検証
長い間音信不通で申し訳ありません。
おそらくこんなのもあったねえ…ぐらいにしか思われてないでしょうが次話が出来ました。
それではどうぞ
前回紹介した跳弾狙撃について追加を書きたいと思います。
本来は不可能な跳弾狙撃を実現するためにはどうしたらよいかというものでした。
そしてその問題に私なりの答えを出しましたがこれもまた机上の推論でしかありません。
でもこの日本で実験なんて出来るわけないし、これ以上の追求は無理だなと思っていました。
ところが、アメリカ在住のとある方よりお誘いがあり、なんと実弾実験をしましょうか? という申し出がありました。
一瞬「マジで!?」と舞い上がりましたが、どんな実験をしてもらおうか考えた際、「いや、やっぱりだめだろ。小説の技をリアルでやるとか危険すぎる」と思い一時は断りました。
しかしある日、興味の沸いた私はどんな人なのか見てみたところ、
「え? 米軍人?」
軍人さんでした。
それまでは銃が好きなだけの実験好きが言ってきたのかと思っていました。
しかし軍人なら銃に関する正しい知識も当然持っているだろうから安全に実験を行うだろうと思い、お願いしたところOKとのことなので、本当にしてもらいました。
ご協力ありがとうございます。
今回おこなった実験の概要を説明します。
簡単に言うとライフルを使い離れた位置にある物体にぶつけて、的に命中させると言うものです。
この実験によって調べることは次のとうり。
1、ライフル弾でも跳弾は起きるか?
2、跳弾した弾に殺傷力はあるか?
3、コンクリート、鉄パイプ(金属製の電柱のかわり)、そして鉄パイプ(中に通す用。いずれも軟鉄)の中でもっとも跳弾に適した物はどれか?これは跳弾した弾数とその命中精度。弾丸を壊しやすいかで判断します。
まずは彼から送られてきたレポートをまとめてみます。
実験に使用した銃
モシンナガン
使用弾薬
7.62mmR
弾頭
FMJ180グレイン(約11.52g)*グレインとは重さの単位です。
跳弾実験対象までの距離
120m
跳弾させる回数
1回
的
ベニヤ板の前に鳥を置いたもの
結果
1、ライフル弾でも跳弾は十分起こりえる。
2、殺傷能力も十分である。
3、コンクリートに45度で当てた場合、100発中63発跳弾。ベニヤに命中したのは39発。的に命中したのは2発だったそうですそれも掠った程度。
やはり常人には無理なようです。あれはレキの完璧な狙撃があってこそ出来る技ですね。
さらに角度を半分にした場合。角度を浅くすることによって跳弾しやすくなり、命中率も少しは上がるはずである。
『コンクリートに22度で当てた場合、100発中78発跳弾。ベニヤに命中したのは51発。的に命中したのは12発』
え? ちょっとどころじゃねえ! 命中率が6倍に跳ね上がってる。跳弾した弾の数は15発しか増えてないのに命中率に関してはすごい上がりようだ。
回数を重ねてコツをつかんだというのもあるかもしれないがそれでも大した上がりようである。
常人で1割の成功率が出せるなら、超人的なレキを持ってすれば10割の成功率を出せるだろう。
しかし、跳弾の角度は22度。90度横にいる相手に当てるには2回から3回の跳弾が必要になる。
レポートには書かれていなかったので実際は分からないが45度の場合も2回から3回の跳弾が必要だろう。45度で当てても約その半分以下の角度で跳ね返るからだ。
これは弾が当たった際コンクリートが砕ける。つまりエネルギーがコンクリートに吸収されることによって起きる現象である。
角度が浅い場合は大体同じくらいで跳ね返る。おおよそ15度以下までならそうなるだろう。
さて、これは困った。
都会に立ち並ぶコンクリートの群れはものすごい数だが、脇道に逃げた野郎を撃てるだけの都合のいいコンクリ壁が存在するだろうか?
