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直人の憧れ

 「ほらほらほらっ!!」

 「このぉぉおっ!!」

 飛び交う火球と銃弾。空気が焼け、硝煙の臭いがこちらにも微かに漂ってくる。

 俺は思わず、「すげぇ……」と呟いていた。

 それもそのはず。いつかアニメで見たような光景が目の前にあるのだから。

 「う、うーん……なんだよ、騒がしいなぁ……」

 「あ、気が付いたのか」

 直人が目を覚ました。

 「なんだよこの臭い、花火でもやってんのか?」

 「いや……なんというか……」

 ちょっと面倒なことになったぞ……。

 直人は一般人だ。正直に目の前で起こっていることを説明したところで理解できないだろう。それに、最悪の場合は――

 ふと、過去のトラウマを思い出しそうになって振り払う。

 直人に限ってそんなことがあるわけがない!俺は、自分にそう言い聞かせた。

 「金太、一体何がどうなってんだ?説明してくれ」

 「それは……」

 大丈夫だ、直人なら理解してくれるはずだ。

 「見ての通り、魔法だよ。魔法使い同士が戦っているんだ」

 「だろうな……見ればわかるぜ」

 そう言って微笑を浮かべる直人。

 直人はあっさり受け入れてくれた。

 思っていた通りだ。

 直人ほど純粋に非日常に憧れている男はいない。

 そんな彼が望んでいた光景が目の前にある。

 少々の困惑はあるだろうが、結局は自分が望んでいたものだ。最後は受け入れてしまうものだ。



 「なぁ金太、なんだよこれ!夢じゃないんだよなっ!」

 魔法を()の当たりにした直人の興奮は、必殺技の再現の成功も比にならないほどだった。

 「興奮しすぎだって。さっきから同じことしか言ってないぞ」

 「だってさ、魔法だぜ!本物の魔法だぜ!金太も凄いと思わないのか?」

 気持ちはわかる。俺だって、コロナと出会ったときには同じような気分になったから。

 「いや、別に珍しいものじゃないし」

 「は?」

 「だって、俺は魔法使いの息子だから――」

 そこまで口にして、しまった!と気が付く。

 直人は俺の言葉を理解できていなかった。

 それもそのはず。いくら非日常に憧れているとはいえ、今までの直人は魔法が現実のものではないことが当たり前だった。

 対して、俺は日常に魔法が存在することが当たり前だった。

 非日常の定義からして、俺達は違っていた。それを忘れてしまっていた。

 「あ、ああ。すごいよな!本当に魔法があったなんて!」

 あわててごまかすと、直人は不審そうな顔もせず、すぐに魔法使い同士の戦いに視線を戻してくれた。



 戦闘はどちらも(ゆず)らず、まだまだ決着が付きそうにない。

 コロナも、少女も大技を使い始め。旧校舎の被害は増大していた。

 初めの方は楽しんで見ていたが。ここまで被害が大きくなると、近隣の住民に通報されないか心配になってきた。

 正直、そろそろ終わってほしいのだが……。

 「うわぁっ!?」

 不意に、目の前に少女が現れて、視界を(さえぎ)られた。

 少女は俺がいることを気にせず発砲する。おかげで銃声によって聴覚が一時的に麻痺してしまう。

 「カナタ、早く逃げろ!」

 コロナが叫けぶが、よく聞こえなかった。

 そして、俺の視界から少女が消えると、同時に巨大な火球が襲いかかってきた。

 もう避けようの無い距離だ。俺は防御魔法を使えない。このままでは火球にのみ込まれてしまう。

 しかし、どうすることもできない。俺は覚悟を決めて目をつむった。

 「うおりゃぁぁっ!!」

 不意に、叫び声とともに誰かに押し飛ばされ、俺は地面に倒れ込んだ。

 そして、爆風と熱風が巻き起こり、俺の頬を撫でていった。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

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