表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/86

気持ちの良いものだ

そう聞いていた筈なのに

「ふっ!ふん!はっ!!どうしたバケモノめ!さっさと再生しないか!人間は切られたり撃たれても再生出来ねぇんだ、おめぇみてぇなバケモノじゃなければなぁ!!!」

「…!!…ッ!!!」


燃料気化弾頭に敗れ囚われの身に成ったクレマンスは「処置室内」で国内軍の尋問官からずっと顔面を殴打されていた。

東方世界における魔法による治癒能力の確認である。

クレマンスはずっと無言で耐えていたがしかしこの検査に対して反抗的な態度を示していたがデータはキチンと採取されていた。


「もうよせ、これ以上殴ってもコイツは何も出来ないようだぞ。それにコイツは今から捕虜として扱う事になるから捕虜虐待は国際法が無くともモラルの話が発生するから禁止だ」

「はっ、かしこまりました閣下。やはり杖無しの無言では魔法を発動させる事は叶わないようです。食事にも致死量未満の毒物を混ぜて提供しましたがバイタルは徐々に弱まっていますし何よりもう反応が有りません」


観察していた医官がクレマンスの容態を簡潔に伝えた。

クレマンスは抵抗する素振りさえ見せずむしろ涎を垂らしながら殴打により赤く腫らした顔には歯も抜け落ち唇は閉じる事さえ叶わない、口から漏れるものは唾液以外では謎の意味を成さぬうめき声位か。

眼球は飛び出かけていて直ちに医療的処置が必要であるのは明白だが、君塚はやはり虐待していた兵士同様恐怖している自身が存在する事を否定できなかった。


「…コイツはこれだけの事をされてもまだ生きるのを諦めていないとは、ファンタジー世界とはつくづく恐ろしき世界だ。生きる事を諦める事が死の世界であり、こちらの生きているから生きる世界とはまるで違う」

「そうかな?ただ運が良いだけの様に思えるけど…」

「いいや透、間違い無くコイツは死にかけている。だがそれでもまだ諦めていないから死ねないんだよ、幻想で一番強いのは思い込みなんだろう」

「そうなのかな?」

「そうだろう。取り敢えず透、コイツをある程度まで治癒してやれ」

「うん。わかった」


そして君塚は衰弱しきっているクレマンスの治癒を透に命じた。

そしてクレマンスの容態は彼女の治癒魔法によりみるみるうちに回復し手赤黒く白魚のごとく細く白い指がしなやかな肢体が蘇り足も複雑に折られていたが見事に健康的な肉付きの良い脚部が戻って来た。

だがクレマンスは安心したのか何も言葉を発さず糸を切られた人形を彷彿とさせるようにそのまま気絶してしまった。


「…あちゃ、やりすぎちゃったかな?麻酔代わりに兄さんにしていた魔法も混ぜて治療していたからか寝ちゃったよ。どうする兄さん?」


話を振られた君塚は申し訳無さそうな顔をしてそっと割れ物を抱える様に優しくお姫様抱っこでクレマンスを担ぐと不服そうな透に向けて自分を律するために返答した。


「どうするもこうするも無い。取り敢えずコイツを何処か安全かつ監視出来る場所にお住まいいただくしか無いさ」


だが君塚は続けて己の失態を口にして悔いを言葉に綴る。


「やってしまったよ、コイツは人間だった。信じきれなかった俺が今は憎いよ。敵に怯える、俺の心が今は憎い。まるで実験用動物を使うように人で試すなんて…」


そう言い訳をして情けなく許しを請うように懺悔するが透はそっと優しく包み込む様に抱きしめた。

そして聖職者として彼女は目の前の罪に苦しんでいる兄を倫理的に許す為の務めを果たさんとしたのである。


「大丈夫だよ。兄さんは今行いに対して悔いを示した。なら兄さんはきっと悪には落ちきっていない、まだ人間のままだからまだ死ぬまでに償えるしやり直せるよ。だから兄さん、今日の事は忘れずに二度としないようにしてね?約束だよ」


まるで赤子をあやすように背中を優しく叩いて兄を安心させつつ前を向かせ進めるように向かわせようと聖女として出来ることを実行していた。

その銀色の髪が君塚を包み込む様に、そしてその部屋が懺悔室に成るように二人だけの空間を作り出して二人の時間は過ぎていく。


「ありがとう透、少しだけ気が楽になったよ。これで肩の荷は軽くなった」

「えへへ、どういたしまして兄さん。これくらいならお安い御用さ!また何か悩みが有ったら何時でも相談してよ」

【悠里!!やっと繋がった…兄妹仲よろしくやってるところ申し訳無いんだけどさ、ちょっと良いかしら?今すぐ伝えないといけない事項が有るから】


そう透が言ったのも束の間突然慌てているニケから連絡が来た。


「…すまない透。ニケから何やら重要な連絡が来てしまったようだ。少しだけ離れるが良いか?それともこの場で俺の独り言を聞く形に成るがこの場で断片的に聞くのが良いか─」

