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ひねくれ黒猫の異世界魔法学園ライフ  作者: Win-CL
2-2-1 学園七不思議編 Ⅱ 【紅い月と時間旅行】

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第144話 『別の時間、別の世界』

毎日、朝の8時台に投稿予定

たまに大幅にずれる可能性があるので、ブクマ推奨です

 すぐ傍でヒューゴが開いた窓に映し出されていたのは、炎を吐く直前のドラゴンの姿だった。閉めろと口にしようとしたけれども、既に遅く――


「うおわぁ!?」


 勢いよく迫ってくる炎の息吹(ブレス)。とはいえども、炎が伸びてきたのは窓の部分までで。その境界の内側が赤や白に染まってはいても、不思議と熱は全く感じなかった。


「あはは、安心しなよ。窓の外は別の時間、別の世界。こちらに干渉することは無いし、逆にこちらから干渉することもできないから」


 尻もちをついたヒューゴを見てロアノが笑っているけども、自分たちは窓の外に目が釘付けだった。伝説の生物を間近で見て、ちょっと感動すらしていた。


 炎に遮られて全身はよく見えないが、あれは確かにドラゴンだった。大きな翼を広げ、頭部には角があり、牙の並んだ顎を大きく開いて。自分の知っている姿そのまんまだ。


 実物――とは少し違うけれど、見るのはこれが初めてだった。


 そしてこの映像がここに映し出されているということは……。


「学園のあたりにもドラゴンがいたの? 本当に?」

「ここに映ったのなら、それが真実さ。――ただし、それが過去か未来か。どちらかは残念ながら分からないけどね」


 ……いや、どう考えても過去の話じゃないか?


 絶滅とまではいかないけれど、今となっては殆どいないらしいし。七不思議候補の一つにあった“学園地下のドラゴン”とも関係があるのかと考えたけど、そんなに最近までいたとは思えない。


 もしかして、自分たちの他にもこの噴水に飛び込んで――いや、“赤い月”の周期が二十年ぐらいだから、それはないか……?


「僕の力が万全だったら、実際に見て確認できるんだけどね」


 確かにあった時間。そして、確かにある時間を切り取ったのがこの窓なのだと言う。勝手に生まれ、そして勝手に消える。本体のロアノならば、管理も自由自在らしいけれど。


 そうして、窓の向こうの話は終わり。ようやく本題へと戻る。


「数日前に戻すだけで精一杯なんだ。これで許してくれるかい?」

「ぜんぜん大丈夫だ――です!」


 それ以上戻されても逆に困るし。全員が頷いたのを確認すると、ロアノは再びピアノへ着いた。


「それじゃあ、しばらく待ってくれるかな」


 椅子に腰掛けて鍵盤を撫でるロアノ。どうやら演奏しないといけないらしいけど……。詠唱も何もなしに時間を止めたり戻したりしていなかったか?


「君たちは自由にしてていいよ」


 ――そうして、緩やかに演奏が始まった。(自分以外にとっては)見たことのない楽器、聞いた事の無い音。初めの方は全員が耳を傾けていた。


 ……聞いた事の無い曲。といっても、自分もそれほど音楽について詳しいわけでもないし、似たような曲が前の世界でもあったのかもしれない。自分としてはいくら聞いてもそれほど飽きないのだけれど、ヒューゴはそうでもないらしい。


