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ひねくれ黒猫の異世界魔法学園ライフ  作者: Win-CL
2-2-3 激熱対抗戦編 Ⅱ 【それぞれの戦い】

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第162話 【俺に力を貸してくれよ……!】

毎日、朝の8時台に投稿予定

たまに大幅にずれる可能性があるので、ブクマ推奨です

昨日分が抜けていたため、本日2度目の投稿です。

 色の変わるほど(?)マジギレしたルナの動きは凄かった。立ちふさがっていたゴゥレムを前に跳び上がると、(実際に頭があるわけじゃないけど)その後頭部のあたりに両手を回して。次の瞬間には、鋭く突き刺さった右膝が勢いよく砂を撒き散らした。


「す、凄ェ……」


 破壊された部分を修復するために、砂が盛り上がっていたとこで、回し蹴りが思いっきりに胴体へ入っていた。大きく吹っ飛んだゴゥレムの身体から、核の機石が転がり落ちた。


「お嬢様が“あの人”についていくためにっ! どれだけ血の滲むような努力をしたのかも知らないでっ!」


 怯える様子で銃を構えた機石魔法師(マシーナリー)――エルンつったか。

 そいつが狙っているのは……ルナじゃねぇのか!?


「あぶねェ、シエット!!」

「撃たせませんっ――!」


 再びシエットの盾になるのも悠々と間に合っていた。銃弾はシエットのもとには届かず、地面に叩きつけられる。さっきまで蟲が入り込んで関節が動かなかったんじゃ……。


 ――メキメキという、嫌な音がしていた。

 それはルナから発せられていて。


「なんで努力をするしないに、生まれた家が関係あるんですか? お嬢様があなた達に何かしたんですかっ!」

「なんなんだよコイツ……!」


「無理矢理に力ずくで動いてんのか……!?」


 エルンが持っていた銃も、一瞬で接近して蹴り上げる。手首を抑えて飛び退いている目の前で、銃身ごと踏み折っていた。……まじでどんだけパワーアップしてんだ。尋常な力じゃねぇぞ。


 それじゃあ動けたとしても、ルナの方もただじゃ済まないだろ!? 


「てめぇ……そんな奥の手を隠してたとはなぁ……!」


 一瞬で大量の水がルナを包む。ベリエルの水の妖精魔法。あれじゃあ身体の自由を奪われて、息もできずに窒息しちまう――のか? 機石人形(グランディール)って、息する必要もないよな……?


「――――っ! 無駄……ですッ!」


 中で勢いよく斧を一振りするだけで、その呪縛からも解放される。辺りに水滴が飛び散り――決して近づけまいと、次々にベリエルが妖精魔法を放って撃っていた。


 どれもものともせずに突き進んでるのに、その姿がどこか痛ましい。

 それは限界が近づいているのを、どこか無意識に感じているからだった。


「ルナ、もう止めなさい――! 無理をしないでっ!」

「いいえ、まだいけます……!」


 ……とは言うけれど、段々と放出されていた魔力も収まってきて。その髪の色も、橙から水色へ。元通りになっていく。爆発的に能力が上がるといっても、短時間だけで。本人への負荷が相当なのか、ルナは地面に膝をついてしまう。


「――で、メイドが動けなくなって、馬鹿も痺れたまま。残ったのは役立たずだったお嬢様が一人だ。エルンの銃もイージアのゴゥレムもぶっ壊されちまったが、どうせ俺一人でも問題ねェ」


 よく言うぜ。ルナを止めるのに必死で、今だって冷や汗だらだらなクセして。シエットに向かって勝ち誇ってはいるが……。もうサバイバルを生き残るという目的も、どこかにいっているようだった。


「ま、まだ私が戦えないだなんて――!」

「……止めなさい。無茶しないで。()()()()()を繰り返していたら、いつか貴女――」


 絶体絶命のピンチだった。ベリエルの野郎はまだ魔力に余裕がある。シエットとベリエルの妖精魔法師としての実力も、これまでの戦いではっきりとしていた。


(だぁれ)もお前の味方なんてしねぇ! 家とお前の努力が関係ないのだって、誰も理解なんてしねぇ!」

「そんなこと……! 初めから理解していますわっ!」


 絞りだすようにして吠える。ちくしょう、味方がいないわけじゃない。俺だって身体が痺れてなけりゃあ、一緒に戦ってやるのに。


 ……今回の俺、カッコ悪すぎじゃねぇか?


