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失恋したので隣国へ逃げようとしたら、無表情騎士に婚姻届を突きつけられました  作者: アキラ・モーリング


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6/12

06 新婚初夜、理性と欲望が大乱闘を始める

最終話です(^^)

「こっちが聞きたいわよ!!」


 私の叫びが部屋中に響いた。


「息が…息が全くできなかったわ」


「私を殺す気なの……!?」と、ゼーハー肩で息をする。


 対するルークは、叩かれた頬を押さえたまま固まっていた。


 数秒後。


 すっと目が細められる。


「……ふーん」


「な、なによ」


「息、できなかったのか」


「できるわけないでしょ!?」


 するとルークの口元が、ゆっくり持ち上がった。


 うわ、嫌な予感。


「次は、ちゃんと息できるようにする」


「次!?」


 逃げる前に捕まった。


「待っ、ルー――」


 再び唇が重なる。


 今度は本当にゆっくりだった。


 呼吸を奪われないように。


 唇を、甘やかすみたいに。


「……っ」


 ちゃんと息もできる。


 というか、なんか、すごく、


 気持ちいい。


 ――と思った次の瞬間。


「んっ!?!?」


 ぺろ、と舌先を舐められた。


 頭が真っ白になる。


 ぱぁん!!!!


「……またか」


「またかじゃない!!!」


 ルークは叩かれた頬を押さえながら、少し肩を落とした。


「手加減は?」


「なかった……かも」


「そうか」


 待って。


 やめて。


 しょぼくれた大型犬みたいな空気出すのやめて。


 さっきまでの余裕どこ行ったの。


「いや違うの! 嫌だったわけじゃなくて!」

 

 びっくりしたというか。


「嫌じゃないのか」


「そういう確認を今する!?」


「重要だろ」


「そ、それはそうだけど……!」


 顔が熱い。


 さっきのキスを思い出してしまった。


 気持ちよかった。


 驚くほど。


 もっとこう、勢い任せかと思っていたのに。


 大事に触れるみたいなキスだった。


 ……いや待って。


 なんで分析してるの私。


「ミレナ」


「な、なによ」


「もう一回していいか」


「何言ってるの!?」


 思わずクッションを投げつけた。


 ルークが片手で受け止める。


 騎士、強い。


「嫌なのか?」


「嫌、じゃないけど……心の準備が!!」


「俺は何度でもしたいし、ずっとしていたい」


「そんなこと言って、恥ずかしくないの?」


「ミレナとキスできるなら、全く」


「羞恥心どこに置いてきたの!?」


「一年で捨てた」


「急いで拾ってきて!」


 ルークは静かにこちらを見る。


 その目が、妙に熱っぽい。


 無表情なのにわかる。


 今この男、かなり危険だ。


「……ミレナ」


「なによ」


「お前、無防備すぎる」


「は?」


「自覚ないのか」


「だから何が!?」


 するとルークは、深く息を吐いた。


「好きな女が、赤い顔で潤んだ目して同じ部屋にいる」


「っ……!」


「俺の理性が死ぬ」


「生きて!!」


 ベッドの端に逃げる。


 するとルークが近づいてくる。


「来ないで!」


「無理だ」


「なんで!?」


「好きだから」


「免罪符みたいに使うな!」


 じりじり距離を詰められる。


 待って。


 待って待って。


 この男、体格が良すぎるのだ。


 騎士になってからさらに鍛えられたせいで、迫られると圧がすごい。


 なのに顔は真顔。


 余計怖い。


「ルーク、ちょっと落ち着きましょう!?」


「落ち着いてる」


「嘘つけぇ!!」


 だって耳赤いし!


 呼吸ちょっと荒いし!


 目が据わってるし!


「……可愛い」


「ひぃっ」


 低い声で言われて背筋が跳ねた。


 駄目だ。


 色気がある。


 昔の無愛想な幼馴染どこ行ったの。


「本当に王都で何学んできたの……」


「剣術と礼儀作法」


「嘘よ絶対!!」


 ルークは私の隣に腰を下ろした。


 ベッドが沈む。


 近い。


 近すぎる。


 逃げようとした瞬間、腰を引き寄せられた。


「ひゃっ!?」


「逃げるな」


「無理無理無理!!」


「何が無理だ」


「心臓!!」


 本当に破裂しそう。


 だってルークの匂いがする。


 体温が近い。


 腕の中にいる。


 昔、一緒に昼寝したことはあった。


 でもあの頃とは全部違う。


 男の人だ。


 ちゃんと。


 意識した瞬間、ぶわっと顔が熱くなる。


「赤い」


「うるさい!」


「どこまで赤くなるんだ」


「観察するな!!」


 ルークはじっと私を見つめたあと、不意に額へ口づけた。


 次に頬。


 瞼。


 耳。


「ちょ、待っ、ぁ……!」


 くすぐったい。


 恥ずかしい。


 でも嫌じゃない。


 頭がおかしくなりそう。


「……ミレナ」


 名前を呼ばれる。


 甘く。


 熱っぽく。


 昔と同じ声なのに、全然違って聞こえた。


「好きだ」


「……っ」


「ずっと」


 その言葉が、胸の奥へじんわり沁み込んでいく。


 一年。


 返事が来なくて。


 嫌われたと思って。


 諦めようとして。


 それでも好きだった。


 その全部が報われていくみたいで。


 涙が出そうになった。


「……ばか」


「知ってる」


「急にこんなの反則……」


「もっと早く言うべきだった」


「ほんとよ……」


 ルークの指が、そっと涙を拭う。


 優しい。


 優しすぎる。


 だから油断した。


 次の瞬間、胸を揉まれるまでは。


「っっっっ!!?」


 反射だった。


 ぱぁん!!!


 本日三度目の綺麗な音が響く。


 ルークの顔が横を向いた。


 数秒の沈黙。


「……またか」


「またかじゃない!!」


「流れが良かっただろ」


「良くない!!」


「夫婦だぞ」


「便利な言葉みたいに使うな!!」


 私は真っ赤になりながら枕を抱きしめた。


 ルークは頬を押さえ、少しだけ考え込む。


「……難しいな」


「何がよ!」


「どこまで許されるのか」


「全部段階踏め!!」


「なるほど」


 真面目な顔で頷かないで。


 本当に学習しそうで怖い。


 するとルークは、ふっと息を吐いてベッドから降りた。


「今日はやめておく」


「へ?」


「これ以上は理性が危ない」


 その言葉に、どくんと胸が跳ねた。


 ルークは私を見下ろしたまま、低く笑う。


 珍しく。


 本当に楽しそうに。


「……でもそのうち全部もらう」


「っ〜〜〜!!」


「覚悟しろ、奥さん」


「その呼び方禁止ぃ!!」


 私は真っ赤になりながら枕を投げた。


 ルークは避けなかった。


 顔面に当たった。


 でも無表情のまま受け止めて、ぽつりと呟く。


「……可愛い」


「もう寝なさい!!」


 ――失恋したと思ったのに。


 気づけば結婚して、初夜を迎えているなんて。


 ……人生、本当に何が起こるかわからない。


 こうして。


 私たちの騒がしすぎる新婚初夜は、更けていった。

2人のやりとりが面白くてあっという間に書いてしまいました。

この後の展開も気になるので、番外編で更新したいと思います。

番外編は明日20時アップします。

よろしければまた覗いてください(^^)


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