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何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第三章

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低地の国より

低地の国のウィレム王は高地の国の女帝エリカ・フォン・ホーエンハイムを伴い平原の国の摂政君塚悠里が共に宮殿に帰還した様に驚き、そして月白もねはどうなったかを尋ねた。


ナディアは君塚の帰還を喜んだものの隣にいる女性を見て態度を直ぐに改めた。

相手は恐らく何処かの国の元首かそれに準ずる者の可能性が高いからだ。


「閣下、よくぞご無事でお戻りくださいました。」

「おお、君塚殿!戻られたか、して此度の賊は、月白はどうなったのじゃ?」


「ご安心ください陛下、どちらも果たしました。ですが…そのこの格好については何卒ご容赦願いたく」

「気になされるな、儂らは恩人の服装を嘲笑うほど誇りは捨てては居らぬからの。それと、ホーエンハイム帝…此度は誠に」



「挨拶は良いわ。それよりも何故平原の国の摂政の私兵達がこの国に居るかよ。まさか…我が国以外の軍隊を勝手に駐留させる話には成っていないわよね?」


エリカはウィレム王の言葉を遮りナディアも威圧しながら君塚に質問した。


「…陛下」「エリカで良いわよ、ついでに楽にしなさい悠里。そうした方が話は円滑に進むわ。後、一々ウィレム王にご用意いただくのも面倒だしこのまま立ち話で済ませましょう」


相変わらず傍若無人な元恋人のわがまま具合に頭を抱えたものの直ぐに気を取り直し


「エリカ…今回の件は簡単な話では有るんだ。貴国の、高地の国の駐屯部隊だけでは今回の低地の国の国難は対処不能と思い動いただけだ」

「それは明らかな主権国家に対する内政干渉ではなくて?しかも我が国の正規軍の、国防の一翼を担う国家人民軍を侮辱するとは…これが私の、高地の国であろうと許されざる非礼である事はお分かりかしら?」


エリカは手が震えていて、後方の護衛として来ているのだろうバラクラバを着けた兵士も手に持つUMP45のセーフティを解除しかけていた。


「なら言っておくが、国家人民軍はまたたく間に…敗走さえ許されず文字通り全滅していたぞ、まるで稲穂のように刈り取られてしまっていたな。」

「…確かに、そのような形跡は有ったわ。弾薬を積んだまま焼け焦げた戦車部隊の残骸が確かに有った。それに歩兵隊も弾帯を着けたまま亡くなっていた」


エリカは君塚の指摘に同意出来る部分は同意していた。

道中国境付近で戦死した国家人民軍のご遺族の為に遺体の収容も行っていたのでそれで援軍到着までに時間がかかってしまった。


「彼らの規律は緩んでいたのも有るがそれ以上に神堂の上級妃─月白真奈の火炎万丈、認識した対象を燃やす能力(パイロキネシス)は手持ちの戦力と相性が頗る悪かった。もう一人の上級妃、月白美嶺の出番が無かった程度にはな」

「有視界の戦闘を余儀なくされた彼らは無法なギフトの前に一方的に敗れただけである、そう言う事ね。成る程、なら貴方達は低地の国の国土には龍の国の侵攻が起きると分かったの?虫の知らせかしら?」


