小話 ダンス
今日も昨日も一昨日も、ダリウス様はお忙しいのか、なかなかお部屋に戻っていらっしゃりません。おヒマです。
らんらんら〜
くるくる~
ふんふんふ〜ん
月明かりの下、たったひとり、ダリウス様のお部屋に囲まれた小さな中庭で踊ります。
わわ、なんだか幻想的ですね。
わたくし、妖精さんになった気分です。今なら飛べるかもしれません。
あ、そうです。
るんるんる〜
バタバタバタ
ららららら〜
バタバタバタ
「ルル……ものすごく知りたくないんだが、何してる?」
あ、ダリウス様です。お仕事が終わったのですね!
寝室につながる扉を片手で押さえて、変なお顔をしています。
わたくしは妖精さんらしく、優しく微笑みました。
「飛ぶためには助走が必要なのです。ただ踊っているだけでは飛べないのですよ?」
綺麗な水鳥さんだって、バタバタバタお水の中で足を動かしていると聞きますしね。
あらら? ダリウス様のお顔が引きつりました。なぜでしょう。
「……大丈夫だ今のお前は絶対頭が飛んでる」
ほら来い。と手招きされ、二人で寝室に入ります。
運動したせいか、ベッドに横になると、すぐに眠気におそわれました。妖精さんも疲れるお仕事ですね。
眠りに落ちる寸前、ダリウス様の声が聞こえたような気がしました。
「今日も遅くなって、悪かった」
いいえ。おやすみなさい、ダリウス様。