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何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第六章

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そして少女は悪逆を敷く

不審な荷物には気をつけよう

門前にて厄介な存在が来たら一体貴方はどのように対応するだろうか?

具体的に言えば今来たら困る荷物が、男性で言えば妻に言えないふしだらな雑誌であったり、女性で言うなら夫に無断で購入した高級バッグであったり…つまり家族に打ち明けにくい荷物だ。

それかもしくは…きっと宛名も宛先も合っているが頼んだ覚えも届く心当たりさえも無い、そんな謎の荷物かもしれない。

そんな時、貴方はどうする?


君塚はナディアが運転する車で邸宅に帰ると謎の荷物が自宅に届いている事を玄関でオロオロと慌てふためいていたゾフィアから伝えられ何となく内部のものがろくでもない物である事は察していた。

美羽がギフト『魔獣創造』で咄嗟に出した犬型魔獣達により安全は確認出来ていたが木箱を壊して開けるほど勇気は無かったしアホでもない。


「ご主人様、お下がりくださいませ。念の為糸で押さえ込みましたがもし開いたら私の糸でも押さえられないかもしれません」

「つむぎちゃん…一応中身を確認したけど中から強い人の臭いはするよ。でもそこまで臭くないから生きてるとは思うけど…もしかしたら暗殺者が潜んでるかも」


念の為見えない程細く、しかし頑丈な糸でつむぎが雁字搦めにして内側から箱を壊せ無いようにしつつ二人のメイドは主や自身から荷物と距離を取らせつつキッチリとカバー出来る範囲にしている。


「すまない二人とも、いろいろ疲れているだろうにこんな面倒をかけてしまったようだな。(スドプラトフは何も言ってなかったが一体どうしたんだこれは)」


君塚は目の前の箱に警戒しつつ自身もMP-448を向け慎重に扱おうとしたがその時邸宅のドアを呑気に開ける音がした。


「もうどうしたんですか〜皆さん、いきなり夜なのに騒がしくしてぇ…ふあぁ」


玄関での騒動に気づいて夕食がまだ食べられていないので欠伸をしながら綾錦繭が出てきた。

君塚やメイド達、そして学園の生徒達の為に被服生成のギフトを行使してついでに国内軍の兵士達にも特殊作戦用の泥濘を泳げる服を作成したりしていた所でこのドンちゃん騒ぎである。


「あら?こんな荷物いつの間に??」

「離れてください綾錦様。それは「危険な荷物」かもしれません、お下がりを」

「ふーん…ならですね」

「! 待て繭、それは─」

「悠里さん、あなたは私のギフトの特性をお忘れですか?」


興味を持った綾錦は巨大なマントを出してそれをブワッと広げて箱を覆い隠した。


「私のギフトは『被服生成』、どんな衣類も作れます。それこそ核の放射能汚染に耐える防護服から魔法を無効化する素敵なマントまで!だからこうやって包んでどんなトラップも無効化するマントで無効化しちゃいます!!例え暗殺者でも武装が解除されちゃうオプション付きですし!!!」


そのマントをかけてから暫く放置し、後で布を退かすと雨宮は特に臭いについては変化はせず危険性は排除されたようである。


「くそっ、特殊部隊をこんな時に呼べたら…だが…」

「はい、閣下。このようなタイミングで呼び出したら間違い無く騒ぎが起きてしまいます。ズラトポルの夜を賑わせたいなら構いませんが明日の朝刊の見出しは閣下暗殺未遂で賑わうでしょう」

「勘弁してくれ…」


特殊部隊の運用について悩んでいたが結局の所さっさとこの大きな木箱を開けるしか無いのが現実であり、事態を前に進める為に一旦糸を解いた。

つむぎは糸を蓋をしていた釘に結び付け、君塚を自身の背後(射線の死角)に庇いながら、一気に引き抜いた。


「ギィッ……!」と木が軋む音と共に蓋が外れる。

爆発も、毒ガスも発生しなかった。


そして中から現れたのは泥だらけでボロボロの衣服を身に纏った少女である。


彼女は少なくとも呼吸しており心臓も鼓動を打っていることは雨宮の魔獣達には聞こえていた。


「…美雨」

「わかってるよつむぎちゃん」


目配せした後糸でそっと彼女を抱き上げて優しく下ろしたつむぎは繊細かつ慎重に全身の状態を確認していた。


表面上特に問題らしい問題は無く、細かな怪我は多数あるが出血量も多くはない。

平原の国に辿り着いたこの荷物の中身は一体何処から流れて来て誰が送りつけて来たのか、そしてこの職場は何者か?


