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コ・イ・ノ・カ・タ・ス・ミ  作者: わしこ
クローズユアアイズ
27/48

クローズユアアイズ 4


『おい嘘だろ、あっちから誘ってきたのか』


 電話先で、驚きの声を宇奈月新平が上げていた。

 かなり驚いた様子であったが、その声に嫉妬の色と、期待感たっぷりのものがない交ぜになっていて、どうにも荒れた印象を受ける。


『それで、どうなったんだ』

「二十三日に行くらしい。イヴはどうしても家にいなさいと言われたんだそうだ。その、母親に」


 文太郎は言った。


『だったら、二十三日は空けていればいいか?』

「待て、早まるな」


 足をせわしなく動かして文太郎は言葉をさえぎった。


『何だよ』

「俺が同伴するってことで、二十四日でもいいことになった。だからルミエルにはイヴに行くよ。というかお前も、来るのか?」

『莫迦を言うなよ。俺だって行きたいぞ。いや行かせてくれよ』


 話が弾んでいた。


 運命共同体というべきか、文太郎と同じく女気にまったく縁の無い新平である。そういう意味ではいつも莫迦話をする度に、だれそれとかれこれが付き合って、みたいな話をよくして、羨ましがっていた。


 文太郎はそれほどでもなかったのだが、宇奈月新平はチャンスの到来する日をまだか、まだかと楽しみにしていた節がある。といっても彼も見た目は勉学の徒を装った青年であっても、中身が凡庸で、とてもナンパの出来る男ではない。


 何より大野市は田舎だ。ナンパなどしていたらすぐに知れて、親に大目玉という具合だろう。それが村社会的な傾向を色濃く残す田舎の風潮で、自然と、その種の行為には手が伸びないのが現状であった。


「いつまで電話してるの」


 文太郎の母が、叱った。

 いつまでも電気ストーブに擦り寄ってはなれず、受話器を耳に押し付けて談笑している息子に、とうとう頭にきている様子だった。


「話があるなら、自分の携帯を使うか会って話なさい。電話代だって莫迦にならないんだから」


 プッシュホンの、形式が古い電話を指して、母が言うのである。


「すまん新平、母さんが怒っているから続きはまた次に」

『おう。俺も電池が切れそうだ』

「じゃ、そういうことで」


 またな、と言って電話を切った。

 自分の携帯電話はポケットの中に仕舞いこんでいたが、そっちは使わずに過すつもりだった。

 アルバイトもしていない文太郎である。イヴのルミエルを考えると、お金はとっておきたい。そう思うからである、携帯電話の支払いを見て仰天しながら、泣く泣く母親に金をせびるのでは心苦しい。

 お年玉をもうもらえる年だとも思っていなかったので、その辺の節約勘定がいっぱしに働き出していた。思いつつ、来年からはアルバイトをしなければ、とも考えている。


「電話、切ったよ」


 母にそう告げる文太郎。


「何をそんなに、長話する必要があったのですか」


 お小言を言い出すのではないかと、文太郎は勘ぐった。その前に出鼻をくじいてしまわねばと、少しばかり考えをめぐらす。


「伊東のおばさんに、小夜をルミエルに連れて行ってくれと、言われたんだ」

「まぁデートじゃない」


 少し意外な反応を示して、母は驚いてみせた。すぐにも冷やかしの笑みを浮かべる。


「よかったじゃない。でもそれと、長電話と何が繋がるのかしら」


 そこですよ、と心の中で文太郎が言う。


「折角だから、新平も誘ったんだ。多い方が楽しいだろ」

「宇奈月君も」

「そう。小夜の友達も来るから、俺一人で世話は大変だから」


 よく言うわ。と文太郎の母が笑って見せた。


「文もまだまだ子供でしょうが。文句があったら母さん達を早く楽にさせて、それから大人の顔をしなさい」


 一本取られてしまったと悟った文太郎は、形勢が悪くなった事を無念がりながら、さっさと自室の二階へ上った。

 あまり居間の近くに長居していると、これより先、まだ何かしら言われるかもしれない。そうなれば最悪で、母から、次は祖母からとたまったものではない。

 そういった次第で、勉強するといって二階に上って逃亡した。


 二階に上ると、小川の見える窓に目をやって、ぼうっと眺めていた。

 昼下がりだった。

 その日は土曜日で、学校から早く帰宅した隣家の小夜が、愛用の自転車を押しながら納屋に向かっているのが見える。

 丸裸に枯れてしまった庭木のそばに自転車を一旦停めて、納屋の引き戸を力いっぱいに開け広げた。そして自転車の側に戻る。


 するとどうだろう。木枯らしひと吹きという具合に風が巻き上がって、落ち葉を散らし上げる。

 そのついでにという具合で、小夜のセイラー服とスカートに襲った。


 お尻の側がふわりとするから、あわてて押さえた小夜だったが、今度は前側が浮き手をやると、お尻がおざなりになる。

 風の悪戯に文太郎の鼻の下が、少し伸びた。


「お……」


 眺めていると、どういう訳かその視線を察したらしい小夜がはっとして、文太郎の家の二階窓、つまりは彼の部屋を凝視したのだ。

 目が合った。


――しまった。


 小夜が見られた、という顔を作って頬を朱に染め上げると、ぷいと顔をそむけて、納屋に急ぎ自転車を仕舞いこむ。

 文太郎も、そそくさと視線を逸らした。


 薄い桃色のパンツだった。


ももの( ´∀` )ぱんつ

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