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悪役令嬢は賢妃を目指す  作者: りのみ
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悪役令嬢の報告。

お菓子を持って戻ってきたメルディナに、ジュリウス王子が後宮を抜け出してヴァンディミオン殿下と話したいと言ってこちらに来たことを言うと驚かれた。

そして、手紙に書いて知らせるという私をせっついて、ヴァンディミオン殿下のいる執務室に向かわされた。


「というわけで、お手紙をお書きしてジュリウス王子のことをお知らせしようと思っているのだけれど、部屋に戻るわ。」


「いえ、直接執務室におうかがいしてお知らせした方がよろしいかと思います。」


「え?お忙しいでしょうから・・・」


「直接お話すべきです。参りましょう。」


一歩も引かないメルディナは、手強く私は逆らえなかった・・・。


執務室に着き昨日から様子のおかしかった私のことを慣れない帝国での気苦労と思われたらしく、ヴァンディミオン殿下に労わられたのが本当のことを言えるはずもなく何とかごまかした。

そして、皇太子宮に後宮を抜け出してジュリウス王子が訪れたことを話すと、一緒にいたルシフェルトは苦い顔をしてヴァンディミオン殿下は疲れたようにため息をついた。


「ジュリウス王子がヴァンディミオン殿下を兄として慕っているのは本当なんですよ。」


ルシフェルトがヴァンディミオン殿下と目配せしてから話し出した。


「皇后陛下は何と言うか・・・、ジュリウス王子には内心を見せずにヴァンディミオン殿下のことを第一王子、今では皇太子だからお忙しい身の上なのだと言って関わらせないようにしていたので、ジュリウス王子はヴァンディミオン殿下に対して兄として色々と理想がおありのようで・・・。」


歯切れ悪く頭をかきながら話すルシフェルトをみてヴァンディミオン殿下が


「やはり私から話そう。セシリア、ジュリウスをみて何か思わなかったか?」


聞いてきたので正直に思ったことを言う。


「そうですね・・。年齢の割には幼い感じで他者と話すのに不慣れなご様子でした。あと母である皇后陛下のいうことは絶対と思っていても子供の我侭のような感じで僕はこうしたいのに、という気持ちもおありのように感じました。」


はっきり言い過ぎたかしら?


「私はこの帝国にいなかったから人づてに聞いた話なのだが、皇后はジュリウスを幼い時から溺愛し手元から離さなかったらしい。だからジュリウスにとって母である皇后が世界なのだろう。たまに人と話す機会があっても皇后の不興を買うことを恐れ、相手がジュリウスと話すというよりも皇后と話すという状態だったらしい。他者とまともな会話をしたことがないのだな。ジュリウスについている教師も能力を伸ばすというより、できることをさせて誉めるだけのようだ。」


それって優しい虐待というのではないかしら?


「ランスロット帝国に帰国した私のことを皇后は排除したくて仕方ないのだろう。私がいなくなれば確実に次の皇太子はジュリウスだ。その考えに反してジュリウスが私に好意的に興味を持ち、会いたいと言っているのを表立って皇后は反対できずにいるんだよ。多分優しい母という立場を壊したくないのだろうな。だからやんわりと私は忙しいのだからだめだとジュリウスに言っても、納得しなくて今回のように直接来たのだろう。」


そうジュリウス王子の行動について評す。


「このままではまたいらっしゃいますね。」


ルシフェルトがうんざりとした顔で言い出した。


「そうだな。多分セシリアに伝えたのに、と思いどおりにならなければまた来るな。」


皇后陛下が知ったら、ジュリウス王子の行動を諌めるよりもこちらに矛先がきそう・・・。


「そして帝国の貴族は皇太子にジュリウスがなることを反対している。」


いきなり言い出された。


「私に何かあったら貴族たちは皇后を疑うだろう。本人もそれをよく知っているので直接危害を与えてくることはないと思う。そしてジュリウスが皇太子になったら皇后の思い通りの人形にしかならないと危機感を抱いている貴族たちは私の味方だから、今現在のバランスは保たれている。そこで強硬手段を皇后がとるとは思えないが、ジュリウスが絡んでくると正直どんな行動を起こすか予測がつかない。」


ヴァンディミオン殿下が難しい顔をする。


「ジュリウス王子とお話するというのはそんなに難しいことですか?」


わかりきったことを聞いてしまった。

皇后陛下の存在を考えると難しいだろう。

ジュリウス王子にとっては優しい穏やかな母親としての立場を崩したくないが、ヴァンディミオン殿下とは交流させたくないだろう。


ジュリウス王子のあの幼さについては、誰も皇后陛下の不興をかいたくがないために何も言われなかった結果だろうことは理解できた。

その幼さゆえに、純粋に兄を慕っていてもジュリウス王子には皇后陛下がもれなくついてくるということを考えると今後のお付き合いの仕方が慎重にならざるをえない。


執務室の中で皆同じことを考えているのか沈黙してしまう。

その中でヴァンディミオン殿下が


「私と会いたい、話がしたいと言っても皇后が皇太子は忙しいから、と止められているとジュリウスは言っていたのだな?」


「はい。それが不満なようです。」


「では皇帝陛下に、 <ビジュー・オブ・インペリアル> について完成品をみせるということで軽い晩餐会を提案しよう。ちょうどエメラルドを使用したネックレスが完成したからちょうどいい。その場にジュリウスを誘い私の仕事の一部をみてもらうことにしよう。」


そう言ってルシフェルトに合図をすると、ルシフェルトが隣の部屋から小箱を持ってきた。

ヴァンディミオン殿下に手渡し殿下が私をそばに呼ぶ。


「セシリアが以前言っていたエメラルドの中にある傷のことを考慮して四角いカットの物を中央にして、グリーンガーネットと小さなペリドットを配置したんだ。エメラルド以外のものは細かいカットを施してみたんだけれど、グリーンガーネットは少し高価なものだからこれは参考にするものなんだが・・・。」


そう言ってそばに寄った私に小箱を開けてみせてくれたのは中央の四角いエメラルドを囲むようにグリーンガーネットを配置して、レース状になったチェーンの所々にペリドットが輝く繊細なネックレスだった。


「これをセシリアが身につけて、ドレスも緑色のものを着れば夜会でとても似合うと思うのだけれど、どうだろう?」


そう言ってヴァンディミオン殿下が私を覗き込んでくる。

繊細な作りと輝きに魅せられていた私は反応が後れて、気がついたらネックレスを首に付けられていた。


「そっ・・・そうですわね。人の目につけば話題になりますわ。」


そう言うのが誠意一杯の私のことを微笑みながらみていたヴァンディミオン殿下の顔が近づいてくる。

そして私の胸元にキスを落とし


「とても似合っている。」


その声を聞いて私は失神した。


















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