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52 小麦色の肌をした少女


カンカンカンカン、と急を報せる早鐘の甲高い音が物見台から突然、鳴り響いた。


「鐘が全部で九つ鳴った。この村はもう終わりだ……今のうちに裏門から逃げるといい」


私の背嚢を入れてあった牢獄のカギを開けるとそう言い残し、食卓に立てかけてあった鍔のついてないシンプルな銅剣と弓矢を手に取り、火の手が上がっている入口の方へ向かって走っていった。


裏門ってことはたぶん今、少女が走っていった方向とは逆の方へ向かえば裏門に辿りつくのだろうが……。


そういえば、あの女の子の名前を聞けてなかったな? せっかく知り合ったんだから名前ぐらいは聞いておこうと思う。その過程で私が岩人と矛を交えることになっても仕方ない。私は彼女の名前を聞きたいだけなのだから。


建物の上に飛び乗って屋根伝いに村の入口を目指す。すると門の先、有事の際は切り離せるようにできている木でできた橋が不意を衝かれたのか縄を切り落とせていない。そこから次々と岩人とみられる種族が村の中へ押し寄せてきている。


見た目はおよそ人には見えない。丸い岩がカラダのパーツを作って繋がっている感じ……ゴーレムと言った方が私は納得できる。


建物の屋根の上から村のまわりに張り巡らせている塁壁の上へ飛び移る。そこから木で出来た橋を繋ぎとめている太い縄を水魔法を刃に変えて切り落とした。木の橋と一緒に岩人が落ちると岩でできているからだろうか、簡単に沈んでいく。


おや? 水に浸かるとカラダのパーツを繋ぎとめてた部分が(ほど)けてただの岩塊となって水底に沈んでいったのがみえた。


村の中へ侵入した岩人は全部で50体くらい。対して村人は数百人と十倍近い人数で応戦しているが、いかんせん武器が貧弱すぎて岩人の硬いカラダに傷を負わしきれておらず、ほとんど蹂躙されている。


おー、あの子とその周りに人はこの村の精鋭なのかな? 門に向かって左右は食い破られているが、唯一、正面は少女を中心になんとか持ちこたえている。岩と岩の隙間に刃を滑り込ませて斬りとっている。みると岩と岩の間に触手のようなものが千切れたのが見えた。熟練の戦士でないとあの芸当はできない。


よし、試してみるか。多くのひとが傷ついていくなか、私が取った行動は局地的な大雨を降らせるという変わったものだった。


やっぱりな……大雨に打たれると岩人はもだえ苦しみ、カラダがバラバラに分解して丸い岩がそこら中に転がる。


「今のうちに水の中へ沈めて!」


私が放った言葉にいち早く内容を理解し反応したのは例の少女とその周りのひと達……ボウリングの球くらいの岩人のパーツをバケツリレー形式で門の外にある外堀の水のなかへ投げ入れていった。


 ✜


「助かった、礼を言う」

「うん、感謝なさい。でも私に貴重な食事を先に提供したのはアナタだから私も礼を言わなきゃ」


お礼を言われた。私は素直に感謝の言葉を受ける。彼女の名前はシェル、可愛らしい名前だ。小麦色の肌した少女はその瞳だけで強い意志を持っているのが窺える。


「ちょっと待ってね」


そう言って、もう一度、塁壁へ登ると外堀を囲んでいた岩人たちがいなくなっていた。裏門へまわったかとも思ったが、物見台からの合図が特にないので撤退したのかもしれない。


遠隔魔法を使い、外堀に沈んでいた岩をひとつ掬い上げて、村人たちのところへ下ろす。


魔法で強化&被覆した拳でゴツンと岩を砕くと、岩の欠片のなかに巨大なクラゲのような生き物が死んでいた。


「岩の一個一個に同じようなのがいて、くっついて人のようなカタチをしていたと思うよ」


弱点は水……クラゲに見えるのに水が苦手とは前世の記憶がある私にとっては皮肉にしかみえないが、この地底世界の住人にとってはこの情報は生死を左右する貴重な情報だと思う。


せっかくだから、もうひとつお節介をしようと思う。


「この村のまわりって洞窟ない?」


──数時間後、私はシェルの案内で少し離れた丘の下にある洞窟のなかへ入った。


松明を準備してくれたシェルには申し訳ないが、私も鬼火(ビエラ)という辺りを照らす火の玉を5個くらい頭の上と前後左右に浮かべる。暗い洞窟のなかでは光源が足りずに命取りとなる、という場面も少なくない。


幸い洞窟のなかに魔物や魔獣の気配はなく、入口の方からずっと並行して発動していた探知魔法で目的の物がある場所を特定できた。


鉄鉱石……赤褐色をした鉱物で精錬すれば鋼になるのだが……。


銑鉄や鋼の工程を一気にすっ飛ばして鋼に作り変える。まあ、この魔法は私の可愛い人形兼魔法の師匠でもある賢者アールグレイの鉄魔法の教えの賜物である。大型の鎚やら鍬やら鎌などを生成する。襲撃に備えて硬い岩を破壊できる武器や日常生活で役にたつ道具を亜空間魔法のなかへ放りこんでいった。




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