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【祝10000PV突破】何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第八章

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囚われて

揺れる機内の中

目を覚ますと、君塚は少々の揺れと隣で気絶しているレーナの姿を視界に収める。


「レーナ……ソコロワ大尉……」

「おや、目覚めた様だね君塚悠里。さて、この場でもって感動の自己紹介と行こうじゃないか……ああすまない。極上の紅茶は用意していたんだが、載せてたヘリは生憎、君の妹……それとも弟さん? かな、そちらの銀髪のバケモノに叩き斬られて落とされ、大勢が討たれてね……」


ケラケラと狂ったように笑いながら軍用ヘリコプター(Mi-26)の中で黒髪の女が君塚悠里を見据えまるで歴史的勝利を宣言するかのように話始めた。

君塚は簡易座席に乱暴に座らされ背中に腕を回されて手錠をかけられている事を確認した。

そして隣に座らされているソコロワ大尉以外にも何名か捕らえられていて頭から麻袋を被せられているが、その服装や体格からメンバーが誰か察するに余りあった。


「ニケ……ナディア……アナスタシア殿下……。くそっ、成る程、俺に対する抵抗を防ぐための保険って訳か」

「ご明察だよ。そしてはじめまして、君塚悠里。私は新倉 菜月。鷲の国だと『ニーナ・イワノヴナ』とも名乗っているがどちらでも好きに呼び給え同志よ。これからは貴殿も我が偉大なるソビエトの『友』である」

「俺は、勝ち気で強い女は多数知り合いに居るし、俺の保護した女も今や立派な女王に成ったが……お前のような自分の夢の中で組み立ててしまったイデオロギーに酔った狂人のクソアマを身内に引き入れた覚えは全く無いぞ」

「おやぁ……? これはレディに対して酷いな。私はこれでもソビエト社会主義共和国の第一書記、つまり書記長なのであり、国家元首であるのだよ? 大国の指導者同士、もう少し言葉は選び給え」

「お前がレディなら路地裏の娼婦は清らかな天使だし。なら俺もお前の望み通り自己紹介してやろうか?」


売り言葉に買い言葉。新倉と君塚は、轟音を立てて飛行するヘリの機内で、互いに憎悪を剥き出しにして言い合っていた。


「俺は平原の国摂政、君塚悠里。血液型はA型。そして平穏な日々が目的の、ただのしがない……多分、この世界での経過年数を含めたら、34歳のオッサンだ」

「成る程、君はまだ肉体的には20代なのだね君塚よ。だったら私とそう年は離れていないようだ、安心するね。私は転生時24だ、今なら30かな? 血液型はBさ」

「おいおい。女なら年齢を初対面で明かすのは無神経なバカのやる事じゃないのか? 普通のレディは訊かれない限り年齢を明かさないぞ」

「私は誰にも頼らない、自立した公明正大かつ立派な大人だからな。包み隠すような恥辱は無い。まぁ、つい気分が乗りまくっているんだ。君が今こうして捕らえられたなら私の抱えていた全ての問題も綺麗に解決するしね」

「お前の作った歪なソビエトの惨状にうちの元帥達は全員鼻をひん曲げて唾吐きかけてたが、どうだろうか? 一回公式にうちの国に視察に来ないか。まともな統治がされている国というものをお見せしたい。ソビエトの崩壊を防ぐためにも悪くないと思うぞ」

「まとも? はっ、こんな理不尽なデスゲームの世界に、何がまともな事があるもんか。弱きは神々やチートに挫かれ、強きは理不尽にのさばる。そんな世界がまともな訳があるか!」

「……ま、そう言う『力こそ全て』のシステムが有るからこそ俺は正気を保って理性と知性と努力で戦うのに徹しているが、お前は狂気に染まり、あまつさえ敵も味方も民も兵士も構わず虐殺すると」

