番外編2 後半 団長と副団長、ルークの重愛に巻き込まれる
後半です(^^)
「流石にこれはわかるな」
「ルークの笑ってる顔初めて見た」
途端にルークが私を抱きしめた。
「ちょっと、な、何!? こんな、人前で……!」
「人に見せられない」
「な!? 私、人様に見せられない顔してるって言いたいの!?」
真っ赤になって見上げると、ルークが深いため息をついた。
「違う」
「じゃあどういうことよ?」
「顔を隠して」
そう言って、ぎゅうぎゅう騎士服へ押し付けられる。
「今のミレナの顔は外出禁止」
「んむっ! ん〜〜っ!!」
顔を押さえつけられ、声も出せない。
バシバシ叩いてもびくともしない。
「おい」
団長さんが呆れた声を出す。
「ウチの奥さんの顔見ないでください」
冷たい声でルークが団長さんを睨んだ。
「束縛が過ぎると逃げられるぞ?」
「地の果てまで追いかけるので問題ありません」
「問題だらけだろ……」
副団長が呆れている。
「ん、もぉ〜!」
なんとか腕の中から顔を出す。
「あんたねぇ! 私を何回窒息させたら気が済むわけ!?」
抱きしめる力が強すぎて、本当に息ができなかった。
「いや……」
ルークが口を開き、そのまま視線が少し下――私の唇へ固定された。
「いや、そうかも。窒息……させたいかも」
そして近づいてくる顔。
視線は完全に唇へ向いたまま。
これは、まずい。
一歩下がる。
一歩近づかれる。
まずいまずい。
慌てて団長さんたちを見ると、二人とも妙に楽しそうな顔でこちらを見ていた。
「すごいなぁ。ルーク、こっち完全無視だな」
「勤務中なんだがな……」
そう。
ここは職場。
騎士団本部。
このまま醜態を晒すわけには――
と思った瞬間、腰を引き寄せられた。
ぐっと顔が近づく。
ぱぁん!!!
ルークの顔が横を向いた。
執務室に乾いた音が響く。
数秒の沈黙。
そしてルークの頬に、綺麗な手形が浮かび上がった。
しまった。
また頬を叩いてしまった。
先日、平手の跡をくっきり残したまま出仕したルークを見て、私は散々恥ずかしい思いをしたのだ。
だから今回は肘鉄に変更していたのに。
結局、意味がなかった。
「……なんで」
「それはこっちの台詞よ!」
「可愛い顔で誘ってただろ?」
「さ、誘ってなんかないわよ!!」
「そうかな?」
ルークがそっと私の頬へ触れる。
親指が唇をふにふに弄んだ。
「潤んだ瞳、美味しそうな唇。今すぐ食べたい」
「この、万年発情期!!」
ぱぁん!!!
再び乾いた音が執務室へ響き渡った。
◇◇◇
「本当に申し訳ございません」
ソファへ座ったまま、私は深々と頭を下げた。
ルーク?
ルークはソファの下で正座だ。
その様子に副団長の笑いが止まらない。
「いや、大丈夫です。むしろ面白い……ごほっ、いいものを見せていただきました」
団長さん、今言い直した意味ありました?
「ルークは入団当初から有能な部下でしたが、何を考えているのかさっぱりわからなくて、正直、苦手意識を持つ者も少なくない」
「え……」
不安そうな顔になったのか、団長さんが穏やかに笑った。
「大丈夫ですよ。ルークは口に出さないだけで、よく気が利く。冷たいようで案外面倒見もいい」
「そうそう。表情が壊滅的なだけで、仕事はめちゃくちゃできるから、ミレナさんは安心してね!」
じんわり胸が温かくなる。
団長さんも副団長さんも、ちゃんとルークを見てくれている。
良かった。
「ルークはこちらでちゃんとやれてるんですね。安心しました」
いつの間にか隣へ座っていたルークが、私の手を握った。
「安心した?」
「うん。連れてきてくれてありがとう」
ふっとルークの目が細められる。
うん。
来て良かった。
「ミレナさん、どうかこいつを見捨てないでやってくれ。ルークをここまで理解できて、制御できるのはミレナさんしかいない」
「はい!」
まだ奥さんって実感は薄いけれど。
こうしてルークの上司たちに認めてもらえるのは嬉しかった。
しかもこんな偉い人たちが、平民出身のルークをちゃんと見て、大事にしてくれている。
それが嬉しい。
「愛想は死んでるがな」
「副団長」
「事実だろ?」
ルークは無表情のまま紅茶を飲んでいた。
反論しないのか。
私は勢いよく頭を下げる。
「主人のことで意思疎通できないとか、何か困ったことがあれば、私がいつでも協力します! これからもルークのことをよろしくお願いします!」
「頼もしい!!」
「助かる!!」
なぜか団長さんと副団長さんに感動された。
すると隣でルークがぽつりと呟く。
「別に困らせてない」
「困らせてるのよ!!」
反射で肘鉄を入れた。
ゴスッ。
団長執務室に、副団長の爆笑が響き渡った。
ドタバタ職場訪問でした(^^)
明日も18時に更新します!
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