第39話 嵐の前の静けさ
——永遠たちのクラスにやってきた季節外れの転校生・小野真理。そしてなんと同日、隣のクラスにもその真理の付き人ともとれる的部士郎までも転入してきた。
真理は自己紹介の際、スクールディティクティブへのライバル宣言とも取れる発言をしてクラスをざわつかせたが、それから既に二週間が経過していた。
当然の事ながら神奈川県の端っこに位置する小さな田舎町なんかで頻繁に事件など起こるわけもなく、元祖学園探偵の二人も暇を持て余していた。
「平和ね……」
いつものように屋上で弁当を食べていた永遠たちだったが、刹那の何気ない一言で頭の中には転校生二人の顔が浮かんできていた。
無論、刹那の頭に彼女らの存在など無く、ただ何となく口ずさんだにすぎない。
刹那の中では暇=平和、騒動=生き甲斐なのだ。
「なんかさー、最近街に外人多くない?」
「刹那、せめて〝外国人〟って言いなよ」
「差別的だなー。こんな片田舎まで仕事に来てくれてるんだぜ」
「これは大きな事件の前触れよきっと!」
「刹那ちゃんアクション映画の観過ぎだよ」
「それに何も依頼来ないのも不気味じゃない? 嵐の前の……」
「いや、細かいのはあったよ」
「はあーっ? 私聞いてないんですけ怒?」
ほんの数日前のこと。鞄につけていた推しキーホルダーを無くしたという一年の女生徒が同じ学年の彼方に連れられて永遠の元へやってきた。その時刹那は掃除をサボって居なかったし、大した依頼でもなかったので永遠と那由多と彼方の三人プラスアルファで校内を探し、割とあっけなく見つかったので報酬にジュースを奢って貰った程度で済ました。
河豚のような膨れっ面をしている刹那に永遠がなだめるように経緯を説明した。実は途中から小野真理たちも手伝ってくれたのだが、そのことは伏せておいた。
「そういうしょっぼい依頼こそ真理がやればいいのよ!」
「ちょ、刹那っ! 真理ちゃんも……」
「あの子は刹那が思ってるよりもずっといい子だよ」永遠が那由多の言葉を遮った。
「ハハーン! さては永遠、あーゆーのが好みなのね? 残念だけどあの召使いさんと付き合ってるんじゃないのーw」
「あんた、こと色恋が絡むとホンット雑魚キャラよね」
「でもあいつら毎日一緒に帰ってるじゃない!」
「それ、永遠くんとあんたもでしょ……」
そしていつも通りの昼休みは過ぎ去り、午後から二時限分の退屈な授業を消化すると放課後がやってきた。
まだ名前の決まっていない模型部とゲーム愛好会とラジオ研究会の面々は相変わらず部室としている空き教室でダラダラと遊んでいる。ただ、彼等の垣根は刹那のスモルトSSの製作をきっかけにして取り払われたようで、ゲーサーの面子もラジ研と雑談で盛り上がったり、ラジ研の面子もゲーサーと一緒にTRPGをプレイしたりしている。
最近では彼方もこちらに顔を出すようになり、今もローリーにコスプレ用小物の造形方法について相談に乗って貰っている最中だ。
永遠たちも天気が微妙な日や依頼のない日にはこちらにたむろすることが多くなっていたが、本日は昼休みに小耳に挟んだ小さな依頼の影響か真理と的部へのライバル意識のようなものが生まれた刹那はしばらくサボり気味だった練習を再開する為、永遠と共に河川敷へと向かった。那由多もバイク練習をする為にやや遅れて自転車で向かっている。
「永遠ー。今さっき信号のとこ真理いなかった?」
「こっち帰り道なんじゃねーのー?」
「前は別のとこで見たよー」
と、エンジンの回転数が上がりタンデム席の刹那との会話はそこで終わったのだが、永遠の中でこの会話は少しだけ違和感として頭の片隅に残っていた。




