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悪役令嬢は賢妃を目指す  作者: りのみ
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悪役令嬢の出会い。

昨夜の夕食は散々だった。

私の口にあうか聞いてくれるヴァンディミオン殿下に対して、いちいちうろたえ答える私を殿下はどう思っただろうか?

ヴァンディミオン殿下のことが気になり、ついちらちらとみてしまって目が合う私のことを不審に思われなかったか。

それらが気になりベッドに入ってもなかなか寝付けなかった・・・。

朝起こしてくれたメルディナに、やけに心配されながら鏡をみたらがっつりと隈がはっていた・・・。

なので今朝は一人で皇太子宮の自室で食事をして、中庭でお茶を飲んでいる。


(きっと、皆に心配かけてしまったわ・・・。ランスロット帝国に来て早々にこんなことになるなんて・・・。)


お茶を淹れた後メルディナが、何か食べやすいお菓子をもらってくると言っていたけれど、きっと私のことを一人にしてくれようという配慮であることはわかっている。


(ランスロット帝国でヴァンディミオン殿下と共になんて思っていたけれど、まず私がこのままじゃ駄目じゃない!)


そう思うけれども、こんな動悸が激しくなり、顔がたまに火をでるように熱くなることなんて今までなかったから私の感情は振り回されてしまう。

世の女性達は、こんな感情をどう制御しているのか知りたい・・・。

しみじみ思いながら紅茶のカップの中でティースプーンを弄んでいると、茂みから金色のものがキラキラと覗いているのが視界に入る。


(何かしら?)


疑問に思っているとぴょこぴょこと動き、男の子がでてきた。

金色に髪に碧眼、皇帝陛下が子供の頃こうだったのではないかと髣髴とさせる容姿をみて、ヴァンディミオン殿下の弟君、ジュリウス王子ではないかと思い当たる。


(なぜここに?!)


そう疑問に思い固まっていると、にこにこと邪気のない少し恥ずかしそうな笑顔でこちらに向かってくる。

そして私の側まで来ると、首をかしげた幼いしぐさで


「あなたが、ヴァンディミオン兄上の婚約者ですか?」


と聞かれる。

皇后陛下が溺愛しているというだけあって、近くでそのお顔をみると皇帝陛下そっくり。

並ばせたら数年後のビフォーアフターになる。

でも年齢はヴァンディミオン殿下の五歳下なだけなのに、言動は幼くみえる。


「そうですが・・・。セシリア・エヴァンジェリスタと申します。」


立ち上がり、ドレスの裾を摘み挨拶をする。

それなのに、ジュリウス王子はただ無邪気に笑い


「僕、ジュリウスと言います。ヴァンディミオン兄上のお嫁さんになる方なら、僕の義姉上になる方だからどうしてもお会いしたくて来てしまいました。」


そう言い頭を下げる。


(年齢や立場的にもう少しマナーができていて良いはずだけれども・・・?)


疑問に思っていると


「僕もここに座っていいですか?お話がしてみたくて・・・。」


と言われてしまう。


「えぇ、どうぞ。」


そう言い椅子を勧める。


「本当は、母上は皇太子は忙しいのだからと、こちらに来るのは禁止されているのです。」


残念そうに皇后陛下のことを言うが


(それって、思いっきりヴァンディミオン殿下に近づくなって言ってるわよねぇ?)


皇后の内心には気づいていないらしい。


「僕は、ヴァンディミオン兄上が諸外国に留学されていて、会うことができなかったからもっとお話がしてみたいだけなんです。」


と唇を少し尖らせて不満を言う。

皇后陛下がヴァンディミオン殿下を疎ましいと思っていることなんて知らないのだろう。

事実をまったく知らないジュリウス王子の話を聞いていると、何となく言動の幼さ、年相応の挨拶ができないこと、ヴァンディミオン殿下がどうして留学していたのか本当に知らない様子から、皇后陛下が溺愛し、囲い込んでいるのではないかと予想する。

でもヴァンディミオン殿下を慕っているような口ぶりから、皇后陛下はジュリウス王子には、ヴァンディミオン殿下に関する負の感情を隠していることがうかがえる。


(この状況をどうしようか?)


相槌を打ちながら、ジュリウス王子をどうしようかと悩む。

ないと思うけれど、皇后陛下がこちらにいらっしゃったら私の身の破滅のような気がする。


「ヴァンディミオン殿下とお話したいのはわかりましたわ。私とも会いたかったと言って頂けて光栄です。ところでジュリスス王子、こちらにいらっしゃることは誰かご存知なのですか?」


疑問に思ったことを聞くと少しバツの悪そうな顔で


「実は、後宮を抜け出してきてしまったのです・・・。」


それ駄目でしょう?