「私が『敵』と指定した者が敵であり、『味方』と見做した者が味方だ。それ以上でも以下でもない。勘違いするな」


そうして口論する二人の声が聞こえたのか、ソコロワ大尉が呻きながら目が覚めた。


「……同志……閣下……」

「レーナ。どうやら我々は祭りの隙を突かれて捕らえられてしまったようだ。俺の迂闊な判断がこんな事を招いてしまったな……すまない」

「……アレが、例の狂王『新倉』ですか」

「そうだ。アレが例の狂ってるアホ女だよ。まさかこんな形でお会いするとは信じられんがな」


レーナが新倉をギッと睨みつけるが、余裕の笑みは崩れずに新倉は座席の麻袋を被せられた人質の一人にマカロフPMを突きつける。


「ほう、おやおや。部下の躾も成っていないような人物が君に仕えているとは驚きだよ同志君塚。全く無礼な輩だなぁ。おいそこの、コイツの麻袋を外せ」

「はっ!」


スペツナズの兵士に麻袋を外された人質はアナスタシアだった。

君塚は怯えきっているアナスタシアを見て歯軋りしかけたがそれさえも目の前の新倉に「弱み」として利用されないようぐっと堪えた。

泣きそうな表情のアナスタシアは噛まされていた猿ぐつわを外されて発言の機会を得ると頼りにしていた人物へとすがるように話しかけた。


「き、君塚様……!」

「アナスタシア殿下! ……申し訳ございません、私の警備の不手際でこの様な事になり、不覚の致す所です!!」

「よくわかってるじゃないか同志よ――」

「新倉。今回の件で、お前は将棋の『王手』をしたつもりなんだろうが、一つだけ言わせて欲しい」

「……勝者の私の話を遮ってまで言いたい事とは何だ? 命乞いか?それとも…」

「今回の件で王手をしたつもりなんだろうがまだ『詰み』じゃないぞ。俺は今でさえ、何枚も手札が有る。お前はどうなんだろうな? これがお前に残された最後の手札だったんじゃないのか? 核砲弾は自国が吹き飛ぶから安易に撃てない。平原の国の資産や資源が狙いなら核を撃つと全ての予定がご破産だ」

「……捕虜のくせに、減らず口が」

「お褒めいただき光栄だ、ファシストの犬め。それと殿下、ご無事で何より……。後ニケ、ナディア、頼むから今は耐えてくれ。もうじきに事は好転する」

「しないよ、絶対にしないさ。我々は既に平原の国から脱出し、今は龍の国とソビエトの国境付近だぞ? 君の軍隊はおろか空軍のレーダーからも完全に消えた。お前は国に見捨てられたんだ、君塚悠里…ああ、この時間ならもう国境を越えて鉄道駅が近付いて来るな…私の勝ちだ君塚悠里」

「そうかい、負け犬の遠吠えにしか聞こえないがな。それとアナスタシア殿下、お辛い事ですが、新倉に後少しで……いや、もうすぐご家族の仇を討つ事は出来ますから、今しばらくご辛抱をください」

「……はい!」


諦め、投降するように語りかける新倉だが笑みの裏で瞳には一切の余裕が消し飛んでいて、君塚悠里の痛い所を突く発言に心当たりが有ったようである。

一方でアナスタシアは君塚に何か『決定的な策』が有るのだと信じた。たった数日しか共にいないがそれでも何も信じないより遥かにマシな、半ば現実逃避のようなものだが前向きに考える方が賢明だと考えてるが故に信じるのである。

きっと、いつだって最後まで希望を信じる者が救われると考えているのだから。


「無意味な……ならここでこの反動的分子の象徴たる鷲の国の姫君を始末して、お前の大切な妾どもも全員始末してやる。ついでにそこの、護衛兼愛人の腐ったメス犬もな!!」


全員の麻袋が取り除かれて全員の顔が君塚の視界へと入ってくる。

全員が悔いや悲しみを浮かべた表情をしているが君塚への期待や希望を折られているわけでなく、むしろ信頼し全てを託しているようである。


「彼奴等をどうやって連れてきた」

「ハインドが数機居れば可能さ。お前たちが逃げる為の車両をロケットで吹き飛ばして、気絶したところを私の兵士達に収容させた。無論君塚悠里、貴様を捕縛した『後』で彼女達を連行したけどね……ああ。ついでだから君を人質にしたから彼女たちの無力化は簡単だったね」