「ならこの部屋で一緒に居て、話が纏まったら聞かせてくれないかな?そっちの方が兄さんも安心するでしょ?」

「わかった。なら少しニケと話をしてくる」


そして君塚は椅子に座り直して専属担当官のニケの声がする方向を向きながら今回の要件を聞くことにした。


「それでニケ、要件について聞きたい。緊急での話をするのは初めてでは無かったかもしれないがかなりお急ぎの様子だからな」

【急ぎも急ぎなのよ、ふざける余地さえ無い位。先に要件の簡単な内容について言うと、エリスの奴がやらかしやがったのよ。あんたとかエリカの活躍を聞いて腹が立った客達が居てそいつらの意見を利用して自分の優位性を確立しやがったの】

「なんじゃそりゃ、その、お客様の声を利用して自分の有利になるようシステムをねじ曲げたと?」

【そう言う事よ】


対立している運営側のエリスによる妨害工作が行われている件についてニケが焦る程の一件である。

恐らく余程の事であるのは確実であり、君塚は覚悟を決めて今回の件を聞く事にした。


【良い?今回は面倒な事にエリスは現代兵器に対して対抗する為に東方世界のファンタジー系転生者達にあんたの討伐をクエストとして出してるのよ。それに東方平原の国へ征服をさせようと啓示を出したり…もうやりたい放題!!】

「成る程。そんなに現代的な砲火がお嫌いなんてこれから未来の世界見たら憤死しそうな奴がいちゃもん付けたんだな。どんな世界でもどうであれ20世紀の道筋は通るし、きっと祈祷も魔法も体系化、科学化が進んで効率の良い兵器か道具に成るしか無いのによくもまぁ否定出来るもんだ」

【まぁその点はアタシも同意するわ。魔法も結局のところ研究されればされる程、国家も介入しちゃうし万人向けの方向に収束するような予感がするわ。貴族主義と言えど結局数は貴族の方がいつの世も少ないもの】


優れた兵士達を率い優れた兵器を用いて征服し優れたドクトリンで優れた政治をもって支配する。

確かに普通ならこれで充分だと言えただろう。

だがこれは人間同士の相手でなら完璧であると言えてこれを視聴して賭け事をしている者達にしたらどう映るだろうか?

彼らはあくまで誰が生き残るか、誰が勝つかをギャンブルしているのであり誰も近代的な戦争ショーを観たいわけでは無くしかも一部の転生者達は暴走して国家建設や前世での思想や信条に基づいての行動が目立ち一番人気の神堂龍牙は彼自身の失策も有ったがアッサリと大穴に敗れたのだ。


もう現代兵器、現代文明を許してはならなく成ってしまった。

ただでさえ神秘を愚弄し人類の奢りの象徴である科学文明がまたもや自分達のゲームを荒らしに来たのだからそれは耐え難い苦痛でもあったのである。


エリスは今回の件で叱責を受けその上でやむなくこの世界へと介入し君塚悠里討伐をクエストとして発生させ東方世界の魔法文明国家へ西方世界への啓蒙の為、そして自身の信仰と魔法文明の優位性を示さんとする聖戦をけしかけたのである。


「まぁならやる事は簡単だ。そう、奴らが十字軍をしてくるとするなら俺達はやるべき事が決まってる。迎え撃つだけだ、それも二度と侵攻なんて愚かな事を考えられない程度に折り続けてやる」

【やーん、頼りがいの有る君塚っちが戻って来た〜!それじゃ早速だけど将軍ガチャやっとく?将軍不足してから回しても仕方ないし〜】


少し考え、しかしエリスの介入が起きかねないが不足し始めているのは確実である。

ならやるべきではある、たとえその結果元帥位持ちで判定が当たり筆ひげジジイ(ヨシフスターリン)ラヴレンチー・ベリヤ(異常性愛者)が来てしまうかもしれないが、その場合クリメント・ヴォロシーロフ元帥が救いに見える惨劇に成るだろう。

