表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/34

第6話:説明前に

 部屋に電気がついた。


 随分、時間かかったな。まぁ、使い続けていたら、そうなるか。


 先ほどまで電気がついてなかったのは一応、納得はできた。


「お待たせしました」


 そう言って、灼網会長が戻ってきた。


 手には茶色いトレーが二つ。上にはサンドイッチやホットドックなどの軽食と、コーヒーカップに入っている紅茶。


「どちらか持ちますよ」


「ありがとうございます。でしたら、こちらをよろしくお願いします」


 受け取ったのは軽食が乗っているトレーの方。つまり、重い方だ。


 まぁ、当然ちゃ、当然だけどな。でも、案外軽いな。


「こちらに置いてください」


 俺が座るように促された椅子の前にある机だ。言われた通り、そこに置く。


 このあと、どうすればいいかと思ったが、会長が座ったので、その向かいの席に座る。


「それにしても、軽食が本当にいっぱいありますね。これはどうしたんですか?」


「朝買ってきました」


「ん? こんなにも?」


「はい。あなたを昼休みに連行するのは決まっていましたからね」


「やっぱり、生徒会長にもなったら、その辺の情報は早いんですね」


「まぁ、生徒のことを把握するのも生徒会の役目ですから」


「えっ……?」


「ですが、全生徒は厳しいので、目立つ生徒だけですよ。いい意味でも悪い意味でも」


 目立つ生徒か……。俺が覚えられているのは多分、転入生だからだろうな。転入生ってだけで、注目の的だし。


「それじゃあ、紅茶が冷めないうちにいただいてもよろしいですか?」


「はい。どうぞ、召し上がれ」


 許可を得たので、早速食べようとしたが、やめた。


 先に食べるよりも紅茶を先に飲んだ方がいいだろうな。


 カップを手に取る。中は透き通った赤みの液体だ。


 普通の紅茶と代わりはない。


 とりあえず匂いを嗅いでみる。


 あれ? スッゴイいい匂い。紅茶って、こんな香りを出せるんだな。


 一口飲んでみる。


 飲みやすい。でも、香りが鼻をスッと通る。後味もスッキリしていて、美味しい。


「この茶葉って高いですか?」


「ん〜、どうでしょう」


「どうでしょうとは?」


「使っている紅茶は自家製なんですよ」


「ファッ!?」


 ま、マジで? 自家製でこんな美味しくできんの? 何か淹れ方に工夫があるのかな?


「別段特別に淹れ方にはしていませんよ」


「心を読まれた!?」


「生徒会長ですから」


 ウインクしながら、可愛く言う。


「生徒会長スゲェェェェェェ……って、なるか!」


「ダメでしたか」


「生徒会長だからって、人の心を読めるわけないじゃないですか!」


「ですが、人心を掌握する術はありますよ。そうしないと選挙通りませんから」


「なんか、恐ろしいこと言っていますけど、灼網会長って、選挙で決まったわけじゃないでしょ」


「はい。先ほども言った通り、この学校の生徒会は成績優秀者しか入れませんからね。よく覚えていましたね」


「帰っていいですか?」


「ま、待ってください! まだ生徒会の話全然できてませんよ」


「入らないので、気にしないでください」


「強制的に入ってもらいますよ」


「拒否権が……欲しいです」


「なら、成績を下げることですね」


「グッ! やっぱり、それしか選択肢はないのか!」


「はい。当然ですが。ちなみにあなたが生徒会に入らないと、明日から生徒会はわたくしと藍華さんだけですよ」


「…………はい?」


 聞き間違いかもしれないので、頭を落ち着かせるために一旦、紅茶を置く。


「明日から生徒会がどうなると?」


「わたくしと藍華さんだけになりますよ」


 聞き間違えじゃなかった……。


「俺が知っている限りですと、アイツは六十点くらいのはずですよ?」


「そうなのですか?」


「それで、生徒会に入れるのは平均が九十点以上の成績優秀者だけと……。つまり、藍華は平均を九十点以上取ったということで、よろしいのですか?」


「はい」


 よかった。まぁ、代わりに会長と藍華を二人っきりにするわけにはいかないので、成績落とせないけど。

 それに藍華が落ちて、生徒会をやめることになったら、生徒会は俺と会長だけになる。さすがにそこまで行くと、アイツがどんな行動するかわからない。


 クソッ! 結局、退路を塞がれただけじゃないか!