 二曲三曲と続いていくうちに興味は別の方へと向く。


「こっちの方が面白そうだな。どの時代が出てくるかは、開いてみるまで分からねぇけどよ」


 そんなにさっきのドラゴンが衝撃的だったのか。

 また何か面白いものが見れないかと、再び窓を開く作業に取り掛かっていた。

 人の家(?)でこうもやりたい放題する奴も珍しい。


「あんまり好き勝手にウロウロさせとくとさ……何かしそうで不安なんだよね」

「それなら私も行きます。幸い、どこにいても演奏は聞こえるみたいですし」


 ヒューゴを追う二人。クロエは動かずこの場に残る様だった。

 そんな中、自分はといえば――


――――――――


 ロアノの演奏が終わるまで、どうしていようか。


 他のメンバーと一緒に窓を覗く

▷クロエに付いておく


――――――――


 ピアノの傍に座り込み、ロアノの演奏に耳を傾けているクロエ。


 信用していないというわけでもないけれど、初めて訪れた場所に一人で放置しておくのも良くない。邪魔にならない程度に近寄り、ピアノに体重を預ける。


 演奏の上手い下手なんて、素人目でしか分からない自分だけれども、それでもロアノの演奏がこの上なく上手なのははっきりと分かる。何年、何十年と弾いてきたかのように、狂いも淀みも、音を楽しむのに邪魔なものは一切無く、鍵盤が叩かれている。


 あんな小さい手で、器用に弾けるもんだな。


「――君は見たところ、吸血鬼の血が流れているようだね」


 演奏する手を休めることのないまま、ロアノが口を開いた。他でもないクロエに向けてのもの。吸血鬼、というのが気になったのだろうか。


「……半分だけだけど。それがなにか?」


 少し機嫌を悪そうにして、クロエが答える。


「あぁ、ごめんね。ただでさえ、ここに人が来るのが珍しいからさ。そのうえ、それがハーフだとはいえ吸血鬼だなんて。君で二人目だから少し驚いているんだよ、これでも」


 ――二人目、と言ったのか。

 確かに、クロエ以外の吸血鬼がいてもおかしくは無いんだよな。

 ただ、その数が少ない、というのはロアノの言葉からもだいたい察せられた。


「二人目って、他にも吸血鬼が? いつ来たの!?」

「二十年ぶりかな。あくまで、君たちの時間感覚ではだけど」


「もしかして……私のお父さんとか……?」

「いいや、君の父親じゃあないと思うよ。女性だったし」


 女性だったと聞いて、クロエが『……そう』と小さく呟く。あまり期待はしていなかった様な声音だったものの、内心は少しがっかりとしているのが分かった。


 ――まだクロエが生まれる前、母親を一人屋敷へと置いて姿を消したクロエの父親。普段は全く話に出ないけれども、やっぱり心のどこかでは気になっているのか。


「僕等のようなどこにでもいる神々に比べれば、君たち吸血鬼はとても数少ない種族だ。――だけれど、面白いことに誰もがその種族を知っている。なんせ、世界大戦の中心にいたんだからね」


 世界大戦という物騒な単語。なんだか聞き覚えがあるんだけども、いったいどこで聞いたのか。……と考えるまでもないな。この世界の基礎知識なんて、ほとんど学園の中で憶えたものだった。


「授業でも少し習った気がするな……」

「世界大戦には前期と後期があったんでしょ。私でも知ってるわよ」


 ――長い、長い戦争。なんでも、百数十年に渡って続いたんだとか。


「大戦の内容、君たちの世界ではどこまでが知られているのかな?」


「前期はヒト族(グランデ)亜人族(デミグランデ)が中心に争っていて、一度戦いが収まった後に魔族が現れたため、争いを止めて魔族から世界を守った、ぐらいしか」


 自分が授業で聞いたのはこの程度。クロエどうやら知っている部分は同じらしい。長い戦争が終わったのが約百年前のことらしいけど、もともと歴史に興味が無い時点でさっぱりである。クロエはちゃんと、現代までの歴史についてもバッチリらしいけど。


「概ねそれで合っているけど、所々が抜けているね。――それじゃあ、僕が歴史の勉強でも教えてあげよう」


 演奏は止まらないまま、なぜか歴史の授業が始まった。正直なところ遠慮しておきたいのだけれど、この世界の神様が直々にというのなら逆らうわけにはいかない。


「ある時を境に二つの世界が混じった。それが戦争のきっかけだったんだ」

「ちょっと待った」


 いきなりだった。わけが分からない。

 何を言っているんだ、この神様は――

挿絵(By みてみん)


ここまで読んで頂き大変感謝です。もしよろしければ、下部の☆欄にて現段階の期待度等の気持ちを表して頂けますと今後の励みとなります。沢山の人に読んでいただけるよう、皆さんの声や応援をどうかよろしくお願いします。

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