4話 親との決別――俺を捨てた過去に、終止符を。
先日、俺は街の中央に大きな木箱を設置していた。
『これは目安箱です。皆さんの意見や要望を、ここに入れてください』
最初は誰も使わなかったが、数日経つと少しずつ意見が集まり始めた。
リーリャに整理してもらった手紙を一つ一つ読むと、
『街に警備がいないので、夜は街灯の下も怖くて歩けない』
『商売を再開したいが、どうすればいいか分からない』
『他の街と交流したい』
のような意見が。
市民たちの声を整理すると、やるべきことが見えてきた。
1. 街の治安を守る
2. 街での商売を活発にする
3. 他の街との外交を結ぶ
上から優先順位が高いものだ。
俺はこれを基に役目を与えるため、側近たちを集めた。
ーーまずは街の治安を守るか…これは元傭兵のソルシダがいいだろう。
「ソルシダ、街の警備をよろしく。」
「任せてください!」
ーー商売を活発にするは…元商人ならできるかもしれない。
「ハーレン、街の商売を活性化させてほしい。市場を作って、商人たちが戻ってこられる環境を整えたい」
「了解しました。」
ハーレンが眼鏡を直しながら答える。
そして最後の外交は、俺が担当する。
ただ、今はまだこの街に魅力がない。
もう少し整ってから動くとしよう。
「はぁ…」
俺は、責任感と不安でため息をついた。
それを見ていたリーリャが心配そうに尋ねる。
「ルカ、大丈夫?無理しないでね」
ーーリーリャには幸せになってもらわないとな…
「大丈夫だよ。みんながいるから」
そう答えると、リーリャは安心したように微笑んだ。
*
この日の夕方、仕事を終えて屋敷に戻ると、
「ルカ、大変ですよ!」
リーリャが険しい様子で駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
「あの……ルカのご両親が、屋敷の前に……」
――両親?
嫌な予感がした。
屋敷の門の前に行くと、そこには見覚えのある二人の姿があった。
「あら、ルカ。久しぶりね」
母が、まるで何事もなかったかのように笑顔で言った。
「……何の用だ」
俺は冷たく言い放つと、父が一歩前に出てきた。
「ルカ、この屋敷は元々我々のものだ。返してもらおう」
「は?」
信じられない言葉すぎて、【読心】を使った。
『ルカが少しでも街を整えたら、また金を巻き上げて逃げるための拠点にしてやる』
『あんなガキ、適当に言いくるめればいいのよ』
ーーもう救いようがないな…
「お前たちは、俺を置いて逃げたんだぞ。今さら何を言ってる」
「それは仕方なかったのよ。でも、私たちはまだ正式な辺境伯なの。あなた、国王に報告してないでしょう?」
母の言葉に、俺は息を呑んだ…
ーーしまった。
選挙で当選したが、国に正式な報告をしていなかった。
つまり、法的にはまだ両親が辺境伯のままなのだ。
「だから、この屋敷も土地も、まだ私たちのものよ。さあ、出ていきなさい」
母が勝ち誇ったように言う。
その瞬間――シュッ
リーリャの短剣が、父の喉元で止まった。
「これ以上、ルカに近づいたら……殺します」
リーリャの声は、普段の優しさとは全く違う、冷たいものだった。
「り、リーリャ!お前、メイドのくせに……!」
父が怯えた声を出す。
俺は一歩前に出た。
「あんたたちには、もう何の権利もない」
「な、何を……!」
「俺には、帰る場所がある。信じてくれる人たちがいる。この街は、もう俺のものだ」
父と母の顔が、悔しさで歪む。
「あんたたちの居場所は、もうどこにもない」
その言葉に、両親は何も言い返せなかった。
「お、覚えとけよ…!」
しばらくの沈黙の後、二人は弱々しい言葉を返し、屋敷から離れていくにつれ暗闇へと消えていった。
両親の背中が見えなくなると、リーリャが短剣を下ろした。
「ルカ、大丈夫?」
「……ああ。ありがとう、リーリャ」
俺は深呼吸をして、夜空を見上げた。
逃げた両親も、失った過去も、もう追わない。
俺には今、守るべき街がある。
信じてくれる人たちがいる。
そしてーーリーリャがいる。
――こうして、俺の本当の復興劇が幕を開けた。
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