「成る程……そうやって、俺という人質を使わないと、彼女たち一人を制圧することも何も出来なかったと? 弱い貴様らしい……」

「捕まった貴様がそれ言うかね、何も出来ないくせに…」


少しだけ苛立ちをあらわにした新倉はマカロフの安全装置を解除してスライドを引き、9mmマカロフ弾を薬室内に装弾した。


「ごめんなさい、悠里……」

「ニケ様の責ではございません。私の護衛としての不徳の致す所です」

「私が……もっと魔法の力さえ有れば……」

「責めるな。お前たちのせいじゃない、これについては俺が完全に悪かった」

「……撃つなら撃ちなさいよ! どうせ撃てないクセに! アンタの敗北はその瞬間に決定するわ!!」

「そうです! 私達が貴女に降って誇りと愛を捨てるくらいなら喜んで死にましょう!! 私は貴女のような愚かで独り善がりな方などに屈しません!!!」

「あの世の家族に会えるならそれも良いかも知れませんがこの痴れ者が悔いながら死ぬのが見れないなら、それは大変残念です!」

「どいつもこいつも、負けた捕虜の分際でよく喋る!!」


笑みを完全に消した新倉が激情に任せたままマカロフPMの銃口をニケの額に押し当て、引き金を引こうとした瞬間――またしても彼女へ不運にも邪魔者が現れた。


〘あらあら、これはこれは。面白い事に成ってるわねぇ、チェルノボーグ?〙

「!? 誰だ!!」


突如として天から響く鈴を転がすような少女の声色に驚いた新倉はつい拳銃を機内の天井に向けて一発発砲してしまった。

そしてそれは何にも当たらず機内に弾痕を残すだけにしかならなかった。


[えぇ、ベロボーグ。本当に面白いわね……今死にかけてるのにわざわざ啖呵を切るなんて。特にニケ、貴女は今死なれると、システム的にちょっと困るし]

〘まあまあチェルノボーグ。どうせだし、あの愚かな人の子に一泡吹かせてやりましょう?〙

[良いわね! ならベロボーグ、やるわよ]

〘はいはい、チェルノボーグ。やりましょう〙


その瞬間。

青い稲光と共に落雷のような轟音がMi-26の機内に響き、巨大な機体が大きく上下左右に揺さぶられながらまるで巨人の手で弄ばれるように空中で激しく振り回された。


「な、何だこれは!? どうなっているんだ、機体の制御が利かないぞ!!!!」

「ひいいいい! ど、どうなっているんだこれは〜!! き、機体が揺られる!? 壊されるぅ!??」

「新倉! 貴様そんな情けない悲鳴を上げる事が出来たのか!? 人生最大の驚きにして発見だぞ!!!」

「同志閣下! 耐ショック姿勢を!!」

「くっ! 何ですかこれは!?」

「ああもう!だから、そんな物理的な干渉の使い方はシステムの想定されてない使い方なのに何でするのよ〜!!」

「あああああ!き、君塚摂政様!! 助けてください!!」

「あらあらあら、チェルノボーグ!大変よ、思ってたのと違うわ……」

「どうしてこうなるのよベロボーグ!? 普通、何か神々しく光と共に降臨するんじゃ、うわあああああっ!!」


当の神々本人達も空間への強引な干渉による反動と電気エネルギーによる操縦系統へのダメージで壊れ行く機体の中でしがみついていた。

取り敢えず機体がメチャクチャに回転しながら墜落している中、何とか生存しようと必死になる機内のメンバー達で有ったが無情にも大地がグングンと近付いていき、遂に彼らを乗せた機体は鷲の国の深い森林地帯に轟音をあげて墜落してしまった。