きっと大騒ぎになっている気がする。

へたしたら皇后陛下の敵認定に磨きがかかる。

どうしたら考えていたが、ジュリウス王子はこちらの思いなど知らずに話し出す。


「ヴァンディミオン兄上が、イストール国に行ったのは理想の女性を見つけたからだと母上が言っていました。だから僕もお会いしてみたかったのです。そう思ってこちらに来てみたらあなたが見えたのでつい声をかけてしまいました。ヴァンディミオン兄上はどんな方ですか?」


瞳を輝かせながら私に聞いてきた。


「このランスロット帝国のことをよく考え、諸外国に留学していた経験を生かしこの帝国にために尽くそうとしている方ですわ。私はヴァンディミオン殿下がイストール国に留学中数回ほどお話した程度なのですが、とても努力家だと思います。」


無難な言葉を返しながら、どうやって誰にも知られずにジュリウス王子にお引取り願おうか考える。

ジュリウス王子がこちらに来て私と話をしているなんて皇后陛下が知ったら、何を勘繰られてしまうか考えるだけで胃が痛くなりそうだ。


「僕は、この帝国から出たことがないのでわからないのですが、義姉上はイストール国と比べてこの帝国をどう思いますか?」


難しい質問をしてきた。


「まだ私はこのランスロット帝国のことをよく知りません。これから色々と学ばなければならないと思っていますの。」


「そうですか。僕にも協力できることがあればいいのですが・・・。母上は皇太子のようにならないといけないと僕によく言うのです。」


(皇太子のようにって皇后陛下は、ヴァンディミオン殿下ではなくジュリウス王子を皇太子にしたいってことよね?)


そう思ったが口には出せない。ジュリウス王子は皇后陛下の皇太子のようにという言葉を、ヴァンディミオン殿下を見習いなさいと言っているのだと解釈しているのだろう。


「ジュリウス王子、皇后陛下はあなたにとても期待しているのでしょう。抜け出して後宮の方々に心配をかけてはいけませんわ。ヴァンディミオン殿下には私がジュリウス王子が殿下に会ってお話がしたいと言っていたと伝えますから、今日はお帰りになりませんか?お時間を作っていただきゆっくりと私もジュリウス王子とお話したいと思います。」


何とかこちらに来ていることがばれないよう穏便にお帰りを願う。


「それに、今ヴァンディミオン殿下はお仕事中なので、私一人がジュリウス王子とお話したなんて殿下が知ったらずるいと思われてしまうかもしれませんし・・・。あ、こちらに来たことはヴァンディミオン殿下と私とジュリウス王子の秘密にいたしましょう?抜け出したことが理由でお会いできなくなると困りますし。ね?」


そう少し悪戯っぽく言うとジュリウス王子は納得してくれたのか


「わかりました。絶対にヴァンディミオン兄上に僕とお話する時間を作ってもらってくださいね。その時は義姉上も一緒ですよ。」


そう言ってまた来たところから帰って行った。


ジュリウス王子がこっそり抜け出してこちらに来たことはヴァンディミオン殿下に知らせておいたほうがいいだろう。

皇后陛下がヴァンディミオン殿下ではなく、ジュリウス王子を次期皇帝にしたいのだろうということは何となくわかった。

ジュリウス王子は純粋にヴァンディミオン殿下を兄として慕っているが、皇后陛下はそのことも苦々しく思っていることだろう。

皇太子は忙しいのだからという理由でこちらに関わらせようとしていない態度でわかる。

そして皇后陛下はジュリウス王子にとってはとても良い母親なのだろうが、王子のあの幼さは気にかかる。


(ヴァンディミオン殿下に今のことを知らせておこう。)


そう思いメルディナの帰りを待つ。


先ほどのジュリウス王子の聞きたいことがいっぱいという態度を思い出すと、ヴァンディミオン殿下と会えなければまた抜け出してくるのではないかと思われる。

ヴァンディミオン殿下と隔離しておきたかったらしい皇后陛下の考えも知らず、仲良くなりたいという思いで行動するジュリウス王子の存在が、ヴァンディミオン殿下の不利にならないようにしなければならない。


ヴァンディミオン殿下とお会いすることを考えると恥ずかしいので、手紙にしようかと思いながら文面を考える。





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