第5話
多分ヒロイン一人目登場
陽が落ちると、ようやく君塚に休息の時間が訪れた。
遮るもののない平原のど真ん中ではあったが、彼は焚き火を熾し、暖を取ることにした。
ここが中世レベルの文明なら、暗視装
置なんて高尚なものは存在しない。
この暗闇の中で、焚き火の明かりだけを頼りに襲撃してこれるほどの夜間戦闘能力を持った部隊など、そうそういないだろう。
それに、あの禁猟地からは既に200メートル以上離れている。ひとまずは安全圏だ。
そして君塚は戦闘糧食を創造して食べたあと、泥のような眠気に襲われました。
そんな彼の眠気を吹き飛ばす喧しい運営側の声が届きました。
【ヤッハロー☆元気かな君塚くぅん?まずは『殺人童貞』卒業おめでとうー!!】
「⋯るせぇなおい、人が眠い時によぉ」
【えー?だってだってー、君のギフトが成長した事をお伝えしようかと思ってさぁ、要らなかった?】
君塚は眠気を堪えて答えました。
「お願いします⋯」
【りょーかいでーす!!それじゃ内容は簡単だから安心してねー!!まず君は一個小隊を創造可能に成りました!いえーいパフパフー!】
「そうですか」
【て、テンション低っ⋯まぁ兵士への給与とかお金関係は安心してもらって良いかな。これはこっち預かりだから君はそれ以外、つまり創造した兵士達の面倒をみて欲しいんだ】
面倒とは?君塚はすっかり目が覚めて運営に尋ねます。
【まぁ平たく言えば武器の配備であったり食料の配給であったりそんなとこー。ま、君がご主人様だから安心してアイツら扱き使って良いよー!ちなみに彼らも創造されるから、この世界に存在している物としてシステムは見做すからそこんところ気を付けてねー!!つまり君は雇用主で彼は被雇用者ってこと!!】
「で、そいつらは自分の意思が有るのか?軍事訓練はどれくらいされている??」
君塚はその兵士達のレベル等について尋ねました。
もしもし創造されるのが、AKを頭上に掲げてブラインドショット(盲滅法撃ち)しか出来ない、規律の欠片もない民兵レベルなら、正直不要です。
【そこも安心しなよ君塚君!彼らはロシアの戦争や政争でなんだかんだ死んだ軍人たちだから実力は折り紙付きさ!!】
「あっ、そう」
【ちなみに彼等が敵を倒すとその経験値は君に入って君のギフトのずぶい成長速度を上げさせるから有効活用してね☆】
なら安心です、コイツの言う事でないならですが。
【ま、取り敢えずさ。明日でも良いから兵士達を創造してみなよ。⋯トブぜ?】
「すいません、もう寝て良いですか?説明事項は以上ですか??」
【あ、うん以上です。てなわけで今後もガヤ担当よろしくねー!ほいじゃーねー!!】
君塚は運営の声が去った後はそのまま意識を失うように寝ました。
翌朝君塚は疲労感が抜けないまま目が覚めました。
髪の毛も服もどろどろで顔の泥を落とす事を忘れていたので水を創造して落とします。
まだ軍服は創造出来ずボロボロのスーツ姿で野宿していたのでした。
運営の喧しい声は流石に今回の君塚の顔を笑うような事はしなかった辺り無関心なのかもしれませんでした。
「……さて、やるか」
先日言われていた進化したギフトのスキルに基づき兵士達を創造しました。
空間が歪み、光の粒子が集束する。
現れたのは、30名ほどの武装した兵士たちだった。
AKMを携え、ソビエト連邦の少し古めな軍服に身を包んだ古めのソビエト連邦陸軍装備。
屈強な男たちに混じり、何人か女性兵士の姿も見える。皆一様に、硝煙と鉄の匂いを纏った古参兵の顔つきだ。
確かにロシア人が多くそのギフト名『軍隊創造(露)』に違わぬ名前でした。
中には女性も居ます。
先頭に立っていた下士官らしき男が、切れるような動作で敬礼しました。
「同士君塚に敬礼!!」
号令と共に、兵士達が一糸乱れぬ動作で敬礼します。
ザッ、という衣擦れの音が揃います。
本物の軍隊だ。君塚はスーツの襟を正し、軍隊式の答礼を返しました。
そして、君塚は彼らに向けて口を開いた。
これからは自分が指揮官だ。舐められてはいけない。威厳を示し、大義を掲げねばならない。
彼は喉を鳴らし、慣れないロシアっぽい演説をぶち上げた。
「えー、おほん。諸君! ……私は今、この私達の居る国『平原の国』で、情けないことに禁猟地と知らず密猟してしまい、お尋ね者になってしまった!
であるから今、この国に安寧の場は何処にも無く、私達はありとあらゆる苦難に晒されているのだ!
故に! 私達が今すべき事は何かと言えば、この文明の後れた後進国で革命を起こし、私達が正しく文明を発展させてやるのだ!
そして我々はこの国を祖国として導き、他の転生者達……あの忌々しいファシスト共を撃滅しなくてはならないので――」
早速迷走し始めた演説を遮るように女性兵士が1人尋ねます。
「同志君塚、大変素晴らしい演説中失礼ながら申し上げます。
「はい⋯。」
「取り敢えず、今から私達は何をすれば宜しいのでしょうか?」
現場からの、極めて冷徹かつ合理的なツッコミでした。
革命だのファシストだの抽象的な話はいいから、具体的な指示を寄越せと言っているのです。
君塚は命じました。
「そうだな⋯近くの森まで行くから取り敢えずそこで陣地を作ってくれ、それから次の命令を発するから」
兵士達は即座に行動を開始し、警戒態勢を取りながら100メートルほど先の森へ向かい始めました。
その背中を見送りながら、君塚は固く誓った。
二度と、慣れない演説なんてするもんか、と。
でもデレるのは多分大分後