エリカは疑問を投げかけていた。

何故平原の国は龍の国の侵攻を察知することが出来たかだ。


「今考えれば軽率な判断だったが…詳細は伏せるとして、龍の国に不審な取引が有ってそれを辿ると侵攻計画を立てているって判明してな」

「成る程、私達も侵攻計画は把握していたけどこんなに早くとは思っていなかったもの。びっくりしたわ、龍の国の指導者は一体誰なのか最近は全くわからずじまいだし…」

「? 高地の国の女帝とあろう方が神堂龍牙の事をご存じ無いのか?」


龍の国の情勢に疎い彼女の返答に君塚は驚き尋ねた。

仮にも国境を地続きで接する隣国であり現在政変や難民の流出地帯である彼の地の情勢を知らないと言うのは流石にありえないと思っていたからだ。


「…正直そいつも確かに女王を担いでるから正当な政府ではあるわ。だがしかし、現状彼の国の軍閥の一つにしか過ぎぬのも事実。我々とて誰を支持するか悩んでいるの」


エリカはある意味本音で、しかし嘘も付いていた。

確かに神堂の正当な政府は存在してはいたが龍の国は転生者達の戦闘の爪痕で各地の諸侯が蜂起し群雄割拠となってしまった。

神堂の政府は仮初めとはいえ女王ヘルウィヨトゥルを擁立している。

だが神堂の王国政府は今回の遠征で戦力が壊滅したであろう事はほぼ確実に言えた、最早一地方軍閥でしかない事は明白であった。


「平原の国としては真の王を名乗る者を支持している。反龍の国現体制勢力ではまだ理解し合える奴らだったからな」


平原の国の公式な立場を鮮明にしている事を君塚は伝えた。

真の王派はその首魁の存在がまだ分かっておらず旧体制側の人材で固められている事、そして旧体制への回帰を望む者達に主要なポストが固められている事、そしてその首魁は恐らく王族である可能性が極めて高い事。


「…真の王、ね。まぁ貴方が彼女…失礼、あの者を信ずるのは良いけれど。でも結局は数ある軍閥の一つでしかないし、あれはまだ民衆や人望を集めきれていないわ。で、どうするつもり?」

「…まぁ、何とかするさ。それとそちらの方は難民の流入は大丈夫なのか?龍の国の混乱具合は最早察するに余りある状況だし今うちの国の難民キャンプも大規模な物になっちまったし」

「今は大丈夫よ。でもこれ以上歯止めが効かず龍の国から流れ込んで来るなら私達も介入せざるを得ないわね…、まぁ貴方の支援する真の王派閥が上手いこと成長したら支援も吝かではないかも」


エリカは腕を組んでその豊かな胸を強調し始め

「もし貴方が私の側に付くなら、平原の国も低地の国も守って龍の国も解放してあげても良いけど?」

と色仕掛けに走った。

ならばと君塚は咄嗟に一芝居打つことにした。

後に死ぬ程後悔するであろう下手くそな一芝居を。


「すまないエリカ…。龍の国とは俺自身が決着を付けたいんだ、神堂には透の件でキッチリ仕返ししないといけなくなっちまったからな…」

「へぇ~…え、透?透ちゃん、まさかこの世界に居るの?あの子ならあんな男には討ち取られないとは思うけど…どういう事なの」

キョトンと気まずそうな君塚を見る。


「…話は少し長くなる。透は、透はアイツの、神堂のギフトにされていたんだ」

「は?ギフト??どういう事よそれ、人を能力にしていた?」

「運営に騙されて聖剣にされて奴のギフトにされていた。そしてギフトの聖剣として無理やり、性別さえ変えられて愛人兼人殺しの道具にされていたんだよ。今は助け出したけどアイツはもう…」

「そ、そんな!!」

「今は保護しているが…心身ともに深い傷を負っている…だが毎日俺が世話をしないといけない、でもあの男からこの国を守らないといけないから今日は来ているんだ…!」


俯いた彼を咄嗟に抱き締めたエリカは(推定)身内の不幸に共に嘆いた。


「うう…透ちゃん、何でそんな悲惨な目に…!安心して悠里!!私は貴方の味方よ…!!!ぐすっ、神堂め…私の義弟に…よくも…!!」

「頼むエリカ…アイツの仇を討つのに協力してくれ…!!(義弟って何だよ?)」

「お安い御用よ…!悠里!!これも夫婦故の共同作業よね!!!」


この王宮の主たるウィレム王や君塚の護衛であるナディアの存在を完全に無視した熱い抱擁を交わす二人の下手な三文芝居である。


「へくちっ!…何処かで誰か私の噂してないかな?…早く帰ってきてよ兄さん…寂しいよ」 

透は遥か遠くに出かけた兄に対して兄の温もりがまだ残っているベッドの中で思いを馳せていた。



そんな中軍を率いていた高地の国国防軍司令官のクライスト元帥が「失礼します、陛下!!」と入室してきた。


「陛下、私達のジルフェルダムへの入城を奴等…あのソ連軍もどきが度々阻止しようとしてほとほと困り果てております!何とかならないのですか!?部下といつ銃撃戦に成るか分からない状況に成っていますぞ!!」