拳銃の装填を確認した。

覚悟は出来た、背に腹は代えられない。


「そうだな。回そう」


チケットを挿入し、そして重いレバーの音を立てながらガチャガチャ音が成り結果が判明する。


『SSR佐官 イリヤ・スターリノフ大佐』

『SSR将軍 イワン・バグラミャン元帥』

『SSR将軍 ロジオン・マリノフスキー元帥』

『SSR将軍 ワシーリー・ソコロフスキー元帥』

『SSR情報官 パーヴェル・スドプラトフ中将』


「…佐官が出た辺り少し故障が起きているようだ。だが頼りがいの有る人物達が来た、彼らを率いて反撃の手筈を整えて優生思想のアホどもを叩くとしよう」


そして君塚は新しく着任した将校達と顔合わせをした後国内軍の師団や軍に配備し来たる前哨戦を待つことにした。


一方で国内軍機動部隊は疲れ切った船乗り達の頭の中の幻想の中にしか居ないであろう生物と沖合にて激しい海戦が行われていた。


「アクティブソナーを打ちまくれ!何としてもあの怪物イカを近寄らせるな!!」

「対潜哨戒機はまだ来ないのか!?このままだとこの艦隊が海の藻屑に成るぞ!!」



クズネツォフ提督は久しぶりに第一艦隊を率いて機嫌よく外洋に航海していたが巨大な推進音を感知して臨戦態勢を整えた。

そして艦隊前方で哨戒中の潜水艦部隊は魚雷を発射したものの巧みに躱して逆にタックルしてきた為損害が発生しダメコンに手間を取らされ後手に回らされてしまった。

艦隊の陣形内に突入した海洋生物は突然急激に加速し艦隊旗艦のアドミラル・クズネツォフを無数の触腕がガッチリと捕らえ離そうとしなかった。


「機関最大船速!!とにかく振り払うんだ!!!」

「駄目です提督!コイツは振り切れません!!まるで座礁してしまったようでして!!」

「ええい!何だこのバケモノイカめ!!このクソったれの悪魔のファシストのナチめが!!!」

「イカにナチもコミも無いかと思います同志提督…」


提督は激怒しながら艦隊の両側面に貼り付いている残りの巨大な海洋生物を僚艦たちが最大出力のピンガーで攻撃していた。


「艦載機は!?」

「既に収容済みです!甲板にも誰も居ません!!!」

「そうか!なら後は耐えるだけだな!!」


まず敵性生物を引き剥がしてから艦隊の対潜兵装でキッチリ仕留める予定ではあったが敵性生物は中々離れず艦隊は右往左往させられている。

その間に艦隊所属のKa-27Mが駆逐艦や巡洋艦から発艦しソノブイを展開して他に類似した敵性生物の存在を確認していた。


だが幸運な事にいずれもその巨大な海洋生物以外確認出来ずやむを得ず主砲の発射を艦隊所属のソブレメンヌイ級駆逐艦か要請した。


「提督!グレミャーシチイより艦砲射撃の許可要請来てます!!触腕のみ狙えるとの事です!!」

「そうか!さっさと撃つように伝えろ!!そして甲板上の艦載機達にダメージを与えないようにしろとな!!」

「了解であります!!」


そして許可が降りると鋭く狙いを定めて艦砲射撃を開始した。

グレミャーシチイは任務を果たした。

砲撃でクラーケンの脚を撃ち抜き怯ませて艦隊旗艦を解放することに成功した、そして幸運な事に甲板内に退避させていた艦載機には被害は無く甲板に幾つか傷痕が残されたがまだ継戦能力は存在していた。

そして残された艦載機がエレベーターに載せられ順次甲板へと向かい一斉に発艦準備を開始する。

Su-33やKa-27Mがそれぞれ最適な武装を搭載して発艦してより強固に対潜網を張り巡らし、そして陸地から遠路はるばる飛来してきたTu-142MZ ベアF Mod4も加わり海洋の悪魔を討ち取る海戦がここに発生した。


キーロフ級のアドミラル・ウシャコフとアドミラル・ラーザリェフ、ウダロイ級駆逐艦のマーシャル・ワシレフスキーとアドミラル・ザハロフ、ネウストラシムイ級フリゲートのネウストラシムイ、これらの艦のRBU-6000はクラーケンへ矛先を向け報復を待ち望んでいる。


その頃更に東の沖合では一隻の帆船が浮かんでおり国内軍艦隊の物資を目当てに襲撃を行い海賊の魔法使い、エンリコによる艦隊襲撃の為の魔法が行使されていた。


「エンリコ!守備はどうだ!」

「船長!全く駄目でさぁ!!こりゃお天道さんをもう一度拝む事に成りそうですぜ!!!」

「てめぇのクラーケンでは無理だって言うのか!?」

「ちげぇよ船長!こいつらどうやらクラーケンへの対処法ある程度知ってるみてぇです!!」

「そんな馬鹿な事を!有りえる事しか言うんじゃねぇよエンリコ!!」


そして感覚をリンクしているエンリコは洋上でドラムを鳴らすように低空飛行する哨戒機の音を聞きクラーケンへの攻撃が更に加速する事を何となく感づいた。


「あり得たみたいですぜ船長!!奴らが動いた、クラーケンを撤退させた方が良いんじゃないか?」

「駄目だ!何も獲られてねぇのに撤収なんて出来るかいや!!それよりさっさと舟を沈めちまえ!沈めりゃ国王陛下から私掠船のお墨付きを頂けて沈めた舟の人や物は全部そのまま貰えるんだぜ!!海の男として沈めるまで逃げるわけにゃ行かねえよ!!」

「へ、へぇ」


エンリコはクラーケンへ再度苛烈な攻撃をするように脳波を魔法で伝えて指示を出す。


全くもって現代兵器でファンタジーを蹂躙するのは気持ちが良いはずなのにまだこんなにも疲れ果てねばならないのか。

幻想は破れる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