想像と違うのよ。」
「だけど同時にこんなこと続けて大丈夫なのかなって思う。」
「人間の潜在意識や本音なんて知らない方が良い。この世に完全に裏のない人間がいるわけない。」
「私って残酷?」
「当たり前の感情よ。散々虐げて来た人間が死んで喜ぶことがあっちゃ駄目なわけじゃない。」
「そこまでは思っては無いけどそう言う人がこの世いなくなったら安心はする。一緒の地球上にいるだけでも心の平穏は保てないと思う。」
「そうよ。そんな人間消した所で何も後悔なんて残らない人間よ。あんたの同級生も無関心の父親も。あの父親は同級生のことばっかり味方してるようね。」
「ゾーイお嬢様、サラお嬢様、ご飯の支度が出来ました。」
この家には和気あいあいとした家庭の雰囲気がない。メイドと子供だけの奇妙な家だ。仕事ばかりに関心があるとはいえ彼女の両親は1日家にいない。ゾーイに直接被害は与えてないが、きっと母親もそこまで彼女に関心はないだろう。あるとしたら彼女が危機的な状況にたたされた時だ。そうならないと分からない。
「ハーパー、何でこんなに豪華な食事なのかしら?」
「今日は私の誕生日ですから。」
「変なメイドね。私みたいなホームレス少女を招き入れたり、変なところ真面目なあなたが自分の誕生日パーティーを開くなんて。」
「サラ、良いのよ。ハーパーがこんなことするのはじめてだけどいつもないことだから一緒に楽しもう。」
誕生日パーティーとは思えない雰囲気だった。誕生日だが本人は全く笑っていなかった。誕生日パーティーを勝手に開いたのも特に理由なんてないんだろう。そこには意志というものはない。
「ハーパーの誕生日なんて初めて知ったわ。」
「スイーツもたくさん作ったので食べてください。」
「せっかくなら何かプレゼントするよ。何が良い?」
「プレゼントは結構です。ここであなた達が食事すればそれで十分なので。」
「安心して。このことはお父さんやお母さんとかには絶対言わないから。」
「言ってもかまいません。」
「ゾーイは言わないんじゃなくて言えないのよ。何だかんだあんたのこと気に入ってるから。私には分かる。」
私は人の心がだいたい読める。それにひとの心の中に入ることが出来る。
「サラ、誕生日いつなの?ずっと一緒にいるのに知らなくて。」
「私の誕生日?いつかしら?」
「誕生日覚えてないの?」
「記憶する必要なんてないわ。」
私の誕生日は誰にも教えない。
「ねえ、サラ。」
ゾーイと一緒に寝そべる。
「サラのお父さんとお母さんはどんな人なの。答えたくなければ答えなくて良いよ。」
「父親と母親ね。覚える価値もないわ。」
私にもゾーイのように父親と母親がいた。私がここに至るまでどう過ごしたか彼女も両親も知らない。
これは私の記録。




