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禁断の恋を死から  作者: 蒼檸檬
禁断の恋を死から
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九話 抵抗と仄かな希望

私の目からは大粒の涙が溢れ出てきていた。

弔神さんは深く考えているようだった。

弔神さんを困らせたいわけじゃない。

でも、エヌと一緒にいるためにはこんなことだってやむを得ない事なんだって。

仕方ないって。

もう私のこの『好き』って感情は止まることを知らないんだから。

止まれないんだから。


張り詰めた重い空気を割り入るように口を開いた弔神さん。


「えーと、では、とりあえずNとの面会を認めましょう。

どうするかはその後詳しく話し合いますか?」


「わかりました。それでお願いします。」


「では、R、案内してあげて」


Rさんはこちらに来て、早くいきましょうと言わんばかりの顔を向けてきた。

言われなくても、行くよ。

そう思いながら、涙を拭く。


「では、失礼します、弔神さん。」


「じゃあ、またあとで」


意外と寛容な心を持っていてくれてよかった。

どうやって説得すればいいかよくわかんなかったけど、勝手に口が先走ってくれたおかげでなんとかなったな。

それ以上に自覚してしまうほど、目が腫れぼったい。

泣きすぎてしまった。

これじゃ、このあとエヌに笑われちゃう。

どうにか、誤魔化さないとな。


「佐々井様はどうしてそこまでNのことが好きなのですか?」


Rさんは突然踏み込んだ質問をしてきた。

好きだって自覚してたけど、さっき会ったばかりの人にそういわれるとなにか恥ずかしい。


「どうしてって言われるとよくわかんないけど、いっぱい後悔ある中さ、死んじゃってこっち来た時に支えになってくれたし、何より昔、好きだった人に何か少し似てるんだよね。」


「そんないいですかね?」


呆れるかのように言うRさん。

なんだよ、こいつ、腹立つな。

そんなにエヌのこと嫌ってんのかな?

確かに嫌われそうなやつではあるけど、なにしたんだよ。


「エヌとはどういう関係なんですか?

同僚とかですかね?」


すごい不自然な質問をしてしまった。

同じ死神っていう共通点あるのに。


「はは。いやあ、面白いこと聞いてくるね。

まあ、同日入社っていうのかな。

待って、ここ会社だっけ?

ま、いっか。そんなとこ。」


へえ、結構長い付き合いなのか。

会ったときにいじれるように当時のことでも聞いておくか。


「初めの頃、エヌってどんな感じでしたかね?」


「えー、どんな感じだったけな。

まあ、あんま今と変わってないね。

でも、昔はもっと敬語使って、真面目って言うの?

しっかりしてたね。

今はどうしたんだか。」


エヌが真面目?

そんなことあるんだ。

見てみたかったな。

なんか想像しただけで吹き出しそうだな。


「はい、着いたっすよ。

早く行ってきてください。

待ってるんじゃないっすかね」


突き放すように言うRさんに感謝を伝えつつ、そっとドアを開ける。


「エヌ?」


「え、奈央?なんでいんの?

え、?どうやってきたの?」


あからさまな動揺具合だった。

そりゃそうだろ、こんなまるで刑務所みたいなとこ私なんかがわかるはずないだろうからな。

久しぶりにエヌを見て、なぜか涙がこぼれそうになる。

そんなに感動することでもないのに。


「エヌ、なにやらかしたの?

私ぐらいにはさ、正直に言ってよ。

私の行動管理係なんでしょ。」


エヌは呆れたように、観念したかのように口を開いた。


「実はさ、規約の『淀に来たいかなる者のプライベートにも踏み込んではならぬ』っていうの破ったって判断されたっぽくてさ。

まあ、仕方ないのかもしれないけどさ、そう見えちゃったんだったら。

で、なんかプライバシー保護の観点から記憶抹消になるらしい。

ひでえよな、覚えてたいことだらけだって言うのにさ。」


明らかにエヌの気持ちは沈んでしまっていた。

あんなに明るくて、バカみたいにはしゃいでたのに。

毎日を全力で楽しんでいたのに。


「エヌさ、もしかして諦めたの?

あのエヌが?

私と一緒にいるって言ったよね?

私の淀での半年を共に過ごすって言ったよね?」


「そんなん言ったけな?

でも、そんなんなんだっていいから奈央の淀での生活は一緒に過ごして、見送ってやりたい。

それが叶うかは正直わかんないけどな。」


辛さを隠すかのように笑うエヌを見て、胸が締め付けられる。

我慢しないでよ、エヌ。

自由奔放に笑って見せてよ。


「私がさ、一人で天国行って、誰も知ってる人がいなくて、孤独になっても良いの?」


「はあ?そんなの知るかよ、、、」


「そんなの見たくないでしょ、ちゃんとしてよ」


「はは。なんか変わったな、奈央。

そうだな、希望を持たないとな。

それがどれだけ仄かなものだとしても」


流石に自意識過剰が過ぎたかな?

まあいいや、これもやむを得ない事だ。

そうだ。

仕方ない。

そういうことにしておこう。


「だよね、エヌ。じゃあ、待ってて。

私が何とかして見せるからさ。」


「頼んだぞ、奈央」


「うん!」


私は見え隠れする希望に向かって走り出した。



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