十五話 来る日々
どこだよ、ここ。
マジで死んだのか?
俺は。
くっそ、まだ、奈央に伝えたいことあるのに。
やり残したことめっちゃあるのによ。
なんで事故って死んじまったんだよ、俺。
ふざけんなよ。もう。。。
突然、目の前に人が現れた。
え、人?
俺、まだ死んでなかったのか?
「こんにちは。内藤鷹夜様。
私、内藤様の淀での行動管理係になりました死神HZと申します。」
死神?
淀?
何の話だよ?さっぱり分かんねえな。
「何なんですか?淀って言うのは?
第一、俺は死んだんですか?」
動揺のあまりか、あたりが強くなってしまった。
「そうですね、内藤様はお亡くなりになってしまいました。
ですが、私たち死神が内藤様の死に関与しているということは一切ございません。」
俺の心読んでんのかってぐらい先を見通した発言だな。
すげえな。
「淀とは、天国AからZまたは地獄AからZを決めている際の場所です。
いわば、待機所ですね。恐らく天国や地獄が複数個あるというように教わって育ってきていないでしょうが、実際は一つずつに故人が集まりすぎると、問題が発生してしまうので、分割をするような制度となっております。
その分担を決めるのに特段大きな理由はありませんが、少々時間がかかってしまうものなので、ご了承ください。」
なんか複雑な世界なんだな、天国も地獄も、淀も。
じゃあ、死神って何してんだろーな?
「死神って俺のイメージだと、人を死に誘うみたいなのなんですけど、何やってるんですか?」
「いえ、そのようなことはございません。
死神と名乗っておりますが、内藤様が想定しているような邪悪な存在というわけではございません。
死後の世界『淀』を司る神の下僕の略称と言ったところですかね。
実質、死神っていう大層な名前である必要ないんですけどね。
弔神がそうするって言ってるんで仕方ないんですよ」
突然ため口になった。
ただ、さっきまでは固い喋り方だったから気が少しばかし軽くなった気がする。
というか、弔神ってだれだ?
「えっとー、弔神っていうのは何なんですかね?」
「まあ、この淀とか天国、地獄を一括で管理している神?みたいなもんですかね。」
めっちゃ重労働じゃん。天国も地獄も複数個あるんだろ?
大変すぎだろ。
「死神って言うのは、弔神さんの部下みたいなものなんですよね?」
「まあ、そんなところですかね。
死神になりたい人とかは、弔神にお願い行けばなれますよ。
なります?ちょうどなりたいって言ってる人いるんで、同じタイミングで申請した方が楽なんで。」
どうせ、こんなとこ来たって知ってる奴なんかいないんだから、死神でもやってみようかな。
「やります、やってみたいです。」
暇つぶしみたいな感覚で言ったけど、正直奈央が来るまで死神やろうかな。
「じゃあ、明日、もう一人と一緒に弔神のところに行こうか。」
「はい。お願いします。」
「うん、じゃあ、今日は、1969号室で過ごしてね。
ついてきて」
そのままついていくと、淀の中のホテルのようなところの一室、1969号室に案内された。
内装はまるで高級ホテルと言ったところか。
まあ、高級ホテル行ったことないんだけど。
「では、また明日、来ますので体をお安めになって下さい。」
そう言い残し、部屋から出て行ったHZさん。
死神やりたいっていう人いるんだな。
なんか俺も普通に死神やります、とか言っちゃったけど、気が動転しすぎてるかもな。
なにせ全然死んだって言う実感わかないしな。
ここが本当に存在する世界なのか、走馬灯でも見ているかさえ、よくわかんない。
奈央にまた、会えるかな。。。。
自分の中でネガティブな考えが浮かんできてしまったから、急いで、もみ消す。
疲れたのかな、
溜息と涙が溢れてきた。
まだ、大会来ていないじゃないか、
あの大会にすべてを賭けてきたのに。
世界は不条理すぎるだろ。
なんで俺が?俺が。俺が。。。
奈央に好きだって言いたかった。
もっともっと話していたかった。
どんなしょうもない、他愛もないような話でだってよかったから。
ずっとずっと話してたかった。
くっそ。
くっそ。
くっっそ。
っっっあ”あ”あ”あ”
俺の中の何かが叫んでいた。
翌日、朝っぱらから、HZさんが訪ねてきた。
いくらなんでも早くないか、
そう思ったが、もう一人死神希望者がいるから連れてくると言っていた気がして、待たせちゃ悪いと急いで用意する。
即刻用意を終わらせて、部屋のドアを開けると、そこにいたのはHZさんと見知らぬ女性。
俺は、とりあえず謝罪と挨拶をしてみる。
「遅れてすみません。
自分は、内藤鷹夜って言います。
初めまして。」
「こんにちは。
私は、六反美鈴と言います。
同僚になると思いますので、お願いします。」
「こちらこそお願いします。」
意外と礼儀正しい人だった。
イメージではなんかタメ口から入るタイプかなと思ってた。
何の話をすればいいのかわからなくて、気まずくなっているとHZさんが口を開いた。
「あ、そうだ。私、別の仕事あったから行かないといけない。
二人で行けるよね?
美鈴ちゃんのほうに地図送っとくからよろしくね。
じゃ。」
そう言って、どこぞに消えていったHZさん。
鬼気まずいんだけど。。。。
「とりあえず、行きますかね」
そう重い雰囲気を割って入ってくれたのは六反さんだった。
涼しい風が俺を勇気づけてくれた気がする。
今回の章はエヌ、内藤視点での作品となっております。
六反さんは、もうみなさん知っているキャラクターですので、答え合わせは次の話で!




