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第二十一話 中華屋

 当日。例の中華屋までやってきたノアは、スマホを胸元に寄せて小さな店を見上げた。

 シンプルに『中華屋』と書かれた看板をちらっと見やってから、ガラス障子の引き戸の前に立つ。

 引き戸の隙間を覗けば、まばらな客と厨房で腕を揮う店主が見えた。

 作業着の客はラーメンと餃子のセットにキムチ炒飯をプラスした定食。

 中年女性の客はご飯大盛りの酢豚定食。

 どの客も黙々と食事をする様子が窺える。

 ノアは緩みのある吐息を吐き出す。

 そっと引き戸を開けると、乾いた音がカラカラと鳴った。


「いらっしゃいませー! 空いてる席にどうぞー。注文あればベルで鳴らしてねぇ」


 中華鍋を手に持ちながら厨房から顔を出した恰幅の良い男性店主は、にこやかな表情で出迎えた。

 

「は、はい」


 ノアは空いている隅っこの四人掛けテーブル席に腰かけた。

 テーブル以外にも畳席とカウンター席もあり、小さいお店ながら中はスッキリ、奥行きもある。

 ランチメニュー表を覗いてみると、キムチ炒飯定食、から揚げ定食、餃子定食、と豊富なセットが載っていた。

 デザートはバニラ味、チョコ味のアイスクリームのみ。


《アイス食べようかな……というより、あのメール本当なのかなぁ》

 

 店に来たものの、半信半疑なままノアはメニュー表をジッと見つめていた。

 すると、厨房に繋がるアーチ状の開口からポニーテールと前髪を切り揃えた少女が、小さな器を運んでやってきた。


《あれっ、古民家カフェで見かけたような……》


 ノアは少女の顔をチラチラと覗いてしまう。


「おまたせしましたぁ、バニラです。それから、はーい」


 透明のガラス器に盛られた半円状のバニラアイスが、ノアの前に差し出される。

 さらに目を奪われたのは、『果たし状』という強烈な印象を与える、墨字の書状だった。


「いつもヒマリ先輩がお世話になってます。ワタシ、ミクと申します」


 ノアは恐る恐る見上げた。

 純度いっぱい、棘の一本も感じさせない笑顔と声で挨拶をしたミクに、体は勝手に身震いを起こし、手にはじんわり汗を掻いてしまう――。

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