第二十話 謎のショートメール
愛沢ノアは自室のベッドに寝転がっていた。
机が視界の隅に入り込み、書きかけのノートと、付箋を挟んだ教科書が映ってしまう。
視線をすぐに戻し、手元の画面に浮かぶ黒松ヒマリの電話番号を、何十回も目でたどった。
「かけちゃ、だめなんだよね……」
胸いっぱいに詰め込まれた苦しみを吐き出す術がない。
あったとしても容易く使えるものではないことに、悩んでいた。
画面を閉ざし、大きな溜息を漏らす。
右に左にとゴロゴロ動いては「うーん、うーん」と唸るしかない。
そんな時に軽く通知音が鳴った。
急いで画面を押し、素早くなぞる。
すると、ショートメールが届いていた。
「だれ?」
見知らぬ電話番号で送られてきたショートメール。
『果たし状』
「えぇ……?」
最初の文字を思わず何度も見返す。迷惑メールかと思ったノアだったが、すぐに目を見開いた。
『黒松ヒマリをかけて決闘を申し込みます。今度日曜日○○地区の中華屋に来てください。追伸美味しい中華をご馳走します』
「えぇぇ……」
怪しさ全開ながら、気になって仕方がない。
ノアは返信せず、スマホを胸に抱えて再び悩み転がった――。