さすがに厳しいと言わざる負えない。
結論
コンクリ壁は使えるが状況が限定される。
ならば次の手段。
コンクリートよりも丈夫な金属製の電柱を使おう。
小説を読むとギンッ!という音からして金属性。さらに信号機の支柱とされているから円柱形と分かる。
つまりこの実験で良い結果が得られれば下手な小細工などせずにそこにあるものを使って撃ったことになるのだ。
一般的に電柱は鉄筋コンクリート製だが、狭い場所や路地への電線の引き込み、交差点の信号等の一部には直径10cm〜30cm以上のものが使われるときがある。
そのほかにも街中を観察すると標識やガードレールといったものもすべて金属製。かなりの数がある。
唯一つの問題は先ほど記したように実験で使う金属パイプが軟鉄製であることだが、それは上方修正して誤魔化そう。
実際のものは鋼管である。
さて、まずは結果を。
軟鉄と聞いた時点で大体の予想はつくが……
100発中5発跳弾。1発ベニヤに命中。
……これは、どのぐらい修正したらいいのかな?
正直、予想を大きく上回る結果に戸惑っているのだが……
ひょっとしてこれはど真ん中を打ち抜いたのではないだろうか?
『弾丸の多くが貫通した』
とも書かれているが、うまく端っこに命中させることが出来ればここまで貫通したりしないはずなのに、なんでだ?
ともあれ一応は跳弾した。どの程度変化するかはもはや未知数だが鋼管を使用すればもっと増えるだろう。
表面が丸いという点も弾丸を壊さない、という条件から考えて有利だ。ただ私もおもちゃを使いこの縮小実験を行ってみたが、曲面から弾丸の反射先を考え照準を合わせるのは非常に難しい。
ただ逆をいうと、正確無慈悲に撃ち込むことさえ出来れば、この狙撃法は「ありえる」と言える。
弾丸の重さも関係していると思われる。
今回使った弾丸は通常の鉛と銅でできたFMJ。跳弾をするにはちょっと重い。
アルミ&チタン製の自作弾をつかったならまた結果が変わってくるのかもしれない。またはぶつかった瞬間にエネルギーをすべて奪われ止るかだ。
ここまでするときにはアメリカ番組。伝説バ○ターズにたのむしかないね。
さて、ここまでは普通の跳弾のイメージを実験したが、次は論理的にできるとした跳弾法を試そう。
曲げたパイプを使い、弾丸を逸らす方法だ。
これも軟鉄を使っているため修正を施そう。
では、レポートを見てみよう。
固定には万力とアーク溶接を使用。
内側に潤滑剤と断熱材としてグリスを塗り、すべりを少し向上させたようだ。
長さは30cm直径6cm。
5度:成功。的に命中
10度:成功。だが外れ
15度:成功。外れ。パイプの内側にこすれた跡があった。
20度:失敗。パイプの強度不足
なるほど、先ほどに比べて随分と分かりやすい結果が出ましたね。
しかし最初の5度、これはちゃんと逸れたのか判断がつきにくいですね。
直径6cmと言うのはおそらく外径だろう。市販品なので大体切りのいい寸法になっているだろうから、肉厚が5mmといったところか、だとすれば内径は5cm。
このサイズのものを5度曲げるだけでは向こう側が直接見える。つまり直接狙えてしまう。
その大きさ、最大横幅約3cm。半分以上見えちゃってるよ。
どちらにしても成功して当然だろう。ほとんど変わってないに等しいのだから。
つぎは10度。これもまだ見える。最大横幅約2cm。
これは弾を逸らすのには成功したけれど、的は外したようです。
ん~、やっぱりそううまくはいかないか。予定ではレールの上を走る電車のように方向を誘導できると思っていたのですが、なかなかにむずかしいようです。
原因と思われるものをいくつか上げてみましょう。
1、遠心力が働いて外側にずれた。
2、慣性の力が失われず、直進した。
3、はじめからパイプの中に当たってなかった。ガッデム!!