「ざまぁねぇぜ、“エーテレイン”!! 貴族の面汚しとして、学園からも退場させてやるよォ!」

「…………!」


 ――その瞬間、シエットの頬に涙が伝ったのが見えた。きゅっと結んだ口元と。これでもかと相手を睨みつける視線と。精一杯に強さを保っている中の、小さな綻びを見たような気がして。俺の心臓が大きく跳ねた。


 女の涙には慣れてねぇ。できればそんなもん見たくねぇ。

 俺自身が苦手なことと、親父との“ある約束”をしてるからだ。


 ベルエルたちと戦い始めたときからのモヤモヤが、俺の頭の中でグルグルと回って。馬鹿な俺の頭が、馬鹿なりにいろんなことを考えて。


 ……こいつ(シエット)を泣かせたのは誰だ?


 ベリエル、エルン、イージア。目の前のこいつらか?

 ――いいや、違ぇ。それだけじゃねぇ。

 シエットはきっと、ずっと今まで、同じようなことに耐えてきたんだ。


 ……そう。最初からモヤモヤしていた。

 アイツらの、言葉の一つ一つが聞き覚えがあったんだ。被ってたんだよ。

 誰とだって? そいつは――俺だ。……少し前の俺だ。


 俺は、学園でこいつ(シエット)と始めて会った時になんて言った?


『エーテレイン家が』、『貴族が』――。

 全部、全部、全部。俺が、こいつに言っていたことだ。


 シエットの事を知らないままに、一方的な不満をぶつけていた。


 ――このモヤモヤの正体は、そう。罪悪感だ。

 それが今になって込み上げてきているのを、知らないフリをしていただけ。


「カッコ悪ぃな……!」


 こうやって、シエットたちがボロボロになっているのを、地面に転がったまま見ていることじゃない。あれだけシエットを傷つけておいて、何事もなかったかのように今まで過ごしていた。そんな自分が、これほどにも無いくらいにカッコ悪ぃ。


 ……最低だ。――最っ悪だ!


「あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 ――恥ずかしかった。それこそ、顔から火が出るぐらいに。


「どんだけカッコ悪ぃんだろうなぁ、俺ってやつはっ!!!」


 居ても立ってもいられねェ。身体が痺れてようと関係ねェ!

 力が入らない右手を、なんとか地面に突っ張って。


「頼むから……俺に力を貸してくれよ……! “オルランド”の――」


 今すぐにでも謝りたい。謝らないと。シエットに対して、頭を下げたい。

 そうじゃないと、俺は一生カッコ悪いままだ。そんなの漢じゃねぇ。


 ……そのためには、まずはぶっ飛ばねぇといけない奴等がいる!


「ヒューゴ・オルランドが、漢になる為にっ!!」


 親父から言われてついてきただけだった炎の妖精が、俺の言葉に頷いてくれた。いままで呆れながら俺を見ていたんだろうか。それを、やっと認めてくれるのだろうか。


『……ヒューゴ。オルランド家の漢はな――』


 まだ入り口に立っただけなのかもしれねぇけど。

 それでも、俺はここから。親父のような漢になるんだ。


「女を泣かせるような奴にだけは、なっちゃならねぇんだ!!」


 手から、足から。全身から――

 俺の身体の隅から隅までから、炎が吹き上がった。


 (あか)い、(あか)い、(あか)い焔だ。

 金属が形を変えるほどに熱い焔が、俺を包んでいた。


 身体の痺れは既にどこかへといってしまった。もう俺を止めるものは何もない。立ち上がり、パシンと拳を反対の手のひらに叩きつける。こっから名誉挽回だ。


 ――今の俺は、全身から力が湧き上がっていた。

挿絵(By みてみん)


ここまで読んで頂き大変感謝です。もしよろしければ、下部の☆欄にて現段階の期待度等の気持ちを表して頂けますと今後の励みとなります。沢山の人に読んでいただけるよう、皆さんの声や応援をどうかよろしくお願いします。

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