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悪役令嬢は賢妃を目指す  作者: りのみ
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悪役令嬢の盗み見。

私は何かを企んでいるような微笑みを浮かべ、ヴァンディミオン殿下に声をかける。


「ヴァンディミオン殿下、大臣も皇帝陛下のお言葉に動揺しているのでしょう。少し考えるお時間を差し上げたらいかがですか?」


ちらりと大臣をみながら言うと、青かった顔がどす黒く変化して口をぱくぱくとしている。


「ねぇ大臣、皇帝陛下のお言葉に意味がおわかりにならないわけありませんわよねぇ?ヴァンディミオン殿下はカロリーヌ様たちからもお話は伺っていて、あとはあなたのお話を聞くだけなの。後宮には見張りがいて勝手な行動はできないように制限もされているからカロリーヌ様がご自分を害することもできないわ。少し部屋を出ていますから、その間にヴァンディミオン殿下にお話すべきことを整理するといいわ。」


カロリーヌ様は見張られていることを教えると、がっくりと肩を落とした。

ヴァンディミオン殿下と退出し、すぐに隣の部屋に案内される。

騎士が一人、部屋の壁に掛けられている絵画をずらすと小さな穴があり隣の部屋が覗けて声も聞こえる。

ヴァンディミオン殿下と私は静かに物音をたてないようにその穴から大臣の様子をみつめていると、大臣は頭をかきむしり、部屋の中をうろうろとしだした。


「ここでヴァンディミオン殿下が出てくるとは・・・。そもそもなぜ皇太子宮の毒入りの菓子を送りつけてこんなに早く発覚するのだ?皇后の名前で贈ったら普通に考えればすぐには食べないだろう。そう思ったのに・・・。役たたずめ・・・っ!いや、カロリーヌが女官なんぞに弱みを握られたのが一番悪い。今まで散々皇后に負けたくないなぞと言って贅沢な暮らしをさせてやったのに!全てをカロリーヌの責任にするか?いや、どこまでヴァンディミオン殿下が証拠をつかんでいるかが問題だ・・・。それにしてもセシリア・エヴァンジェリスタとか言ったか、あのイストール国の小娘!何を企んでいるんだ?私を一人にして自害でも勧めているのか?皇后の今までの行動が表沙汰になると不味いから私に全てを押し付ける気か?私が皇后の後釜に娘を押し込もうとしたとでも公表するつもりか?くそっ!皇帝陛下さえあの時に頷いて金を出してくれていればこんなことには・・・。皇后の行動を制することができないのだからおとなしく金を出していればよかったものを・・・。カロリーヌの恩知らずめ・・・。」


自爆したから一人にしたら色々と話してくれるかと思って退出したけれど、こんなに思いっきり本音を吐露してくれるなんて・・・。ある意味感動するわ。

まだぶつぶつと独り言を言っている大臣をヴァンディミオン殿下と見つめていると、単純にジュリウス王子が軽々しくお菓子に手を出したことが、大臣の計画を壊したらしい。


「私の財産にも限りがあるというのに・・・!このランスロット帝国の貴族という肩書きを売込み亡命するつもりだったのに・・・。カロリーヌがこんなに早く失敗するとは・・・。」


つまり、ヴァンディミオン殿下のせいで財産が乏しくなったために娘を囮にしてこの帝国から逃げるだけだったというのかしら?


ヴァンディミオン殿下と顔を見合わせお互いにため息をつき、絵画をそっと元に戻し二人でソファーに座る。


「つまり、大臣は私のせいで財政が厳しくなったことを恨んで、金を使うだけの娘を囮にして他国に逃げようとしただけのことか・・・?」


げんなりとした顔のヴァンディミオン殿下をみていると、私もげんなりとしてくる。


「そのようですね。こんなに早くことが露見するとは思っていなかったのでしょう。皇太子宮に皇后陛下から食べ物が贈られたらどういたしますか?」


「決まっている。口に入れる前に徹底的に検査をする。」


間髪いれずに答えが返ってきた。


「大臣もそう思っていたようですね・・・。」


「あぁ、少しこのランスロット帝国のことに詳しい者なら常識だろう。」


何ともいえない空気になる。


「それをジュリウス王子が口にしてしまったために大臣が逃げる時間がなかったのですね・・・。」


ヴァンディミオン殿下は無表情になり何にも答えない。

私もこれ以上何も言えないが・・・。


(本当に皇后陛下からの贈り物でなくて良かったとは言えないわ・・・。)


そんなことを言ってもヴァンディミオン殿下の慰めにならない・・・っ!


「・・・では、ヴァンディミオン殿下。これからどういたしますか?」


気を取り直してヴァンディミオン殿下に今後のことを聞いてみる。


「そうだな。ここで聞いたことは大臣の話の後に突きつけたほうがいいだろう。メアリと言ったか、あの女官の目が覚めてカロリーヌの弱みも突きつけてやれれば良かったのだが、あの傷ではな。大臣の自供を聞いた後に皇帝陛下の御前で三人、もしくは四人の証言を合わせてみればいいだろう。全員集まったら父娘で罪の擦り付けをしそうだがな・・・。」


そう遠い目をして答えてくれたが


「その場に皇后陛下はお呼びいたしませんよね?」


私の言葉に覚醒したかのように


「全員死刑にしろと騒がれても面倒だ!」


と拒絶されてしまう。


ジュリウス王子のことはもちろん心配だけれど、ここまで自分の母に蔑ろにされていると周知されているヴァンディミオン殿下の気持ちは複雑だろう。

そして皇后陛下は、よくジュリウス王子にこれまでヴァンディミオン殿下に対する気持ちを知られることがなかったと私は変な意味で感心する。

一人の騎士を後宮のカロリーヌ様の部屋にいるメアリの様子を見に行かせることにして、もし話すことができるようであれば、証拠の隠し場所を聞き出すよう、でも決して無理なことはしないように注意した。


そして、ヴァンディミオン殿下に大臣の尋問をお願いして私は後ろに控えることにした。

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― 新着の感想 ―
[一言]  久々にとても良かったのですが、作者様の家族がが2017年にインフルエンザ。。。  今は2020年も末。。。  作者様がご家族を含め快癒し、続きが読めたら良いな。。。
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