十話 気持ちの伝え方
「Rさん、早く戻りましょう!」
「いいんですか、結構早いですけど。
もう会えなくなるかもしれないんですよ?」
「そんなことにはならない。絶対にしない。
だから、早く行くの。」
Rさんは呆れているのかそこから返事もなく、さっきの部屋までまた案内してくれた。
大きく息を吐いてから、扉を開ける。
いける、やれる。
大丈夫、やるんだ。
絶対できる、絶対!
「弔神さん、エヌについてなんですけど。」
「おお、来たか、佐々井さん。」
突然様付けがなくなっていた。
敬われてないのか、私。
まあ、いいよ。
そんなもんなんでしょ。
「さっき、他の有識者とも話したんだが、何か条件を付ければ、特例として認めることができるという結論に至った。」
有識者って誰なんだろ?
そんなのいるのかな?
まあ、いいけど条件って何すんのかな?
「ちなみに条件というのは?」
「まあ、選んだり、決めたりするのは、佐々井さんだけど、処罰の例を挙げるとしたら、
・記憶剥奪なしのNの地獄行
・佐々井さんの淀での記憶剥奪
・現世への行き来、永久停止
・輪廻転生権の剥奪
とかかな。
佐々井さんにも処罰あたっちゃうんだけど、まぁNを守りたいんだったら受け入れてほしい。
で、何にしたい?」
どんなことがあっても、エヌと一緒にいたい。
でも、エヌが私を覚えていないのはやだ。
私がエヌを覚えていないのも。
「仮に輪廻転生権の剥奪を選んだ場合、同じ天国に行けるんですか?」
「いや、その答えはNoだね。」
だと思った。
こんな楽な条件で認められるなんて思ってなかったしな。
「じゃあ、私の記憶剥奪でいいので、エヌと同じ天国に行かせてください。」
覚悟は決まっていた。
大丈夫。私だったらまたエヌを好きになるよ。
一緒に居れればなんだっていいんだよ。
守るってのは自己犠牲も厭わないもんだって、なんかの主人公も言ってたよ。
「ホントにいいんだね?佐々井さん。」
「はい。大丈夫です。」
内心ビクビクしていた。
それでいいと思えたらいいんだ。
「分かった。このことは私からNに伝えておこう。
では、明後日処罰を行い、そのまま天国に行く方針で話を進めるがいいかね?」
私は頷く。
「では、エヌに事情を話したらそちらへ向かわせるから、今しばらく淀の自室で待っていてくれ」
エヌとの記憶を楽しめるのも残り2日。
私は棚に入っていた修学旅行の写真を取り出す。
今でもあんまり覚えてないっていうのに、完全に忘れちゃうのか。
エヌに助けられたこと、いっぱいあったのにさ。
ダメだよ、自分でそうするって言ったんだからさ。
泣いちゃダメだって。
エヌ来たら、どうすんの?
第一、エヌになんて言ってやろうかな?
どんな顔してあげればいいかな?
もうなんも考えれないよ。
外から荒い息と足音が聞こえてきて、急いで涙を拭う。
乱暴に扉を開いて、エヌが入ってきた。
「はぁはあ。
お前なんであんなこと言ったんだよ?
ふざけんなよ。お前じゃなくて俺が罰せられるべきなのに。
なんでお前が代わりに被ってんだよ。
なぁ、止めてくれよ。お前に傷ついてほしくないんだ。」
想定内で想定外で。
エヌが泣きそうな勢いで言うから、私も泣きそうになる。
「エヌが規約違反したから」
「だから、お前が代わりに被ることじゃな、、、、」
「だからって何なの?
私はこれでいいってこれがいいって思ったからそうしたの。
私に傷ついてほしくない?
私はエヌに傷ついてほしくない!」
私から涙が溢れ出てくる。思いと共に。
「規約違反したって私のせいなんでしょ?
だから償いたいとかじゃない。
あんたのお陰で死んできても辛くなかった。
楽しかった。
その感謝。お礼なの。
だから受け取って」
涙でぐちゃぐちゃになっているであろう顔で微笑みかける。
涙であまり見えていないけど、エヌが泣いているようだった。
言っていることはメチャクチャだし、押し付けをしているだけだって分かってる自分もいるのに、それ以上にそれでも良いって思ってる自分の方が大きい。
「エヌ、ごめんね。でも、一緒の天国に行けるからさ、記憶のない私に構ってね。」
泣きじゃくっていたエヌが鼻をすすりながら話始めた。
「ありがとう。
でも、なんで俺なんかにそんなにやってくれるんだよ。
どうしてだよ。
俺だって死神始めてからこんなに楽しい生活になったのは奈央が初めてだった。
だから、すごい感謝してるし、それはもう言葉に言い表せられないくらいだよ。
俺からだって、なにかなにか返させてくれよ。」
「エヌ。
私はさ、エヌから数えられないぐらいの思い出を貰った。」
「でも、それはなくなるんだよ?」
「それ以上にエヌが隣にいてくれた。
それだけでいい。
それだけで。」
私は気持ちを伝えることにした。
「私さ、エヌのこと、、、、」
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