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5話 街の平和を守るには

 両親を追い払った翌日、俺は決意を固めた。


 この街を守るためには、正式に辺境伯として認められなければならない。


 ――国王に報告しなければ。


 ソルシダとハーレンに街を任せ、俺はリーリャと共にバイゼン王国へ向かった。


 大聖堂のような夢の景色に圧倒され、より一層緊張してきた。


 だけど、王宮での手続きは思っていたより簡単だった。


 市民選挙の結果と、街の復興計画を説明すると、国王の目は優しくなり、意外にも快く承認してくれた。


「5歳の領主とは珍しいな。だが、お前の目には覚悟が宿っている。頑張るがいい」


 そう言って、国王は正式な辺境伯の証――紋章の入った証書を手渡してくれた。


 本当は【読心】を使って、話を合わせようとしていたんだけど、それは秘密だ。


 これで、俺は法的にも正式な辺境伯となった。

 もう両親に何を言われても、この街は俺のものだ。


 ――この街を復興するのは、俺と同じような境遇の人を二度と生まないためだ。


 これだけは、絶対に曲げられない。



 領地に戻り、やることがなかった俺は街を歩きながら【読心】を使って市民の声を拾うことにした。


 市民と大工のみなさんのおかげで主要な道はおおかたできたが、ところどころ石や砂利がゴロゴロして歩きにくい。


 住民の中には、朝早くから水汲みに向かう人もいて、俺に挨拶してくれる人も増えた。


 でも、その中には少なからず不満があった。


『もうちょっと市場に品物があればな…』

『ゴミの処理、どうにかしてほしい』


 いろいろな声が聞こえてくる中、どこかで慌てている声が頭の中に響いた。


 『どこ……どこにいるの……?』


 声はだんだん近くなっていく…


 角を曲がると、そこには泣いてしゃがんでいる小さな女の子がいた。


「どうしたの?」


 俺が声をかけると、女の子は顔を上げた。

 そして――さらに泣き出してしまった。


 ――あ、そうか。俺も子どもだから、頼りにならないと思われたのかもしれない。

 だけど俺は領主だ。家族一人を見つけられないで、街の人を見ていられないぞ。


 俺は少し離れて、優しく声をかけた。


「大丈夫だよ。僕、この街の領主なんだ。お父さんとお母さんを探してあげる」


 女の子は涙を拭いながら、少しずつ落ち着いてきた。


「……パパとママが、いなくなっちゃった」


 その言葉を聞いて、俺の胸がチクリと痛んだ。


 てっきり、俺と同じように置いていかれたのかと思った。

 でも、よく聞いてみると、ただの迷子らしい。


 ーーよかった。俺の公約がさっそく捻じ曲げられるところだった…



 俺は彼女に色々な質問をした。


「年齢はいくつ?」

「……よんさい」


「家の場所わかる?」

「……わかんない」


「お父さんとお母さんの名前は?」

「……えっと、パ…パパとママ…」


 うーん、これは手がかりが少ない。

 でも、俺は領主だ。この子を助けなければ。


「じゃあ、一緒に探そう」


 俺は小さな手を大きく握りしめて、街のあちこちを歩き回った。


 【読心】を使って、近くにこの子を探している人がいないか探す。


 だが、なかなか見つからない。


 だんだんと、日が落ちていく。


 女の子は疲れて歩けなくなり、また泣き出してしまった。


 ――こんなはずでは……。


 俺だけでは、この子を安心させられない。


「ごめん、今日はもう遅いから、一度家に帰ろう。明日また探そう」


 俺は女の子を連れて屋敷に戻り、リーリャに相談することにした。



「リーリャ、この子が迷子になっちゃって……」


 心配そうに言うと、リーリャは優しく微笑んだ。


「任せて!」


 リーリャの声に、俺まで思わず笑ってしまった。


 リーリャが優しく話しかけると、女の子は少しずつ心を開いてくれた。


「お名前は?」

「……アリス」


「アリスちゃんね。今日はここで一緒に寝ましょう。明日、お父さんとお母さんを探しましょうね」


 リーリャの温かい声に、アリスは小さく頷いた。



 翌朝、俺とリーリャはアリスの手を引きながら、再び街を歩いた。

 今日も【読心】を使いながら、親を探している人の思考を探す。

 道の途中で、リーリャがアリスに焼きたてのパンを買ってあげると、少し笑顔が戻った。


「おいしい?」

「……うん」


 そのまま街を歩き続けると――


 『アリス……アリスちゃん、どこ行っちゃったのかしら……』


 そんな声がうっすらと頭の中で響いた。


「リーリャ!この近くに家族がいるよ!」


 その言葉を聞いた瞬間、アリスの目が輝いた。


「ママ……?」


 アリスは俺たちの手を振りほどき、走り出した。


「待って!」


 俺とリーリャは慌てて追いかける。


 角を曲がった先で、アリスは立ち止まった。


 そして次の瞬間――


「ママ!!」


 声を上げて駆け出した。

 そこには、泣きながら街を歩いていた女性がいた。


「アリス!!」


 母親がアリスを抱きしめる。

 二人は泣きながら抱き合っていた。

 その光景を見て、俺はスッと息を吐いた。


「……よかったな」


 リーリャも、優しく微笑んだ。


「うん、よかった」



 しばらくして、アリスの両親が俺たちのところに来た。


「本当にありがとうございました!」


 何度も何度も頭を下げてくれる。


「いえ、当然のことです。この街の領主ですから」


 俺がそう答えると、父親は驚いた顔をした。


「あなたが……新しい領主様なんですか?」


「はい」


「こんなに小さいのに……本当にありがとうございます」


 アリスも、俺に駆け寄ってきた。


「ありがとう!」


 満面の笑みで言われて、俺は少し照れながらも嬉しそうに笑った。


 街の人々も、その様子を見てほっとした表情を浮かべていた。


 ある人は「さすが新しい領主様だ」と言い、別の人は「この街は変わってきたな」と微笑んだ。



 屋敷に戻る道すがら、俺はリーリャと並んで歩いた。

 快晴の空が、街全体を明るく照らしている。


「ルカ、今日は良いことしたね」


「うん」


 こうして少しずつ、街の信頼は積み重なっていくんだな――そう思った。


 両親を失うような悲劇は、誰にも味わわせない。

 街の人みんなが幸せになれる場所をつくる。


 ――そう心に誓った日だった。

 ここまで読んでいただきありがとうございます!


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