「ちなみに藍華さんと裕翔君のテストは全く同じです。そして、驚くべきことに全ての教科で、あなたと同じ点数で、同じ間違いをしていました」


「…………はっ?」


「仲良しなんですね」


 灼網会長が優しく微笑む。


「仲良しって問題なの? 怖いんだけど。えっ? そんな偶然ってある?」


「兄さんへの愛が為せる技だよ」


 扉を開けて、藍華が堂々と入ってくる。


 やっぱり、鍵が閉められたのは幻聴だったんだ。まぁ、そりゃあそうだよな。会長が俺を閉じ込めるメリットなんてないし。なんで帰ってないのか、聞きたいけど、ついでに一応紹介しておくか。


「会長。コイツが俺の妹の」


 紹介しようとすると、会長が慌てて椅子から立ち上がる。


「どうして?」


「ん?」


 会長がこちらに近寄ってくる藍華を、あり得ないものでも見るかのような目で見ていた。


「どうしてって、簡単な話。あんた如きが、あたしに勝てるわけないじゃない」


「ですが、アレは!」


「アイツの最高傑作でしょ」


「っ!?」


 何言ってんだ、こいつら。何を伝えたいのか全くわからん。


「あのー、全くわからない会話を目の前で繰り広げるのやめてもらえる?」


「そ、そうですね」


「ごめんなさい」


 なんで、二人して悲しそうな表情を浮かべているんだ? なんか、俺が悪いみたいじゃないか。


「それにしても、二人は知り合いだったんだな」


「うん。偶然、知り合ってね」


「同じゲームをしていたんですよ」


「あー、なるほどね。さっきの会話もそれ関係か」


「う、うん! そうだよ! ねぇ、雑代」


「はい。藍華さんと、よく一緒に遊んでいるんです」


「そのゲーム、俺が参加しても」

「ダメ!」「ダメです!」


 二人同時に即効拒否されたんだけど。まぁでも、どんなゲームかわからないし、変に参加するよりはいいか。

 今はそれよりもだな。


「藍華。なんで帰ってない?」


「なんか、ある気がしたから」


「大丈夫。何もなかっ」


 その瞬間、耳を咥えられたことを思い出した。だが、それを藍華に言うわけにはいかない。


「……たから」


「何? 今の間?」


 藍華にジト目で見られる。

 助けを求めるように灼網会長に目を向けた。彼女はなぜか微笑んだままだ。


 えっ? 助けて。


「ただ、裕翔君の耳を舐めただけですよ」


「「はっ?」」


 俺と藍華は会長の言葉に同じ反応を示してしまう。まぁ、確実に意味が違うだろうな。


「っ!?」


 な、なんか、殺気立ってるんだけど? しかも、会長はどういうわけか嬉しそうに少し口角を上げている。


 ……あっ、そういえば会長って、ドMだったな。


「ふっふっふっふっ」


 藍華が不気味な笑いを放ちながら、近くにあった(ほうき)を手に持つ。


 片付けておけよな。


 少し呆れながらも、このまま放っておくわけにはいかないので、椅子から立ち上がり、会長を背後にして両手を広げる。


「どいて兄さん! そいつ殺せない!」


「いや、殺そうとすんなし」


「なら、どうすればいいの?」


「何もしないでいい」


「それだったら、あたしの怒りが収まらない!」


「藍華。やめておけ。この人はドMだ」


「ちょっ!」


 会長が止めようとしてくるが、関係ない。


「お前が何かしても、この人を喜ばせるだけだ」


「た、確かに」


 藍華は少し引き気味だ。


「そうだな、今日一緒に帰ってやる。これで手を打たないか?」


「喜んで!」


 俺の提案に乗ってくれた藍華は箒を元の場所に戻す。


 こういうところはマメだよな。


「藍華、ついでだし、生徒会についての話を聞いていかないか? お前も明日から生徒会の一員なんだろう?」


「兄さんも一緒に聞くの?」


「ああ」


「じゃあ、一緒に聞く!」


 藍華は本当に嬉しそうだ。


「会長、これでいいですよね?」


 背中にいる会長に振り返りながら、聞く。


「はーい」


 見事に不貞腐(ふてくさ)れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