「…こうなったら仕方がない。つむぎ、美雨。早く彼女を中へ、それと繭、この小さな客人へ服を。こんなボロボロの布切れでは見窄らしいし不憫だ。それとナディアは俺と来い、今回の件の対応を今検討するぞ」

「はい閣下」


疑問は尽きないが取り敢えず君塚は家の主としてこの少女を屋敷の中へ迎えるよう愛する家族達に対して指示を出した。


「はいご主人様!ほら美雨、彼女を運んでちょうだい。それとゾフィーはその木箱を屋敷内へ、台車とジャッキはすぐそこに有るから!それと繭様はダイニングへお戻りくださいませ。すぐにご夕食をお持ちします、ご主人様はいかがされますでしょうか?」

「いや、俺は…そうだな、わかった。食事は全員揃えるように成ったら呼んでくれ。それとこの場はつむぎ、君に任せたい」

「かしこまりました」


そう役割が分かれると君塚はすぐさま自室へと向かいナディアと話をし始めた。


「…しかし、一体誰がこの『爆弾』をウチの玄関先にまで届けたんだ? 鷲の国から竜の国を跨いで国境を越え何重もの検問を抜けて、平原の国の摂政の私邸に不審な木箱一つを直接送り届けるなど普通の運び屋にできる芸当じゃないぞ」


ゾフィアは必死に重い木箱を運んでおりジャッキで無理やり箱を宙に上げてその隙間から何とか台車に載せていた。


「面倒な事になり始めてしまったな…あの娘を保護したは良いがこうなるとまず身元も確認しないといけないし…それだけじゃない東方世界の動向も気にしないと…」

「はい閣下。東方世界についてですが少々こちらも調べた結果ある程度判明いたしましたので報告はよろしいでしょうか?」


ナディアは東方世界について纏めて資料をポータルを作り出して取り出し主へ差し出した。


「…ナディア。その魔法何時覚えて来た?」

「閣下、人は何時でも成長するものです」

「そうか…、もし俺の為に覚えたとするならありがとう。今後もこの国と俺の為に支えてくれないか?」


そうナディアを労いの言葉をかけると恭しく一礼すると気恥ずかしそうにはにかんだ。


「ありがたき幸せにございます。今後も閣下の為にも自己研鑽を怠らぬよう日々邁進いたします。…えへへ」


いやまあ割と破顔しているが気にしないでおこう。


そして書類をめくり東方世界の内情や西方世界との比較などがされており、それは中立的な視点で書かれていた。

例えば百合の国は今最も東方世界で危機感を煽っていて、そして王族を含む貴族達は最近長子相続制では無くなり分割相続を出来なく成ってしまったことによる次男三男、そして冷や飯食いに成ってしまった者達が多く西方世界への侵略で彼らの領地を封じようとルイ=シャルルは検討していた。

無論、他の国にも呼び掛けている。


それだけでなく雄牛の国と金薔薇の国と呼ばれる国がそれに呼応して自国の冒険者ギルドに呼びかけて兵士達を募っている事も知っていた。


金薔薇は英国のような国家であり低地の国と度々小競り合いをして植民地戦争をしていたが、金薔薇のガレオン船に対して重一等戦列艦等で低地の国が応戦し、最近では低地の国の近代化された弩級戦艦に撃破され本土に密航させた魔法使いはあらかじめ彼女のギフト『空間絵画』でポータルとなるドアを設置し国王ウィレムから要請を受けその魔法使い達を全て黒で塗りつぶし存在を抹消させ、魔法が使えず動けない彼らをじっくりもねが[尋問]したそうである。


そう、ナディアはこれらの情報を君塚の秘密ブロマイド写真集で取引を行いもねから聞き出した情報や同盟関係を利用してウィレム王への秘密交渉により手に入れた情報を君塚へと流しているのである。


「凄いなこの情報は…後西方世界への難民の記載が有るが平原の国に流れ着いている者は居るかね?彼らに会う必要が有ると思うが」

「はい閣下、既にリストアップを完了し連絡が付く者の所在と連絡方法も確認済でございます」

「仕事が早いな、ならコンタクトを取れ。彼らの存在を利用する」

「かしこまりました」


そして東方世界への今出来る対処を伝えて二人は仕事を置いておきプライベートな時間に切り替えようとした。


「それにしてもナディアを迎えてからもう6年…それくらい経つのか。俺達は元は敵対者だったと言うのにこうなるとは思いもしなかった。お袋さんは元気か?」

「はい、母もすこぶる体調は良くなったので今はもう一人で旅行にも行っているそうです」


そうして母の旅行先の写真を見せると、確かに彼女は笑っていてかつてスルタンの血を引く聖女を産む母胎として確保されていた戦狼の国から解放されてからすっかり一人の女性として生きていた。