まあ、3番目は冗談として、考えられる可能性はこんなところかな。
これも弾丸の重さとパイプの種類が影響しているのだろう。
その他にあるとすればパイプの長さだ。
ライフル弾を曲げるのに30cmは短すぎたのかもしれない。
これらを改善できればまだ可能性はある。
そして20度。これが軟鉄、貴様の性能の限界だ!
軟鉄の限界が20度なら鋼管の限界はもっと高いはず。というか鉄にこだわる必要もない。それこそチタンだろうが何だろうが使いまくればいいのだ。
我々ではそう簡単に手が出せないほど高価な品物だけどね。
結論
どちらともいえない。ある程度までなら曲げることができる。しかし90度まで曲げるにはかなりの条件を揃える必要がある。
さて、それぞれの狙撃法に結論が出ました。
この中で最も適した狙撃法はどれか?順位を発表します。
1位、コンクリ壁。命中精度も高いながら、跳弾先を予想しやすいという点から1位です。
2位、パイプ。条件は厳しいですが。弾丸をこのなかで一番壊しにくいという点から2位にランクイン。
3位、鉄柱。跳弾は可能ですが、この中で最も成績が悪い、弾丸を壊しやすいということから最下位です。
しかし、これは一般人のランク。
超人レキのランクはこうだ。
1位、鉄柱。手作り製の弾丸を使うことにより、壊れずに跳弾をすることが可能。微妙に着弾点をずらすことにより様々な方向へ射撃が出来る。
2位、パイプ。弾丸を変形させないため遠距離でも狙える。ただし狙える方向が1つにつき1方向限定。
3位、コンクリ。弾丸が変形しやすく、狙える方向が限定される。
なんと1位と3位が入れ変わってしまった。
超人レキが跳弾をしようとすると鉄柱が一番適していたのだ。
かぎりなく変形しない弾丸を使うことが前提になるが、レキの器用さと、ちびっこ天才技術者の協力があれば作れないことは無いように思える。
パイプが2位のままなのは狙える方向が限定されるからだ。これはスナイパーとしてあまり好ましくない。(コンクリートも同様)
しかし弾丸をそらした後も遠距離を狙えるのは大きな利点だ。
前回はこれが一番いいと思っていたがそうでもなかったらしい。だからといってどれか1つだけではレキの狙撃は不可能だ。防弾ガラスを破るシーンなどは跳弾して威力の衰えた弾丸で出来るとは思えない。この場合がパイプ。
脇道に逃げた場合が鉄柱を使ったと思われる。
考えれば考えるほど奥が深い。これが2次元技の面白いところですね。
おまけ
突然ですが。現実世界においては机上の理論が全く通用しない場合がある。
皆さんもそんな経験があるでしょう。
これは私がこの実験をしていたときのお話。
現在縮小実験をするべく準備中。道具も少なくすぐに準備は終わった。
そして紐を引っ張り発射。第1回は見事成功。しかし2回目、事件は起きた。
ポス!
壁の裏にいた私のおなかに当たりました。
エアーガンなので怪我などはしませんがなんでこんなところまで飛んできたのか検討もつかない。原因を探るべく弾丸の残像を見ようと、銃は固定したまま直接引き金を引き、発射。
ポス!
今度は胸に当たりました。
え?ちょっと待って?なんで?この銃はそんなに俺を撃ちたいの?撃ちたいのか?
照準は跳弾先を予測して的に向けてある。にもかかわらず、的には当たらずこちらに飛んできた。
アンビリーバボー。
そんな体験をした1日でした。
なんだか豪華になってきたな~
しかし更新速度が乙ってる。特に今回は研究レポートでも書いているような気がしたこともあり、かなり遅かった。
それでもアイディアは募集します。漫画、アニメ、小説。どれでもどうぞ。
追伸、お気に入り1人減ったorz