06 新婚初夜、理性と欲望が大乱闘を始める
最終話です(^^)
「こっちが聞きたいわよ!!」
私の叫びが部屋中に響いた。
「息が…息が全くできなかったわ」
「私を殺す気なの……!?」と、ゼーハー肩で息をする。
対するルークは、叩かれた頬を押さえたまま固まっていた。
数秒後。
すっと目が細められる。
「……ふーん」
「な、なによ」
「息、できなかったのか」
「できるわけないでしょ!?」
するとルークの口元が、ゆっくり持ち上がった。
うわ、嫌な予感。
「次は、ちゃんと息できるようにする」
「次!?」
逃げる前に捕まった。
「待っ、ルー――」
再び唇が重なる。
今度は本当にゆっくりだった。
呼吸を奪われないように。
唇を、甘やかすみたいに。
「……っ」
ちゃんと息もできる。
というか、なんか、すごく、
気持ちいい。
――と思った次の瞬間。
「んっ!?!?」
ぺろ、と舌先を舐められた。
頭が真っ白になる。
ぱぁん!!!!
「……またか」
「またかじゃない!!!」
ルークは叩かれた頬を押さえながら、少し肩を落とした。
「手加減は?」
「なかった……かも」
「そうか」
待って。
やめて。
しょぼくれた大型犬みたいな空気出すのやめて。
さっきまでの余裕どこ行ったの。
「いや違うの! 嫌だったわけじゃなくて!」
びっくりしたというか。
「嫌じゃないのか」
「そういう確認を今する!?」
「重要だろ」
「そ、それはそうだけど……!」
顔が熱い。
さっきのキスを思い出してしまった。
気持ちよかった。
驚くほど。
もっとこう、勢い任せかと思っていたのに。
大事に触れるみたいなキスだった。
……いや待って。
なんで分析してるの私。
「ミレナ」
「な、なによ」
「もう一回していいか」
「何言ってるの!?」
思わずクッションを投げつけた。
ルークが片手で受け止める。
騎士、強い。
「嫌なのか?」
「嫌、じゃないけど……心の準備が!!」
「俺は何度でもしたいし、ずっとしていたい」
「そんなこと言って、恥ずかしくないの?」
「ミレナとキスできるなら、全く」
「羞恥心どこに置いてきたの!?」
「一年で捨てた」
「急いで拾ってきて!」
ルークは静かにこちらを見る。
その目が、妙に熱っぽい。
無表情なのにわかる。
今この男、かなり危険だ。
「……ミレナ」
「なによ」
「お前、無防備すぎる」
「は?」
「自覚ないのか」
「だから何が!?」
するとルークは、深く息を吐いた。
「好きな女が、赤い顔で潤んだ目して同じ部屋にいる」
「っ……!」
「俺の理性が死ぬ」
「生きて!!」
ベッドの端に逃げる。
するとルークが近づいてくる。
「来ないで!」
「無理だ」
「なんで!?」
「好きだから」
「免罪符みたいに使うな!」
じりじり距離を詰められる。
待って。
待って待って。
この男、体格が良すぎるのだ。
騎士になってからさらに鍛えられたせいで、迫られると圧がすごい。
なのに顔は真顔。
余計怖い。
「ルーク、ちょっと落ち着きましょう!?」
「落ち着いてる」
「嘘つけぇ!!」
だって耳赤いし!
呼吸ちょっと荒いし!
目が据わってるし!
「……可愛い」
「ひぃっ」
低い声で言われて背筋が跳ねた。
駄目だ。
色気がある。
昔の無愛想な幼馴染どこ行ったの。
「本当に王都で何学んできたの……」
「剣術と礼儀作法」
「嘘よ絶対!!」
ルークは私の隣に腰を下ろした。
ベッドが沈む。
近い。
近すぎる。
逃げようとした瞬間、腰を引き寄せられた。
「ひゃっ!?」
「逃げるな」
「無理無理無理!!」
「何が無理だ」
「心臓!!」
本当に破裂しそう。
だってルークの匂いがする。
体温が近い。
腕の中にいる。
昔、一緒に昼寝したことはあった。
でもあの頃とは全部違う。
男の人だ。
ちゃんと。
意識した瞬間、ぶわっと顔が熱くなる。
「赤い」
「うるさい!」
「どこまで赤くなるんだ」
「観察するな!!」
ルークはじっと私を見つめたあと、不意に額へ口づけた。
次に頬。
瞼。
耳。
「ちょ、待っ、ぁ……!」
くすぐったい。
恥ずかしい。
でも嫌じゃない。
頭がおかしくなりそう。
「……ミレナ」
名前を呼ばれる。
甘く。
熱っぽく。
昔と同じ声なのに、全然違って聞こえた。
「好きだ」
「……っ」
「ずっと」
その言葉が、胸の奥へじんわり沁み込んでいく。
一年。
返事が来なくて。
嫌われたと思って。
諦めようとして。
それでも好きだった。
その全部が報われていくみたいで。
涙が出そうになった。
「……ばか」
「知ってる」
「急にこんなの反則……」
「もっと早く言うべきだった」
「ほんとよ……」
ルークの指が、そっと涙を拭う。
優しい。
優しすぎる。
だから油断した。
次の瞬間、胸を揉まれるまでは。
「っっっっ!!?」
反射だった。
ぱぁん!!!
本日三度目の綺麗な音が響く。
ルークの顔が横を向いた。
数秒の沈黙。
「……またか」
「またかじゃない!!」
「流れが良かっただろ」
「良くない!!」
「夫婦だぞ」
「便利な言葉みたいに使うな!!」
私は真っ赤になりながら枕を抱きしめた。
ルークは頬を押さえ、少しだけ考え込む。
「……難しいな」
「何がよ!」
「どこまで許されるのか」
「全部段階踏め!!」
「なるほど」
真面目な顔で頷かないで。
本当に学習しそうで怖い。
するとルークは、ふっと息を吐いてベッドから降りた。
「今日はやめておく」
「へ?」
「これ以上は理性が危ない」
その言葉に、どくんと胸が跳ねた。
ルークは私を見下ろしたまま、低く笑う。
珍しく。
本当に楽しそうに。
「……でもそのうち全部もらう」
「っ〜〜〜!!」
「覚悟しろ、奥さん」
「その呼び方禁止ぃ!!」
私は真っ赤になりながら枕を投げた。
ルークは避けなかった。
顔面に当たった。
でも無表情のまま受け止めて、ぽつりと呟く。
「……可愛い」
「もう寝なさい!!」
――失恋したと思ったのに。
気づけば結婚して、初夜を迎えているなんて。
……人生、本当に何が起こるかわからない。
こうして。
私たちの騒がしすぎる新婚初夜は、更けていった。
2人のやりとりが面白くてあっという間に書いてしまいました。
この後の展開も気になるので、番外編で更新したいと思います。
番外編は明日20時アップします。
よろしければまた覗いてください(^^)
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