一方で平原の国では既に国内軍が全軍出動し、龍の国国境地帯まで本隊が到着し防衛と侵攻の陣地を展開している。

ソビエト軍に囚われた君塚はそのまま連れ去ろうとする新倉へ追撃を行い、国内軍の地対空ミサイル以外にも美羽の自爆型鳥魔獣等も総動員され多数のヘリを撃墜した。

しかし新倉の乗る機体は巧みな技術と地形効果でレーダー網を掻い潜り、そして他の機体を囮にして何とか落ち延びていた。


そしてその乗っていたMi-8から全員を一旦降ろして航続距離の長い大型のMi-26に乗せ換えて本国まで運んでいたのだが――この巨大ヘリの不自然な墜落を司令部からヤドヴィガや透が、上空を飛ぶ『フォルポスト-M』から送られている高精細な映像を将帥達と共にモニターで確認していた。


「なんてこと……ああ、そんな……君塚様……私が、もう少し力が有れば……ううっ」

「に、兄さん……わ、私、私がもっと早くあいつを切り捨てていれば……こんな、事には……」


二人の少女が通夜の遺族の如く嘆き悲しんでいるが他の軍のメンバーは画面を極めて冷静に眺めていた。


爆発し炎上しているなら間違いなく全員死んだようなものだろうが、爆発も出火もしていない。

機体が折れて煙が燻っている程度の状態であるが故、「あの君塚ならまだ生きているのではないか?」と思っているのである。

ついでに言えばもし君塚が死んでいたとしても、ソビエトへの『無慈悲な報復攻撃』は確実に実施されソビエト社会主義共和国の崩壊と戦後における復興の段取りさえ既に参謀本部で決まっているのだ。


たとえ、大義名分であるアナスタシアが死んでも尚彼らからしたら特に問題は無い。

全ては東側ドクトリンらしくあらかじめ決まった既定の作戦に則り全ての事項が滞りなく淡々と行われるだけなのだ。


「あ、何か残骸から動いてるぞ」


キリル・メレツコフ元帥が無人機の映像から何かが這い出て来る姿を目視した。


「……アレは新倉か。くそっ、厄介なメス犬め……頭を切り落としてもきっとアレは生きているぞクソったれ!」

「ああ……もう、あの墜落で死んでくれなかったのを、こんなに恨めしく思うなんて!! 今から私の部隊(空挺軍)を差し向けてやろうか。いや、向かわせる! 同志摂政閣下の救出なら『特別軍事作戦』として言い訳も立つしな!!!」

「待て同志達、何か別の機影が近付いてくるぞ。少し西にカメラを向けろ、オペレーター」

「了解であります!」


フョードル・トルブーヒンやワシーリー・マルゲロフといった猛将たちもわざわざ前線から本国に帰還して確認していたが新倉が軍服をボロボロにされながらも脱出している姿を目視し悪態がそれぞれ出た。

だがそれらの空挺降下作戦の議論を一気に打ち壊す異常な報告が、いや『ありえない映像』が司令部に飛び込んでくる。


「あれは……確か、西側の兵器資料によると……」

「UH-60……『ブラックホーク』……? 何でこんな所に……我が国内軍には配備されていないぞ? ……不味い!! 第三勢力だ!! 急いで閣下をお救いするのだ!!!」

「嗚呼神様!! どうしてこうも閣下には運がないのだ!?」

「まさか……あの、その。ロコソフスキー元帥? あれって……」


ヤドヴィガがいつも君塚が信頼していたロコソフスキー元帥に恐る恐る尋ねる。だが彼は青褪めさせていた表情を何とか取り繕い、しかし事実を冷静に説明した。


「……申し上げにくいのですが、殿下……あれは高地の国の国防軍のヘリでも我々国内軍にも配備されていない兵器であります。ですので――」

「おい! 大変だ!!」

「次は何だね、同志よ! もうおかわりは良いぞ!!」

「え、エイブラムス戦車……『M1A2 エイブラムス戦車』がヘリの墜落現場の近くに!!」


その監視オペレーターの絶望的な悲鳴は君塚悠里という男を失いかけている司令室内にひどく冷たく響き渡った。

何者かの陰

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