外では確かに君塚の空挺軍と高地の国の機甲師団が銃口を向け合っており一触即発の状況であった。


歩兵達は互いにライフルや機関銃を向け合い、レオパルト2A8とBMD-4Mが砲門を向け合っていた。


「あぁ…確かにヤバいなこれ。エリカ少し席を外して良いか?部下を宥めてくる」

「奇遇ね、私もあの馬鹿どもを大人しくさせなくてはならなくなったみたいなの」


二人は急いでウィレムやナディア、そしてクライストを置き去りにして退出して状況を収めようとした。


両軍は無言で銃口を向け合っており今にも爆発しかけていた。


「そこまでだ!!お前達、今すぐ武器を降ろせ!他国で世界大戦を引き起こすつもりか!!!」


君塚は自分の部下達に銃を下げさせた。

BMD-4Mの乗員は警戒心を解かないが上からの指示なのでやむなく従った。


事の発端は、最初空挺軍が警護のために王宮を囲んでいたが突然現れたNH90に君塚が搭乗していた件ですわ攫われたのかと勘違いした部下達が慌てて外からやって来た高地の国の装甲師団に対して嫌疑の目を向けてしまった事が原因であった。


「貴方達も下げなさい。ここで無用な流血は不要よ。」


高地の国の兵士達も銃口を下ろした。

レオパルト2A8の車長も砲手に向けて警戒態勢を解けと命じた。


何とか両国の対決は避けられて破滅的衝突は避けられたが結局の所低地の国の復興やそれらに関する権益は平原の国は得られず、ただ恩義と友好的同盟関係の構築に成果は留まっていた。





そんな中ヤドヴィガは久しぶりに君塚の報告を聞くために呼び出していた。


「君塚様。此度の件、ありがとうございました。これで我が国と低地の国は友好国として関係を改善し、彼の地の聖女教勢力の弱体化も成功しました」

「はっ!お褒めにあずかり光栄でございます殿下」

「君塚様のおかげで我が国への外交的包囲網は壊れつつあり、そして平原の国は再び偉大な大国へと戻りつつある事を世界に示しつつあるのです」


ヤドヴィガは大層機嫌が良さそうに政務を行いながら君塚の大任を労っていた。

君塚が無事戻って来たのも有るがそれ以上に彼の武勇伝を聞いて自分の目が間違っていなかった事を再確認する事が出来たから彼女は嬉しかった。

しかし彼女は別の件で眉をひそめた。


「それに龍の国との戦争でしたが…何やら高地の国と我が国の間に国交を築いたそうですね。」


龍の国にはヤドヴィガは龍の国の侵略行為を阻止する為に今回投入されていた筈なのに何故か高地の国と国交を結んでいた事に少し疑念を抱いていた。


「はっ、先方の主力軍と合流して神堂の手勢を撃退する事になりまして共同で事に当たりました」

「成る程です。君塚様は今回龍の国の国の侵略行為を阻止する特別軍事作戦を実施されていたのではなかったのですか?国交を結ぶ事では無かったように思えますが」

「そ!それは…」


痛いところを突かれて押し黙る君塚はヤドヴィガには手も足も出ないのでつい彼女は笑ってしまった。


「うふふ、すいません。君塚様がついそうして黙ってしまう所が大変可愛らしくて…うふふ…」

「殿下…」

「……ところで君塚様。高地の国の女帝と、随分と親しげにお話しされていたという報告も受けておりますが?」

「殿下…あれとは私的な関係は終わっていますから…」

「ええ、存じておりますとも。何せ貴方は私の為に筋書きを立てる私専用の御用聞き(フィクサー)なのですからね」


こうして平原の国の宮殿は時間が過ぎていき平和な空気がズラトポルを包み込もうとしていた。


そして平原の国は西方と北方の憂いを絶ち、龍の国と言う目前の脅威のみ対処すれば良くなった。



「さて、龍の国の反乱軍の支援を本格化しないとな。そろそろアイツに一撃食らわせてやるとしようか」


そして舞台は動き出す。

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