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天使の弁護人 ~ノルマ未達の担当天使(Ray)が、現世にもどって彼女の冤罪を覆すまで~お仕事コメディ×シリアス法廷劇   作者: やままり


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3/3

第3話 孤独の真相


「誰って、あなたこそ誰?」

「忘れた? 仕方ないな、数世紀の時を越えた話だから――あ、僕は天使です。Ray、レイとでも呼んでおいてください」


RayはVサインを掲げて立ち上がると、ニカッと微笑みウィンクした。


これが天使か――確かに、顔はいい。

だが、いきなり転んで、怒ったり笑ったり気性が激しすぎるだろう――ヒカリの中で、早くも警戒心の安全装置がカチリと作動する。

「今は結構です……また、折がありましたら」


それ以上関わらないよう、ヒカリはすぐに店内に逃げ込むように引き返し、レジ打ちの作業に没頭した。


「でさ、ヒカリは、いつも孤独でしょ?」


不意に、頭の芯で響いたその声に、ヒカリの手がピタリと止まった。

前後左右を確認する彼女のつややかな黒髪に、天使の輪が光り輝く。

どうやら、周囲の客には聞こえていない。


聞こえているのは、さっきの天使の声――彼女の魂に直接語りかけている。


「でね、ヒカリは、もう次の天界入りが決まっているんだ。

だから、魂の周波数も、この俗世からかけ離れている。

ヒカリに合う人がいない、つまり、この人間社会の俗っぽい関係性が、あなたに合わないのは、当たり前なんだ。それが、孤独の真相さ」


(……っ)

思わず、手にしていたバーコードリーダーのセンサーを滑り落としそうになって言った。

「す、すみません……」


レジカウンターの中で、いつも通りの仮面を張り付けながら、しかし心の中は落雷に打たれたような衝撃に揺さぶられていた。


そう――生まれたときから、この世界は生きづらい場所だった。

周りの人と、なぜかかみ合わない。話が、感覚が。


どこか透明な壁一枚隔てられているような疎外感があった。

変に浮くか、空気のように扱われるか。


自分が世間知らずなのか、それとも人間として欠陥品なのかと悩んできたけれど――


理由は一つ 『居るべきステージが違っていた』からなのか。


「だから、僕が迎えにきたよ♡

いっしょに僕らの天界へ行こう! もっと高くて、美しい場所へ」


圧倒的なスケールで、ヒカリの魂に響き渡る、天使の言葉に、胸の奥が熱くなる。

揺さぶられる心を必死に抑え込みながら、ヒカリは誰にも見えない天井を仰いだ。


その時、コンビニの自動ドアのチャイムが軽快な音を響かせた。

入ってきたのは、あのいつもの客――零(れい)だった。


背中に、トレードマークのギターケースを背負っている。

夜の仕事の名残か、生まれ持っての異質さか、銀の髪と銀の瞳が蛍光灯の下で異彩を放っている。

生成AI画像ワールドから抜け出てきたようなその顔立ちは、しばしば、すれ違う人を振り返らせるものだった。


いつも通り、棚から手に取ったペットボトルが、無言でヒカリの目の前に置かれる。

ヒカリは彼の顔など見向きもせず、無表情のままバーコードをスキャンした。

「120円です」


(……袋は要るのか、聞かないのかよ)

心の中で悪態をつきつつ、零は口を開く。「袋もください」


「123円です」

ヒカリは、一番小さな袋にペットボトルを放り込み手渡した。

(相変わらず感じわりーな……まあ、笑えば、普通にかわいいかもな)

零は内心で毒づきながら、特に会話を広げることもなく、店を後にした。


その一連のやり取りを、少し離れた天井の隅から眺めている存在がいた。

そう、またまた、ヒカリの隣にふわりと浮かび、真剣なまなざしを送るあの天使、

もしくは、来世の零――Ray(レイ)。


零とヒカリのすれ違いに、微笑ましくも、どこかもどかしいようなRay。

突然、Rayの耳元で、装着されていたインカムから電子音と割れるような声が響いた。


『――Ray、通信状態はどうだ。そっちは進んでいるか?』


挿絵(By みてみん)


(つづく)


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