そしてナディアも今頃聖女として何処かの貴族に下賜され妻として子を産む機械にされていたのは違いなかった。

今や戦狼の国は平原の国に対抗さえ出来なく成ってしまったがそれでも尚近代化しつつ世界各地の聖女の誘拐や人身売買を行なっていると聞く。


「まぁあの国に居たらナディアもろくでもない目に遭わされてただろうし、それに…」

「それに?」


歯切れの悪い言葉にふと気になったナディアは追求してみた。


「それに秘書として美人の君をこうやって毎朝毎日見ることが出来なくなるじゃないか。俺は君のことは個人的に好きでは有るんだ」

「…!!」

「だが何も解決していない今返答するのはおかしな話だろ?それに君にこんな立場でこんな地位に居る時に告白するのはやはり…それに人間関係もまだ整理出来る段階では無い。だから、もう少し待ってくれ。不誠実な結果に成ろうと俺は君を不幸にはしないと誓うよ。君が望まないなら…俺は今の言葉を取り下げるが」

「そ、そんな!閣下であれば私はいつまでも、いつでも喜んでその言葉をお受けしますから!!だから、私も、その、よろしくお願いします…!!!」


そんな二人の間に静かに三度ノックがされた。


「ご主人様、夕食の支度が整いました」

「わかったつむぎ!すぐ行く!!…は、はは、だがもし妻帯するなら多分一夫多妻制だなこりゃ…はしたない事この上ない」


少し自身に軽蔑したが君塚()に叱咤するのが良妻の使命と考えたナディアは悩みを解決させようと自分なりの元々考えていた答えを告げた。


「閣下、いえ。悠里、もし貴方が迷い惑っているなら私はどのような決断でも受け入れますからそのまま進んでください」

「ナディア…」


満面の笑みで君塚の進むべき方向を推していく妻としての覚悟を見せた後、慈愛のある、しかし少し怖い表情で告げた。


「ですが悠里、貴方がもし悪しき方へと向かうのであれば私も貴方を止める覚悟は既に致しておりましたのでその点もお忘れなく。妻として、貴方を正すのも役目ですからね」

「ひっ…わ、わかってるさナディア…どうしてこうも俺の側の女はこうも…」

「権力者の側に居るなら愛だけでなく利害も鑑みて動かなくては成りませんから」


やはり君塚の側に居るなら女は気が強い方が良いようである。



そして温かな団欒の君塚の夕食の裏で一人の少女─アナスタシアは悪をなす覚悟を決め君塚を利用すると心に決めていた。


正規の方法ではもはや亡国の姫君など何の価値もなく、遠からずニーナと名乗る狂人の放った刺客に暗殺されるのが関の山だろう。

それが地球上の裏だろうときっと刺客を送り込むに違いない。


なら生き延びる為に平原の国の権力者の君塚悠里をどうにか利用するしか道はなく祖国を取り戻すのもやはり独力では不可能だ。


そんな中ふと誰かの気配がした。

それは少なくともこの屋敷の玄関で騒いでいた者達では無い。


「ねぇ、君はアナスタシアさんだよね?鷲の国の最後のお姫様でしょ」


そう語りかけてくる甘く優しい鈴を転がしたような可愛らしさも含んだ声、そして放たれる甘い芳醇な香り。


「兄さんを利用して祖国奪還と復讐を成したいのは分かるけどさー、兄さんへ頼みごとをするならもう少し真っ当な方法でやりなよお嬢さん」


不法侵入した君塚悠里の(元)弟で総主教の君塚透がアナスタシアを吟味していた。


「わかるよ、確かに兄さんは多忙だから君のような爆弾娘が来てむしろ殺されるんじゃ無いかって。そりゃ思う人も居るよね~。でも兄さんはそれだけはしないんじゃ無いかな?」

「…」


「悪をなすとかほざいて狸寝入りしてるような女なら話は別だろうし、このまま殺っちゃっても問題ないかもな〜」


大剣をスラリと抜いてアナスタシアの首に当てた。冷たい鋼の感触に肌が粟立つ。

アナスタシアはぐっと堪えて耐え抜いていた。震える唇を噛み締め、決して悲鳴を上げず、ただその群青色の瞳で、自身を脅かす透を力強く睨み返した。

自身を救った両親の為に、一族や臣民の為に。この場を死ぬ気でやり過ごしてみせると、幼い彼女は歯を食いしばり耐え抜いていた。

「……ふーん、良い目をしてるじゃん。わかったよ、お嬢さん、ならそのまま寝てなさい─」

でないと殺すよ?と底冷えするような声で言い残し透は去った。



そして食事を終えて慌ててやってきた君塚はアナスタシアの居る部屋へと向かう。

弟から差し出された手紙を見て飛んでやってきたのだ。


復讐をするとして

きっと悪を成してでも

それを正義と呼べなくても

決着を付けなくてはならないからこそ

尊厳と未来を守るため立ち向かう



歴史は私を許すだろう

例え泥にまみれようと

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