現代版ミニ閣下――続編【2】
これで現代版は終り
”おじしゃん”こと儚い詐欺と楽しい時間を過ごしたミニ閣下
帰宅(帰国)後、楽しかったことを全身を使って両親に教えた
全身使いすぎて、途中で疲れて眠るくらいに全身で
楽し過ぎた一時の反芻を終えたミニ閣下
「…………!!」
両親の合いの手を思い出し
篤い信頼と実績(長ネギ)の
「へらくれち! へらくれち!」
「なんでございましょう? パウルさま」
ヘラクレスの元へ
「へらくれち。かってほしいものがあるのです!」
欲しいものなど父親に言えば「…………(視線を家臣に向ける)」で
購入してもらえるミニ閣下
そんなミニ閣下が、わざわざヘラクレスに言いに来たのは
「ご両親に秘密で、欲しいものがおありで?」
両親や懐刀を驚かせるための賞品を購入したい時
もちろん両親には筒抜けですが
「うん! ぱうゆ、おとうしゃまに、ちゅくってあげるの!」
「お父さまにですか」
”一品十万ドル程度ならば、事後報告で構わぬ”と
ヘラクレスが購入して良いことになっております
「なにを購入すれば宜しいのでしょう」
花畑の中にある、ファンタジー感溢れるガゼボで
「おじしゃんのおうちでたべた、かっぷやきしょばです!」
ミニ閣下、U.F.○の購入依頼
理由は簡単
儚い詐欺の家で楽しかったことを語っていた際に
閣下が「パウルの手料理か。わたしも食べてみたいな」と言ったので
「ぱうゆは、おとうしゃまのねがいを、かなえてさしあげるのです!」
U.F.○を作ることに
「なるほど」
U.F.○ 大放流事件があったお陰で
”店で買える”ことを学んだミニ閣下
購入できるのであれば「へらくれちにたのむ!」となって
こうして花盛りの庭のガゼボで頼んだのです
「おゆをいれて、ゆきりして、そーすをさいごに、まぜまぜする。えんすいだいを、さかさにしたいれものだよ!」
「なるほど」
ミニ閣下から欲しいものの特徴を聞き
メモしてゆくヘラクレス
メモは手書き――ミニ閣下は端末に触れる時間も決められているので
それ以外の時間は、接する人たちも
極力、スマホやタブレットを使わないようにしている
「んーとね、しょうひんめいは、ローマじがさんもじがいみなくならんで、さいごはOだった!」
ミニ閣下、商品名うろ覚え――
ヘラクレスは「そこまで聞けば分かるだろう」と引き受け
ミニ閣下が帰ってから
スマホでこの特徴を持ったカップ麺を調べ始め
「これだろうな」
ぽちった――
それから数日後、無事商品が到着
”キッチンに運んでおきました”と言われ――
「おとうしゃま。きょうは、ぱうゆが、らんちをちゅくってさしあげます!」
「ほぉー。それは楽しみだな」
「おじしゃんに、かっぷめんをつくったってきいたとき、おとうしゃま、いいなっていったでしょ。だからぱうゆ、つくってあげるよ、おとうしゃまに!」
「そうか」
そんな話をしながら、家族のキッチンへ――
「?」
清潔で広いキッチンのカウンターに乗っていたのはSi○
なぜそうなったのか?
一、円錐台を逆さにした容器→どちらも
二、最後にソースを混ぜる→ソースではないが、仕上げにオイルを混ぜる
三、ローマ字が三文字→Si○ と U.F.○ どちらも三文字だった
四、最後がO→伏せ字をお楽しみください
五、謎の単語→ヘラクレスはU.F.○が「unidentified flying object」の略だと知っていた――なので、意味不明な配列ではなかった
対してSi○は分からず――あとでソルトのことらしいとは分かったが、こちらのほうがヘラクレス的には意味不明だった
起こるべくして起こった間違い
だが、微妙に合っている
さらにミニ閣下は賢いので
「(これは、ゆにゅうようなのかな? ゆにゅうようになると、でざいんがかわること、ぱうゆしってゆーー!)」
そういうことだと解釈した――残念ながらSi○を作っている動画は見たことがなかったミニ閣下
ネット制限がなければ起こらなかったのだが
「(かいしゃのろごもおんなじだし! まちがいない!)まかせてください、おとうしゃま!」
ミニ閣下Si○を作ることに
ただしミニ閣下の中ではSi○はU.F.○なので……謎世界が構築、増殖したのだが、ミニ閣下の中ではそうなってしまった
丁寧に蓋を剥がし
「おかお、かわいいですね」
「そうだな」
お湯を入れて三分
そして
「ぱうゆは、おなじしっぱいは、しないのです!」
儚い詐欺に教えてもらったとおり
シンクにザルを置き
元気よく投入――
たしかに同じ失敗はしていないが
完全無欠の勘違いである
ちなみに閣下は側で怪我をしないよう監督しているし
蓋に書かれた注意書きも読んで理解しているが
「(湯を捨てるとは、書かれていないが、書いていないだけで暗黙の了解かもしれぬしな。なにより、パウルが楽しそうだし、自信に満ちあふれている)」
閣下は息子が楽しければ
どうでも良い人なので些事には拘らない
さらにミニ閣下は、自信に満ちあふれている子
「う、う~ん」
「どうした、パウル」
「ようきがちがうので、めんをもどしづらいのです」
U.F.○は戻しやすかったのですがSi○は……そもそも、戻す前提ではないので
「最後にこのソースを掛けて混ぜるのであったな」
「はい」
「ならば、パスタ皿でも良いのではないか?」
「……そうですね! おじしゃんのおうちでも、おさらにもって、たべてました」
「では」
皿を選び――麺がのびていくとかそういうのは、全く気にしていない
蓋の注意書きに「早く食え」って書かれてないしね
ざるにあげられた麺を皿に戻し
ソースだと信じて疑っていない小袋を開封し
掛けて混ぜ合わせ
「おとうしゃま、できましたよ!」
こうして作られたSi○が閣下の前に出され
「ありがとう。では」
フォークで巻き口へと運ぶ
「美味しいよ、パウル」
「でしょ! でしょ!」
笑顔()な息子の頭を撫で
これまた破顔()している閣下
「この美味しい料理を作ってくれたパウルに、感謝を伝えたい……なにか望みはあるか」
「おいしいで、いいですよ! おとうしゃま、ひとくちごとに、おいしいって、ゆってー!」
「そんなことでいいのか?」
「うん!」
「おいしいよ、パウル」
こうして閣下はミニ閣下と楽しい一時を過ごし――
「悪魔召喚の呪文を唱えているのかと思いましたよ……いつものことですけど」
抑揚のない「おいしい」の連呼を執事はそのように表する
執事としては「もっとテンション高く、楽しげに。パウルのテンションが上がるように!」との意味を含ませた言葉である
「ちゃるも、たべたい?」
幸い息子は、父の抑揚ない「おいしい」でも
喜んでくれる
執事に言わせると「お母さま似なんでしょうね。お母さまに似て良かった」
それを聞いた閣下は「まあな」……で「甘えないで、抑揚付ける練習しなさい!」と叱られる迄がセット
「作ってくれるんですか? 食べたいに決まってるじゃないですか」
世界一のグルメとも言われる執事、自ら望んで同じメニューを食べることになる
もちろん
「おいしい? ちゃる?」
「あなたが作ってくれたんですから、美味しいに決まってるじゃないですか!」
心から美味しいと感じつつ、喜んで食べた