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ある日突然獣人になった超ド級イケメンは、ツンデレ?美人女子大生を頼る  作者: 別所 燈


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12 彬人、翡翠の実家についていく

 すったもんだの末、彬人はすっかりしょげかえり、肩をおとして恨めしそうに翡翠を見る。


「だって。教えたらついてくるでしょ?」

「あたりまえじゃねえか!」

 翡翠はポリポリと頭を掻く。彬人はそれなりに楽しませてくれる時もあるが、面倒ごとばかり持ってくるので、できれば教えたくない。


「う~ん、新宿とか渋谷のほうかな?」

 図々しくて騒々しい彬人についてこられるのはちょっと……。実家の手伝いだって忙しいのに、彬人の相手までするなんてとんでもない。この男、用がなければ来ないが、用があるときはやたらとやかましい。

「それ、ザックりすぎだろ! というか俺の実家と近いんじゃないか? お前はがめついが、こんな日本家屋を人に貸しもせず遊ばせてるし、なにげに金持ちっぽいし、結構有名な神社だよな? ちょっと待てよ。俺どこかわかるかも」

 彬人がカバンからiPadを引きずり出す。

「やめなさいよ! ストーカー! 調べてんじゃないわよ」

 そういって、彼のiPadを取り上げる。


「うわあ! 俺、お前が留守のあいだカピバラになって捕獲されたらどうするの?」

 彬人が髪を掻きまわす。

「大学の雑木林にでも隠れてれば?」

「ふざけんな。また魔女に見つかったらシャレにならねえだろ! 俺の人生がかかっているんだ。こんなイケメンが大学から消えたら、女子が悲しむだろ!」

 やっぱり、こいつ人だと(やかま)しいだけだ。


「うるさいな! 黙れ! ってか夏越の祓だから、帰らないわけにいかないんだよ。私の作るお札人気あるし」

「やっぱ商売かよ! どうしても俺おいていくというのなら、カピバラの姿でどこまででも追跡してやる!」

 混乱した彬人が目を吊り上げる。本当に発言がバカだ。いろいろと馬鹿だ。


「はあ、しょうがないなあ。じゃあ、神社の場所教えるからくれば? でも実家にまで訪ねてこないでね」

「わかった。近くのウィークリーマンションでも探す」

 そこで彬人の動きがはたと止まる。シンキングタイムのようだ。

「え? ちょっと待て。実家に来るなってことは、俺お前の作った薬湯に入れないってことじゃないのか?」

「ちっ」

 いつになく察しがいい。


「おい! いま舌打ちしただろ」

 翡翠はあきらめたようにため息をつく。

「あんたって本当に手がかかるわね。そうだ。うちの神社、立ち入り禁止の鎮守の森があるからうっかり獣になったらそこ隠れていて、迎えに行く」

 すると彬人しょんぼりと肩を落とす。

「俺、もう森とかそういうのトラウマで、やなんだけど。なんか変な場所とつながったりしないよな?」


 今日の彬人は勘がさえわたっている。実は実家のささやかな鎮守の森は、ときどき時空がゆがむこともあったりなかったりする場所だ。昔は神隠しの森とか呼ばれていたりする。しかし時空がゆがむといってもたいしたことではなく。うちの神社で迷子のなった子供が、立川あたりで見つかったりするくらいで、この時代では本気で行方不明になったりしない。


「おい、今お前、目が泳いだぞ」

「大丈夫だって」

 翡翠がひきつった笑みを浮かべる。確かにカピバラの姿のまま立川の雑踏に現れたら問題かもしれない。SNSの餌食になりそう。


「本当かよ?」

 彬人が疑り深そうに眉根を寄せ、翡翠を見る。


「それにうちの神社の茅の輪何度かくぐってれば、そのうちカピバラから人に戻れるんじゃないかな」

「わかった。行く」

 決然と彬人がいう。


「来るたびにお賽銭ちゃんと投げてね?」

「守銭奴が!」

「それ違うから、ちゃんと信心もってよね」

 結局神社の場所を教え、彬人はそばのホテルに泊まることになった。


「いやだなあ……」


 ◇◇◇



 久しぶりに実家に帰ると弟が大歓迎してくれた。

「お帰り姉さん!」

 鳥居の前で声をかけられた。

「優斗元気そうだね」

 弟は名門高校の詰襟を着ている。

「ああ、そうだ、姉さん。僕成績優秀なんだ」

 優斗が今更なことを言う。

「知ってる」

「でね、医者になりたい」

「ふ~ん、優斗もたいへんだねえ、医者と禰宜の兼業なんて、神社の中に治療院でも開くの?」

「いい加減にしてよ、姉さん。この家で巫力があるのは姉さんと母さんじゃないか。なんで俺がつぐんだよ」

 そう、この弟は古いしきたりの神社を継ぎたくないのだ。

「何言ってんのよ。あんただって力があるじゃない」

「姉さんや、母さんには及ばないよ。あきらめてこの家姉さんが継いでくれない。父さんみたいに養子もらってよ」

「私はまっとうにいきたいの」

 というと弟がじとっと翡翠を見る。

「でさあ。姉さんあれ知っている?」

 といって弟が指で指し示す先には、見えないふりをしていたあれが……。

「何のこと?」

 翡翠は今、猛烈に現実逃避したい。

「茅の輪の周りをさっきから必死でカピバラがグルグルまわっているんだけれど。警察に通報しようとしたら、母さんに止められて。姉さんの大事な運命のカピバラさんだから、姉さんがどうにかしてくれるって。で、今参拝客が餌やったりしはじめたんだけど。あれ、どうする?」


 運命って何? ちなみに母の勘はあたる。彼女にはときとき未来が見えるのだ。だから高い金を払って政財界の重鎮が卜占にやってくることもある。


「やめて! 当たっていたらどうするのよ! 運命のカビバラさんってなに? そもそも私はアイツに巻き込まれたのよ」

 慌ててカピバラのもとにかけていく。


「西園寺! 何やってんのよ! 森に隠れなっていったじゃん。警察に通報されたら、捕獲さるでしょ!」



ずいぶんあいてしまいましたが、気まぐれに更新します。

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