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転生したベテラン冒険者はセカンドライフを謳歌する  作者: リズ
第二章 二つめの町【ミスルトゥ】
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第46話 ダンジョンを探して

 イロハの鍛練ついでにゴブリン退治の依頼を受け、プエルタとミスルトゥの間に伸びる街道沿いの森にやって来たルーキス達。


 そんなルーキス達を森に住む熊が魔物化したフォレストベアが襲う。

 手負いだったフォレストベアをイロハの前で難なく倒すルーキスとフィリス。

 

 討伐したフォレストベアを解体し、ルーキスが魔石を抜き取ったそんな時のこと。

 フォレストベアが飛び出してきた茂みが再びガサっと音を立てて揺れた。


「来たか」


「相手はゴブリンかしら」


「他に冒険者が森に入り込んでなければ恐らくは」


 そんな事を話していると、茂み掻き分け、小さな影が三つ現れた。

 二人の予想通り、灰緑色の子供のような身長しかない醜い顔の人型の魔物、ゴブリン達だ。「ギギ、ギャア。ギャアギギ」と、倒れて灰に変わっていくフォレストベアの前にいるルーキス達を見てゴブリン達は何やら文句を言っている。


「追い詰めた獲物を横取りされてお怒りかね? 仕留め切れなかった力のなさを恨みながら死ぬんだな」


「悪役みたいな物言いね」


「まあ正義の味方では無いしな」


 こちらを威嚇し、手に持つ棍棒や小さなナイフを構えるゴブリン達。

 そのゴブリン達が「ギャアギャア」と何やら声を上げる。

 どうやら仲間を呼んでいるようだ。


「ルーキス、ここは私にやらせてくれない?」

 

「自信有りかい?」


「アナタに鍛えられて、どこまで一人で戦えるようになったか見てもらいたいの」


「分かった。では見せてもらうとしよう。イロハの前だ、怪我するなよ?」


「もちろん」


 蛮刀を手に、バックラーを構えフィリスが走り出すために腰を落とす。

 ルーキスはそんなフィリスの様子にハルバードを地面に突き刺すと一歩二歩と後ろに下がり、イロハの横に立った。


「良く見てなイロハ。フィリスも少し前まではゴブリン一頭に苦戦していた。それが今、三頭を同時に相手取ろうってんだから、若いってのは良いねえ」


「あれ? ルーキスお兄ちゃんとフィリスお姉ちゃんって同じ歳ですよね?」


「ん〜。まあ、な」


 イロハの言葉に苦笑するルーキス。

 そんな二人を背に、フィリスが駆け出した。

 目指すはすぐ目の前に立つ棍棒を持つゴブリン。

 フィリスの接近に合わせて、迎撃の為にゴブリンは棍棒を振り上げるが、フィリスの接近速度はゴブリンの反応を優に上回っていた。


 フィリスは肩に蛮刀を担ぐが、それを振り下ろさず、走った勢いのまま前蹴りをゴブリンの顔面に食らわせた。

 身体強化を発動したフィリスの一撃はゴブリンの顔面を陥没させ、吹き飛ばし、後ろに立っていたもう一頭のゴブリンごと、木に叩きつける。


 吹き飛ばされた仲間のゴブリンに振り返るもう一頭のゴブリン。


 そのゴブリンは近付くフィリスに反応する事なく、フィリスが振り下ろした蛮刀により体を前後に一刀両断されて事切れる。


 そこからフィリスは吹き飛ばした二頭を仕留める為に再び駆け出し、体を起こそうとしたゴブリン二頭をまとめて蛮刀で串刺しにしてゴブリン三頭を危なげなく仕留めてみせた。


「ふう。良し」

 

 息を深く吐いて、フィリスは蛮刀をゴブリンの死骸から抜く。

 そんなフィリスに矢が一射、射掛けられた。

 しかし、フィリスはその矢を後ろに跳んで避けると、地面に落ちていたゴブリンのナイフを取り上げ、矢が射られた木の枝の方向に向かって投げつけた。


「ギャ」と、短い悲鳴を上げ、体勢を崩したか、ガサガサと音をたてながら木の上に身を隠していた弓を装備していたゴブリンアーチャーが地面に落下する。


 それを仕留めようとして走り出そうとするフィリスだったが、そんなフィリスをルーキスは「ちょい待ち」と制した。


「あ、そっか」


「お、気づいたか。当たりどころが悪くて即死してなけりゃ拠点に逃げ出すだろうから追跡しよう」


 そう言ってルーキスはハルバードを地面から抜いて先頭に立ち、まずはフィリスがナイフを投げた木のほうに向かって歩き出した。


 しかし、運が良いのか悪いのか。

 フィリスが投げたナイフはゴブリンアーチャーの脳天を直撃、木の根元ですっかり息絶えてしまっていた。


「うーむ。お見事」


「ご、ごめんなさい」


「いやいや。謝る事じゃない、フィリスの運が良くてコイツの運が悪かったってだけの話だからな」


「これじゃ追えない?」


「まさか。ゴブリンが足跡を消しながら歩いている訳もない。血の跡を辿るよりは面倒だが、足跡を探して辿るさ」


 そう言うと、ルーキスはゴブリンアーチャーから魔石を抜き出すと、ゴブリン達が飛び出してきた茂みを目指して歩き、その茂みをハルバードで薙ぎ払って道を作って奥へと向かう。


 その先にはルーキスの狙い通り土や草を踏んだ跡が確かに続いていた。


「ルーキス、帰り道わかる?」


 森の奥へと行けば行くほど木々は鬱蒼とし、方向感覚が失われていく。

 その状況に、先程見事な戦闘を披露したとは思えないほどフィリスはイロハと同じように不安そうに顔を曇らせた。


「大丈夫大丈夫。来た道帰りゃ良いんだよ」


「来た道、分かんないです」


「もしかして、何か目印でも付けてる?」


「フィリスが倒したゴブリンの魔石の魔力もあるし、最悪木に登ればミスルトゥの壁が見えるだろうから、ひとまずはゴブリンの足跡をこのまま追おう。集落かダンジョンを見つけたら即撤退。ギルドに報せて、俺たちはゴブリンの討伐証明を渡して任務終了だ」


「ダンジョンは攻略しないの?」


「しないよ。ここにダンジョンがあるとすれば新しい物だろうし、そうならフィリスのお爺さんの遺品はまず無いだろう?」


「でもルーキスの目的は?」


「俺の目的は何もダンジョンを攻略し尽くす事じゃない。面白おかしく冒険者として生きられれば、それが最高だ。まあ可愛い嫁さんや娘とのんびり生活するってのも有りかもしれんがな」


 フィリスの言葉に立ち止まり、振り返って笑うルーキス。

 そんなルーキスの笑顔にイロハは首を傾げ、フィリスは顔を赤くする。

 しかし、フィリスはルーキスが再び進み始めた背中を見ながら、何かを振り払うように首を横に振った。


(勘違いしちゃダメよね。お嫁さんって私の事を言ってるんじゃないだろうし)


 ルーキスにとって、現状該当する人物など二人しかいないのだが、フィリスは自信なさげに少し俯き気味で、前を歩くルーキスの背中を見つめた。


 しばらく無言が続き、足跡を追って森の奥へ奥へと進んでいくと、不意にルーキスが立ち止まって二人に向かって手を伸ばして制した。


「どうしたの? 何か見つけた?」


 ルーキスの様子に思わず小声になって聞くフィリス。

 ルーキスはそんなフィリスを手招きして呼び寄せると、口元に人差し指を当て、空いた手で進行方向の少し左を指差した。

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