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エピローグ

「ユーくーん、レシートのストック切れちゃったからちょうだーい!」

「はいはい待っててねー」

「トイレットペーパーじゃないからね!」

「間違えないでしょ普通……」

「いやね、こないだトイレットペーパーとレシート間違えてさ、レシートで拭いたら痛いのなんのって……」

「そういう間違え方ですか!?」

 本日は晴天なり。我が店の景気はぼちぼちなり。

 高校二年生になった僕は、相も変わらずバイトに明け暮れている。


 丁度一年前、このお店には不思議な女の子が働いていた。少し不器用で、感情を表に出すのが苦手で、そして何事にも真っ直ぐに取り組む女の子だ。ある事情で今は辞めてしまったけれど、いつでも帰って来れるようにユニフォームはずっととっておいてある。

 あの人は今頃何をしているだろうか。あの人の住む世界は、明るくなっているだろうか。そんなこと僕にわかる術はないのだけれど、時々考えてしまう。

 

 あ、そういえば今日はちょっとしたイベントがあるんだった。

 従業員室から母さんの呼ぶ声がする。

「ユーくーん、母さんちょっと忙しいから、ユーくんが面接してあげてくれないー?」

 一年ぶりに、うちのお店で働きたいと言う人が来たのだ。面接を僕みたいなバイトに任せるのはどうかと思うけど、これも勉強だ。今のうちに人材を見極める力もつけていかなければならない。

「わかった。そしたら捺、僕はちょっと面接官やってくるから。店番お願いね」

「了解しました! ここはひとつ大船に乗ったつもりで、行ってらっしゃい!」

「調子良いなあ……」

 そこは大胸のまちがいでしょ、というジョークを思いつきましたが、はい。なんでもありません。

 僕は自分で何を考えているんだと苦笑して従業員室に入る。

 部屋には女の子が一人、背筋良く椅子に座っていた。腰辺りまで伸びる黒髪が綺麗で、年齢は僕と同じ、もしくは上くらいのように思う。

「すいません待たせちゃって。緊張せずにくつろいでください」

「はい……」

「それじゃ今から、面接を始めたいと思います」

「よろしくお願いします」

「まず初めに、名前を伺ってもいいですか」


 ――愛奈さん、僕は今でも鍛錬に励んでいますよ。このお店がいつまでも続くように、愛奈さんがいつでも来られるようにと。

あのロッカーは壊れてしまったけれど、ロッカーと繋がるくらいだ。次はトイレなんかから出てきても何も不思議ではない。

人間の人生は一度きりしかない。その一つ一つの人生にはそれぞれ夢があって、それはコンビニを経営してみたいとか、世界を平和にしたいとか本当にさまざまだ。

夢なんてないと思っていた僕にそれを気づかせてくれたのは愛奈さん、あなたでした。あなたのいなかった一年前なんて、僕には想像もできません。

「はい、私の名前は――」

 だからこそあなたに、この言葉を贈ります。



 ありがとうございました。またお越しくださいませ。


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